間章1-1
お待たせしました。更新再開です。
まずは三章の前に間章をば。決して三章の内容が決まらなかったとかではありません。決して。
というわけで久々の注意
これは完璧に自己満足からなる小説です。よくある異世界トリップ小説です。
設定の無駄遣い、ご都合主義、超展開、作者の都合、主人公成長チート(?)、無駄、よくある展開、低クオリティー、低文章力などが多分に含まれています。
それでも良いという心広い方のみ、お読み下さい。
また、作者は豆腐メンタルなので批評はソフトなものでお願いします。
では、どうぞ
ヴェスバーナ暦1998年春期3月8日 昼前 東グータニア街道
シックな色合いの、旅人に人気の動きやすい旅人の服に身を包んでマントを羽織った黒髪黒眼の少年ユーリと、厚手の年季の入った布をダーバンのように頭全体に巻いて顔を隠した旅装の女性エレンは、香辛料の詰まった袋を載せた荷馬車に揺られながら街道を進んでいた。
荷馬車のたてる音が耳に心地良く響いて来る。吹き抜ける風は新緑の木々を揺らしている。過ぎゆく景色は森の木々ばかり。自然豊かな生命の輝きが目に見えるようである。
しかし、エレンは良いがユーリはそれに飽きてきていた。早朝からずっと森の中なのだ。右を向いても、左を向いても木、木、木。誰だって同じような景色が続けば飽きるものである。
グータニアに来る前もそうだったが、暇というのは難敵だ。ゲームやテレビなどが溢れる現代社会ならば、暇というのはいくらでも潰せるがこの世界にそんなものはない。
しばらくすれば森を抜けて平野に出るはずなのだが、それはまだ先だ。新人冒険者が退治でもしたのか魔獣の気配もしない。完全な手持ち無沙汰で暇でしかたないのが現状だった。
エレンと話をしようにも、話す内容がない。それではユーリには話しようがない。あの全身黒尽くめで、ユーリと同じ異世界から来たアカネならば、まだ話す内容はあるし話も合うところは多くある。
しかし、そのアカネはいない。合格祝いのあと、全員が寝静まった後に1人出発したためだ。1人の方が動きやすいと置き手紙があったのだが、実際は湿っぽいの苦手だったためだ。
ダークエルフの少女サザンカでもいればダークエルフについて根掘り葉掘り聞けるのだが、故郷に帰るためグータニアから南へ出たのでここにはいない。ダークエルフの里に来たら歓迎してくれると言って泣く泣く別れた。
武装神官見習いで最初にユーリと組んだミレイアも同様の理由でいない。彼女の故郷、宗教国アルナシアへ同志と共に帰って行った。サザンカと違い別れ際もサッパリとしたもので、さっさと行ってしまった
。
装備登録のついでの別れの時に「アルナシアに来たら必ず私を訪ねなさいよ!」と再会の約束的なものをした。のだがミレイアは住所や所属などを教えないまま行ってしまった。どうしろと言うんだろうか。
彼女たちがいたらまだ話ができたような気もするが、生憎といないものはどうしよいもない。やはり黙っているしかない。
2週間以上も共に旅をしているエレンとは、話すことは話してしまっていて、改めて話すことがないのだから仕方がない。何気ない会話ほどユーリが苦手とするものはないのだ。
ちなみに、お坊ちゃんことジェイクは、試験終了後さっさとどっかに消えていた。
「んあ、そうだエレンさ」
不意に思い出したと言うようにユーリが言う。
「何で獣人なのに、人間の国で行商人やってるんだ?」
獣人族の風習として奇形児や未熟児、虚弱な者はそれぞれ存在する部族から捨てられるとは言え、全ての部族の者が捨てた子供を把握しているなんてことはあるわけがない。
それにエレンが捨てられてから25年の月日が経っている。多産である獣人族ならばその間に20以上の子供を新たに産んでいるはずだ。
そんな獣人が、昔の子供のことを覚えているとは思えない。それに獣人にも生きているのだから商売人もいる。様々な役職がある。
つまりエレンは、わざわざこのエストリア王国で正体を隠して肩身が狭い思いをして行商人をしなくても、獣人部族王国カヒーヤリーで普通に行商を行うことができるはずということ
。魔法を扱う才能があるのだから、強化魔法で身体能力を強化すれば、如何にひ弱で捨てられた子供だとしても何も咎められることなく生活できるはずなのだ。
それにエストリア王国はカヒーヤリーと国境を接している。カヒーヤリーの国境は特に見張りなどいないので、どこからでも密入国が可能だ。
運さえ悪くなければ普通に生活していけるはずなのである。なのにそれをしなエレンを不思議に思ったのだ。
「そういえば、君には私が捨てられたことや獣人の話はしていたが、詳しくこの話していなかったな。
ふむ、暇なら話してやっても良い。特に何かある話でもないからな」
「差し支えないなら」
「なら、話そう。私がこの国で行商人をやっているのは師匠が住んでいた国だからだ」
エレンの師匠。つまりはエレンの育ての親で命の恩人が産まれて、生きて、商売をして、死ぬまでいたのがこの国なのだ。
当然、彼の墓はこの国にある。そこに師匠はいるのだから離れたくはない。だから肩身が狭かろうとこのエストリア王国で行商人をしているのだ。
損得勘定、契約、合理的考え、そして金。
それらのみで動く商人としては有り得ない考えである。はっきりと言って甘い考え方。商人らしくない考え方だ。だが、それが彼女の欠点でもあり、良いところでもある。
「なるほどね」
「うむ、おっと、そろそろ休憩にしよう。朝から移動しっぱなしだからな」
「そうだな」
エレンが荷馬車を道の隅に寄せてから止める。道は未だに広いため楽に止めれる。荷馬車が止まるとユーリは御者台から飛び降りて伸びをする。
朝から座りっぱなしで体がこっていた。伸びをするとコキコキと骨のなる小気味の良い音が森の中に響く。エレンも同じように飛び降りて伸びをする。
「んんー……ふう。さて、昼食にしようか」
道端の切り株に座り、魔法のポーチから保存食の干し肉とパンを取り出して食べる。生憎と、旅では一々凝ったものを作る暇などはないのだ。
ただし、干し肉とパンだけでは味気ないのでユーリは小瓶を取り出す。中に入っているのは手作りイチゴジャムだ。
正確にはクニドと言う、日本で言うところのイチゴ味の実のジャムのようなものだ。エレンが香辛料のついでに仕入れていた砂糖を買って手作りしたのである。高級品なのに気前よく譲ってくれたエレンに感謝である。
「うむ、うまいな」
イチゴジャム――ではなくクニドジャムをパンにつけて食べていたエレンが言う。余程気に入ったのか指についたジャムをペロペロと舐めている。
何だか目を背けなければいけない気がしたユーリは目を背けていたので、最初以外は見てはいない。見ないようにしていた。
「香水加工前のクニドの実を食べるなど正気を疑ったが、確かにこれは旨いな。甘いし」
舐め終えたエレンが言った。
そうクニドのそのたくさんの粒が集まった実をすり潰すと甘く芳しい芳香を放つため、香水の材料として使われているのだ。生産量も多いため比較的安価であり、加工も簡単と言うことで庶民にも親しまれている。
そのためクニドを食べるなどという発想はない。それがジャムになっているのだから驚くのは当たり前だ。
驚かれたのならユーリも作ったかいがあるというもの。固いのはどうにもならないが、少なくとも味気ないのは回避できる。
固いのは、現在ユーリが製作中の林檎酵母もどき。あの見た目トマトなリンゴのイオゾの実を使って作っているものだ。
味と食感が柔らかいリンゴそのものだったので作れないか試すのを兼ねて絶賛製作中。今は日の当たる荷台に放置している。
できるのはまだまだ先だ。できたときが楽しみである。それまでに焼ける設備がある場所にいければであるが。
そそくさと昼食を終えた2人は再び荷馬車に乗り移動に戻る。特にやることのないユーリは荷台へ乗った。
彼は載せられている香辛料の袋を脇に寄せてスペースを作りそこに剣を抱いて寝転がっている。今日は晴れているので、綺麗な空が見えた。
何をするかと言うと寝るのだ。寝るにはちょうど良い陽気であるし、これからの夜番に備えるためでもある。
一晩起きておくには寝る必要があるのだ。結界を使えば良いのだが、あまり便利なものに頼るとそれが使えない時に大変なことになるために、普通の夜番にも慣れておくためである。
「じゃあ、寝るわ」
「ああ」
そう言ってユーリは目を閉じる。特に眠気などはなかったが、暖かな陽光と鳥の鳴く声、ガタガタと揺れる荷馬車の揺れを子守唄に目を閉じていると、次第にその意識は眠りの中へと落ちていった。
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夕暮れ時、ユーリは自分を揺する感覚で目を覚ました。そこには布を外して顔をあらわにしたエレン。荷馬車は止まっている。耳がピコピコしているのが可愛らしい。
「おはよう。良く眠れたか?」
「おかげさまで。今日はここで野営か?」
「ああ」
それだけ聞くとユーリは体を起こして、辺りを見渡す。見渡す限りの平原。背の低い草の生えた平原だった。後方には森が広がっているのが見える。それだけ確認して、ユーリは荷馬車を下りる。ここからはユーリの当番だ。
さっさと火口箱から出した火種を使い、火を起こして夕食の準備をする。やはりスープものである。
水はエレンが集めていたカスカと言う、日本で言うところの西瓜の緑色の部分を水色にしたような木の実から得た。
カスカ。
比較的広域に分布する樹木のことだ。低木であり西瓜によく似た水色の木の実をつける。その実はすかすかの空洞であり、内部に水を溜め込む性質を持っている。
しかも、それは浄水されてとても綺麗でそのままでも十分飲めるため、水場の無い場所ではカスカの実はかなり重宝されている。
1ヵ月ほど実を付けているのだが、その1ヵ月を過ぎると、地面に落ちて灰色になる。そうなると中身はなぜか酒になってしまうという面白い植物だ。
その酒は、生えている場所によって味が異なるという面白い性質を持つ。火山の近くに生えたカスカの酒は燃えるほどアルコール度数が高い酒となり、暑い気候だが、過ごしやすい場所では、甘い果実酒のような酒となり、東方域であれば、日本酒のような酒となる。
このあたりであれば、ワインのような酒になるらしい。
その後、ユーリの作った一風変わった料理とカスカの酒に舌鼓を打ったエレンはやることも特にない上、明日も移動ということなので寝てしまった。ユーリは焚き火の前に座って夜番である。薪はかなり集めてきたので、朝までもつはずだ。
しかし、それだけでは暇である。
なので、ユーリは迷宮脱出以来出して居なかった魔導鎧を調べる事にする。
「さてと、魔導鎧って奴を調べて見ますか」
神託板を開き、新たに選択できるようになっている魔導鎧の項目を開く。するとステータス欄と同じようなウィンドウが開いた。
ただ、表示されているのはユーリ自身ではなく、魔導鎧『斑鳩』であった。
しかし、以前とは違い機体色が銀から黒へと変更されており、スマートなフォルムになっている。ユーリはフィッティングと関係があるようだと推測した。
というわけで調べていくユーリ。調べれば調べるほどユーリの世界に存在するロボットソルダートであった。
しかし、知りたいのは魔導鎧についての詳しい説明書かなにかである。説明書的な何かがないか探していく。
結局、説明書を見つけたのは散々調べてからもう、やめようと思っていた時だった。
魔導鎧。
今から約998年ほど前にとある人間――おそらくはユーリの世界の人間――により作り出された魔導兵器。
災厄級と呼ばれる人の手に余る魔獣にも勝るとも劣らない高い攻撃力と防御力を持つ。
約8m~10mという大きさながら、人以上の機動性と運動性、全身に刻み込まれた魔法回路による高い魔法力を持つこの世界では最強の名を冠する兵器。
魔導鎧は機体を支える骨格、機体を動かす筋肉、操縦者の命令を機体に伝える神経、エネルギー源であり魔導鎧の命とも言える魔晶心臓、魔導精霊が宿る脳、鎧部分である外装からなる。
それらのパーツは組み換えることができ、組み換えることで魔導鎧の性能が変わる。
フィッティングと呼ばれる過程を経ることで操縦者に合った機体へと性能が変化していく。
ただ、パーツにより性能変化に限界があるため、限界が来たならば自分に合ったパーツに組み換える必要がある。マニアにはこれが人気。
発明されてから約1000年が経っているため、各国でも開発が進んでおり、優秀な魔導鎧を開発した国は一様に強い。ちなみにエストリア王国は国王が無能なため開発は進んでいないようである。
何とも男の子が好きそうなものであった。
かく言うユーリもこういったのはファンタジーの次に大好きである。金に余裕があればやってみたいとも思う。
ただ今はエレンへの恩返しと人助けが優先である。自分の楽しみは贖罪のあとだ。
「調べれば調べるほど俺の世界の技術だよな。魔法の技術使われてるけど」
それはつまり、1000年ほど前にも誰か、この世界の技術者が向こうに行っていたということ。もしかしたら、行方不明になっている開発者本人なのかもしれない。時代くらい超えることはたやすいだろう。ホライゾンという人智を超えたモノが存在するのだから。
そうやって、過去のこの世界に訪れた人間が、魔導鎧を伝えたのだろう。それが、回りまわって、ユーリのところに来たということだ。
神託板の魔導鎧の項目を閉じながらユーリが呟く。
「ん? 何だ、この項目?」
魔導鎧の項目を閉じて、神託板自体も閉じようかと思った時に、一番下に見慣れない項目があることに気が付いた。
???となっており、それが何を示しているのかわからない。ユーリはとりあえず、それを選択してみた。
世界がピタリと止まったのを感じた。
「おー久し振りでーす」
そして、そこには忘れもしない嫌みたらしい笑みを浮かべた奇妙奇天烈が服を着てあるいている男ガイドが目の前に現れた。
「テメエエエ!!」
「あらっおっと」
避けられてしまったが思わず殴りかかってしまったのも仕方ないだろう。ろくに説明もせずに落とすだけ落としたのだから。
「今更何しに来やがった!」
「いえいえー、お元気そうで何よりです。はい」
会話にならない。いっそ無視してしまおうか。いや、落ち着け。せっかく出て来たのだ、話くらいは聞かなければならないだろう。
無視するのは、もう戻れないとほざいていたガイドが、今更現れた理由を聞いてからでも良い。
「さぁて、では本題に入ります。カードはお持ちですか?」
「カード?」
「はい、ホテルのカードで御座います」
ああ、と思い出したユーリ。帰れなくなってから確かアイテム欄に入っていたはずである。それを取り出す。前と変わったところは特にない。
変わったと言えば、何やらポイントが増えていることくらいだ。
「これがどうしたんだ?」
「出していただいただけです。意味はありません(ニヤリ)」
その言い方が苛立たしいことこの上なかったので、殴りかかる。だが、やはり避けられる。そのためイライラだけが募っていくばかりだ。
「神託板を見て下さい」
クックックと笑うガイドが続けるので渋々と神託板を見る。そこには殆どが空白の欄が表示されていた。
スクロールしたらまだまだたくさんある。見る限り称号や実績を表示するようなものだ。
「はい、それを全て埋めればホテル【ホライゾン】へご招待いたします。責任者にも会えますし、元の世界に戻れますよ(ニヤリ)」
「何だと!?」
衝撃の事実であった。2度と戻れないというのは嘘だったのか。嘘だとして、何で嘘をついたのか。いや、愚問だ。
ガイドはユーリたちの絶望を期待していたのだ。ガイドはそういう奴だ。ならば、今回も何かあるのかもしれない。ユーリは警戒したようにガイドを睨む。
「嘘ではありませんよ。今回は上からの命令ですので、はい。では、説明は以上です」
「おい、待て!」
ユーリの制止などガイドが聞くはずがなく、彼は人をバカにしたような礼をして消え失せた。その後、再び神託板の項目を開いたが、ガイドが現れることはなかった。
「…………」
ガイドが消えたあとユーリは、パチパチと火によって木が爆ぜる音を聞きながら考えていた。先程の話について。
既にユーリはこの世界に骨を埋める覚悟はできている。帰ることに魅力を感じないわけではない。だが、もとより異世界に行くことはユーリの望み。また、スニアの村人を助けられなかった、その償いをしなければならない。
「けど、このふざけたシステムを作った責任者って奴には会ってみたいな。一発くらい殴ってやりたい」
それに見る限りかなり時間がかかりそうである。でも、色々なもののついでにやって行けばできるはずだ。
「待ってろ責任者。ぶん殴ってやるよ」
この日、ユーリに新たな目的ができた。それは過酷な道。ただ今のユーリは、そのことを知る由もなかった。
はい、久々の更新でした。低クオリティですまぬm(_ _)m。
もっと早く再開しようと思ったわけですが、色々と新しいことも始まりまして忙しかったわけです。あと、どうにも先の展開ばかり考えついてしまったせいです。
あと、これからは毎日更新は厳しいので二日に一回更新にさせて下さい。
それとキャラ、やって欲しいこと募集は継続中。
第三章で闘技大会とかやる予定なので、それに参加させるキャラを募集します。私がやると同じようなのばかり出てしまうので、お願いします。もちろん使い捨てにはしません。
では、また次回。




