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い、いつのまにか、お気に入りやら、PVやらが増えてた!?。
とりあえずありがとうございます。でも、いきなり増えてたりするから戦々恐々としてます。
今回の注意。ご都合展開満載です。
では、どうぞ。
ヴェスバーナ暦1998年春期3月1日 朝 グータニア 冒険者ギルドグータニア支部
「ちょっと! あんたパートナーをおいてく気!」
そんな声で旅人の服を着込んだユーリを呼び止めるのは若草色の髪に動きやすい戦闘用法衣の美少女ミレイアであった。
いきなりのパートナー発言に、はあ!? と言いそうになったが、ミレイアの睨みつけるような視線が口を閉ざさせる。まるで、心臓を摘ままれたように感じた。
ミレイアはまるで本当のパートナーのように隣にやって来て、行きましょう、と外見は普通に、中身有無を言わせぬように言った。そんな恐ろしいものに逆らうわけもなく、ユーリはついていく。
それを見た奴らはパートナーがいるなら無理か、とお坊ちゃんとは違う理解の良さを見せて、諦めて迷宮に向かう準備に行ったり、別の奴を勧誘しに行ったりバラけた。
なし崩しにパートナー(偽)にされたユーリはされるがままに冒険者ギルドを出た。そして地図を貰い、お祭り雰囲気の街を歩く。先に話しかけて来たのはミレイアだった。
「助かったわ。まったく、しつこいのよ。あの連中」
本当に忌々しげに言うミレイア。遠慮が全く見当たらない。見た限り、一応は神に仕える神官のようなのだが、それで良いのか。
まあ、それをユーリが指摘するわけもない。無難に相槌をうち、なし崩し的に連れて来られたのだ、本当にパーティーでも組むのか尋ねてみる。無論ユーリには相手から誘われない限りはパーティーを組む気はない。
「それは良かったよ。で、パートナーって何だよ。本当にパーティーでも組むのか?」
「ん? あんた、私とパーティー組みたいわけ?」
「いや、まったく」
即決で断ったユーリ。
たしかにこんな美少女がパーティーなら色々なかなか良さそうだ。1人よりも2人の方が良い。人数はそのまま力になることが多いからだ。何かと楽にもなる。野宿する時の見張りなども交代でできるため、体力などの温存が容易になったりと、色々と恩恵はある。
だが、正直に言って面倒くさい。
迷宮がどの程度のものかは分からないが、この低実力連中でも踏破できると判断されたのなら、ユーリには余裕ということになるからだ。
下手にパーティーを組んで、そいつに合わせては下手をすれば期限に間に合わなくなる可能性もある。最悪、死ぬ危険性すらある。そんなことになるくらいだったら、パーティーなど組まない方が良い。ソロの方が気が楽だ。だからあまりユーリはパーティーを組みたいとは思わない。
組む相手が同程度の実力ならば問題はないが、ここにいるのはユーリよりもかなり実力の低い者たちばかりだ。設定のせいで能力的にもかなり差がある。組まない方が良いに決まっている。相手から誘われない限りは。
NOと言えない、誘われたら断りづらい日本人の典型なユーリ君なのだ。仕方ない。
「ふ~ん」
そんなユーリをよそに何やらミレイアが品定めをするように彼を上から下まで眺めまわす。それから小声で、こいつなら問題ないか、お人好しっぽいし、などと呟き出した。
何が問題なしなのやらである。
「うん、あんたとならパーティー組んでやっても良いわ」
ブツブツと呟いていたと思っていたら、いきなりそんなことを言い始めた。
何でかというと、パーティーを組んでなければ先程のような勧誘の嵐に遭うからだ。それが戦力として求めているなら良いが、その実、レアな女性冒険者を確保したいという下心が見え見えだった。そんなパーティーに入りたいと思うはずがない。
その点、ユーリはミレイアを1度もそんな目で見ていない。まあ、見ていないのではなく、彼が見れないだけである。そんなユーリなら間違っても彼女を襲うことはない。襲う気概も、勇気もない。
それから武装神官(見習い)であるミレイアは多少ながらも法術が使える。つまり回復法術が使えるのだ。回復役がいるのといないのとではパーティーの生存率に雲泥の差が出る。
また、1人よりも2人の方が良いだろうという判断だ。
ミレイアが見る限りユーリは高実力。頼りになりそうなのと一緒の方が合格できるだろうと考えた。つまるところは完璧な打算である。
そんなことを正直に堂々と語るミレイア。いっそ清々しいと思うユーリ。そんな正直な奴ならば、問題ない。それにユーリは女性からの頼みは断れない。
フェミニスト? いえ、へたれなだけです。
「なるほど、ならパーティー組むか?」
「ええ、これからよろしく」
「こちらこそ」
互いにメニュー――正式名称は神託板――を開き、互いにパーティー申請し同意する。パーティーを組むにはこの様に互いの同意が必要なのだ。あと、ユーリは神託板は他人には見えないと思っていたが、そうではなかった。
そのことはエレンに聞いて発覚した。
なぜ、ユーリが見えないと勘違いしたのか。それはスニアの村の農夫たちが気にしてなかったからだ。この世界ではこの神託板はありふれたものであり、あのメッセージも普通だったから農夫は気にしなかった。そのため勘違いしたのだ。
――ミレイア・ハートネットとパーティーを結成しました――
「良いわね。じゃあ、これからどうする?」
「連れというか何というかに言ってから、準備、それから出発しようと思う。この街来たばっかで、まだ準備できてないんだ」
「いいわ。私の方は教会の方に荷物取りに行けばそのまま行けるし。じゃあ、行きましょう」
ひとまずはエレンに話をしてからということになり、ユーリとミレイアは土壁の塗り絵亭へ向かった。
********
「ふふっ、なかなか良いことを聞いた」
一方エレンは嬉しそうな顔で土壁の塗り絵亭に荷馬車を走らせていた。
商談での稼ぎは上々。元々運んでいた防具になる皮の他にもユーリの手に入れていた魔獣の素材が結構な値段で売れたのだ。
ルード銀貨300枚という素晴らしい稼ぎだ。ジャラジャラと成果の合唱が素晴らしい。ほくほくと顔が緩むというもの。布で見えないが。
しかも、近々戦があるということで、ここよりも東で武具が値上がりの傾向があるという情報も手に入れた。
武具はどんなに良いものでも所詮は消耗品だ。それだけに日頃から良い稼ぎが期待できる。更に戦で入り用となればいつも以上に良い稼ぎが期待できる。
次の商売と次の行き先が決まったも同然だ。
「ユーリの魔法のポーチを利用すればかなりもっていけるな。中々よさそうだ」
そんな風に、今後について考えていると土壁の塗り絵亭に到着した。
タイミングが良いことにユーリも帰って来ている。ただ、そこに見知らぬ少女がいたことにエレンは驚く。聞けばパーティーを組むとか。それで更に驚いたのは内緒だ。
「――だから、最大1週間かかる」
「なるほど、まあ、お前ならさほどからないだろ。私のことは気にするな。楽しんでくると良い」
ユーリの実力を知っているからの発言だ。本当に、その程度でしかない。エレンの認識ならば、もう合格は間違いないのだ。親ばかかもしれないな。などど、そんなことを思いながら、エレンは、ミレイアを品定めする。
「ああ、悪いな」
「それとミレイアだったか」
「は、はい」
いきなり話しかけられてどもるミレイア。まだ短時間の付き合いだが、彼女の性格を把握しているユーリは、あのミレイアがどもっていたので珍しいと思った。それに何やら緊張しているようだった。
しかし、やはり思うだけであって口には出さないユーリなのであった。
「ユーリを頼むよ。色々危なっかしい奴だからな」
「は、はあ」
再び別れの言葉を告げて、ユーリとミレイアは迷宮に向かう準備のため通りを歩き出した。
「ねえ、あの人どういう人なわけ? 顔隠してるとか怪しすぎでしょ」
ミレイアがエレンが見えなくなってから聞いてきた。それを聞いたユーリは彼女がエレンの前で緊張していた理由がわかった。警戒して緊張していたのだ。確かに初対面であんな格好なら誰でも警戒して身を固くするのは当たり前だろう。
しかも、獣人族固有の技能で、自身以外を強制的に威圧する常時発動技能『獣心威圧』が常時発動しているというのもあるだろうが。
それがわかったところでユーリはどう答えるべき考える。彼はエレンから教会の人間はあまり他種族、特に獣人族と良い関係ではないと聞いていた。
なので、それをぼかして嘘っぽくないよう答えなければならない。
「え~っと、エレンはちょっとした恩人でな。ああやって顔を隠してるのは色々とあってだな。あまり詳しく聞かないでくれると助かる」
「そうなんだ。まあ、詳しくは聞かないわ。関係ないしね」
結局無難な理由をでっち上げたユーリ。でっち上げというより誤魔化しだ。無理かなとか思っていたが、ミレイアはそれで納得したようである。
ユーリの準備をするために彼とミレイアは大通りを人の間をぬって進む。ユーリの必要な物は保存食と水である。
薬草などの冒険者にとっての必需品は予めグータニアに来る前に買っておいた。保存食と水もあるにはあるが、なくなってきているので補充をするのだ。そういうわけなので店に向かった。
「良し、だいたい食料はいいだろ」
「…………」
ユーリが買った物を魔法のポーチに入れながら次は何を買うべきかと考えているとミレイアの視線に気がつく。その視線の先にはベルトの背中側につけられたポーチに向いている。
「ん、どうかしたか?」
「……さっきから、気になってたんだけど、それ、なんでいくらでも入るわけ?」
「そういうものだからだ」
「そういうものって…………それもしかして遺物?」
「そうだが、それが?」
「あんた、何者?」
「……あ~」
ユーリはミレイアが何を言いたいのかがわかった。同時にエレンから聞いた話を思い出す。
魔法のポーチには複数の魔法が付与されている。
時空魔法による無限空間に、保存などの魔法が付与されている。このように魔法が複数付与された特殊な道具は魔導具ではなく遺物と呼ばれる。
まず、詳しく言っておくと魔導具とは魔法を付与された道具のことであり万人に使えるもののこと。才能ある者にしか使えない魔法を万人に少しでも利用できるようにしたものだ。
それにより世界の生活はかなり楽になった。ただし、単一魔法しか付与できない上に性能は魔法に及ばない。
それで件の遺物であるが、その名の通り今よりも遥かに進んでいたと言われる古代魔法文明の遺産のことだ。
現代の技術では再現不能と言われるほど凄まじい力を秘めている。複数の魔法が打ち消し合わずに付与されているのがその証拠だ。
魔導具はこれをもとに作られた劣化版である。それ故に普通の市場には出回らない。そのため遺物を持つ者は、遺跡へと潜る凄腕の冒険者か、よほど物好きな収集家の貴族などである。
ユーリはどう見たって貴族ではないし、今から冒険者選抜試験を受けようとしているのだ。凄腕の冒険者というわけでもない。
つまりミレイアが言いたいことは、凄腕でも巨万の富を持った貴族でもないのに遺物を持っているユーリは何者なんだ、ということである。
その疑問は最もであろう。ちなみになぜ遺物だとバレたかと言うと、収納系のアイテムに入れられるアイテムは元から、その収納物に入れれるものしか入れれないためだ。
だから、ポーチに普通は入れて置けないようなものを入れていたからバレたということ。
「何と言うか。家に元からあった」
「家って、あんたの家ってどんなのよ」
「それは聞かないでくれると嬉しいんだが」
ユーリ自身も知らないのだから、答えようがない。どこかの山奥ということにでもしておく。咄嗟についた嘘なのだから、しょうがない。
「じゃあ、聞きたくても聞けないじゃない。……いいわ。他人の事情を詮索するのは趣味じゃないし。
で、もう準備はいい?」
「そうだな、だいたいは良い」
「じゃあ、私の荷物を取りに行きましょう」
ミレイアが先頭になり、彼女が泊まっているという教会へと向かう。
大通りから少し離れた場所に彼女の所属するトルレアス神教の教会は建てられていた。このヴェスバーナ大陸で最も多く信仰されている宗教であって、かなり立派な建物である。
トルレアス神教。
ヴェスバーナ大陸で、最も多く信仰されている一神教の宗教。トルレアス神教によれば、トルレアスと呼ばれる創造神が世界を創造し、人間を生みだしたというもの。教義は彼を信じる者は、彼の加護を得ることができ救われるという類のもの。実際に神の加護というものはある。
ユーリの持つ言語の加護や無病の加護などが、それに該当している。ユーリの場合はシィからの加護であるため、厳密には違うのであるが、この世界では、これで通している。似非信者というわけだ。
また、1週間のうち定められた日に教会で祈りを捧げなければならない決まりがあるらしい。むろんユーリは従っていない。
そこの入り口の前で、ミレイアが待ってて言った。
「じゃあ、ちょっと待ってて、取ってくるわ」
「ああ」
というわけで、ユーリは教会の外で待つことにして、ミレイアだけ教会に入っていた。
そして、すぐに出てきた。入るときにはなかった肩からかけるタイプの鞄と、腰にはシュッツァーのついた革のブックホルスターが付けられていた。
十字架の装飾があしらわれており、神聖さがあるように感じる。そして、そこには革で丁寧に製本され、四辺に金属で補強が施された聖書らしき本が収められていた。
「早いな、おい」
「待たせるのも悪いでしょうが。何? 待っときたかった?」
「いや」
率先して待ちたい人間などいない。
「なら、良いじゃない」
中々良い奴である。
それから、2人は大通りに戻り、迷宮へと向かいながらどのように戦うなど、作戦について考えながらグータニアの街を出発したのであった。
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――グータニア魔法ギルド――
「はい、はい、そうです。全滅でした。はい、それでこれから私はどうすれば良いですか? ……はい、わかりました。とりあえずは冒険者選抜試験が終わるまではここにとどまることにします。はい、わかりました」
現代日本で言うところの電話のような魔法通信機の受話器を置いた黒を基調にした、微妙に和風アレンジが施された騎士服を着た幼女体型のカノン。
先ほどまで上司にスニアの村の惨状と、そこで見たことを報告していたのだ。それと、私事についても尋ねた。そして、冒険者選抜試験が終わるまでここで待機を命じられたのである。
祭りでは何かしらの不祥事が起きることや、何かしらのトラブルが多くなったりするので、それについての対応を命じられた。グータニアの騎士団と協力しろとのことである。
そんな感じで、この所は報告書を纏めたり、ひたすら走ったりと色々とあったので、つかれたのか机に突っ伏するカノン。
そこに一見しただけでは男か女か分かりづらい、というかわからない、いやどちらかと言えば女よりの外見をしている男がやってきた。
到底信じられないが男である。着ているのはゆったりとしているが、まったく動きを妨げない動きやすそうで丈夫そうなローブと、何かの軽い革製の胸鎧。
そして、それらの上にマント。中世ヨーロッパファンタジーのゲームに出てきそうな冒険者兼魔法使いのような格好だ。
髪は女のように長く背中側でまとめられた、艶やかな黒曜色の髪。人間離れした深淵の深さのある鮮やかで濃い紫水晶色の瞳。
美形というより美人と言った方がしっくりくるような顔付き。かなりの高身長であるがかなり細い体つきのせいか、遠目に見ても、いや近くで見ても黙っていれば、いやおそらく黙っていなくとも女のように見える。
並んでいればカノンよりも“女”として見られること確実である。事実、そうであり、1週間ほど彼女を落ち込ませたのは別の話。
だが彼は歴とした男だ。酷く残念で勿体無い感が否めないが男なのである。誰が何と言おうとも男なのである。
そんな男がカノンの正面に座る。その座り方がまた惚れ惚れするほど上品で容姿のせいか女らしいのがムカつくカノンであった。
「ああ、シオンさんあなたですか」
眼だけそちらに向けて心底うんざりそうに、投げやり気味に言う。
だって仕方ないだろう。片や幼児体型がコンプレックスの本物女。
片や女よりも女にしか見えない超絶美人の男なのだ。
言わば目の前にいるのは彼女の憧れの容姿なのだ。それが女だったのならまだ許せる。
だが彼はなの男だ。そう間違いなく男なのだ。
歴とした女なのに幼児体型で女の子にしか見られないカノンからすれば忌々しいことこの上ないほどの存在なのだ。
そんなどこからどう見ても女にしか見えない男――シオンが現在魔法ギルドから派遣されているカノンのパートナーである。
「何ですか。オレじゃ不満ですか?」
「やる気の無い人といても不満しかないですよ。待機命令と援護命令で暇ですし」
「それもそうですね。ふむ、じゃあ、昔話でもしますか? 暇なんでしょう?」
「仕方ありませんね。共通の話題っていってもそれしかありませんから」
よっと、と言う風に起き上がりシオンに向き直るカノン。
「おっ、やる気になりました?」
「はい。まあ、あなたが言っていたアレの時期というのも思いだしましたから」
「ええ、そうです。オレが開発した時空魔法で直に確認したんですから間違いありません。おそらく、もう“規定人数”で、こっちに来ているはずです」
「そうですか……」
『失礼します!』
しかし、それ以上の話はその部屋に入ってきた魔法ギルドの広域魔力観測員によって遮られる。ちなみにやはり魔法使いらしいローブを着ている。
話を中断されたので、続きはまた今度ということになって、2人は観測員の話を聞くことにした。聞くところによれば、数時間前に少々異常な魔力振を観測したとのこと。詳しい資料を見ると、新しく発見された迷宮が震源らしい。
その話を聞いてカノンがふと思い出す。
「そういえば、あそこでは今、冒険者選抜試験があっていましたね」
「どうします伝えますか?」
「いえ、多分無駄ですよ。冒険者ギルドですし」
「それもそうですね」
と2人して納得し、今まさにそこに向かっているであろう冒険者選抜試験受験者たちに心の中で合掌したのであった。
読んでいただきありがとうございます。
よろしければポイントや感想をお願いいたします。ポイントと感想は作者の励みになります。
あとこんなキャラ出してという案があれば申して下さい。出すかもしれません。男、女問いません。何でもござれ。
あ、男キャラなら言われたらいずれ絶対出します。
あと、すみませんが作者は豆腐メンタルなので批評はソフトにお願いします。
では、また次回も会えることを祈ってます。




