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ホテルの向こうの異世界へ  作者: テイク
第0章プロローグ
2/94

0-1

注意


これは完璧に自己満足からなる小説です。よくある異世界トリップ小説です。

設定の無駄遣い、ご都合主義、超展開、作者の都合、主人公成長チート(?)、無駄、よくある展開、低クオリティー、低文章力などが多分に含まれます。

それでも良いという心広い方のみ、お読み下さい。


また、作者は豆腐メンタルなので批評はソフトなものでお願いします。


では、どうぞ


 西暦2112年7月19日(木) 夏 昼過ぎ


 真夏真っ盛りの昼下がり。澄み切った雲一つない空。いつもよりも遥かに高く、広く深く青く見える青空。まるでそのまま吸い込まれて、どこか知らない場所に連れて行かれそう。そんな錯覚すらすら覚える。

 それほどまでに、空は綺麗で澄み切っていた。何もさえぎるものはない。一面、青、碧、蒼。ただただアオが視界を染め上げる。

 そんな青一色、澄み切った空の中に1人、空を舞台に、自分が主役だと言わんばかりに燦々と輝くものが1人。

 それは太陽。1人仕事熱心な太陽は、無駄に頑張りを発揮しアスファルトに照りつけて、地上を熱地獄に変えている。世界中で問題になっている環境問題がそれに拍車をかけていた。

 そんな熱地獄の通りを自転車を押して、とぼとぼ歩く少年が1人。

 高校の制服の夏服であろうポロシャツを着た少年だった。

 少年の名は篠宮悠理(しのみやゆうり)。自宅から多少離れた、色々と曰くのある私立高校に通う高校2年生である。

 ちなみに昼間に帰っているのはこの日が定期学力試験の最終日で、悠理の高校に在籍している特別専攻生徒の連中を対象にした馬鹿騒ぎ(イベント)に備えて早く終わったからである。

 悠理の特徴を述べておけば、髪は黒くあまりそういう、年頃の男子でも気になるファッションに気を使わないのか、使いたくないのか割りとぼさぼさ。身長はかなりとまではいかないまでも平均よりは幾分か高いだろう。

 細身ながらも、細過ぎてひ弱というわけではなく、割りと筋肉質な体つきをしているようである。顔は比較対象がいないので断言は出来ないが、中の上くらいでなかなかに良いのではないだろうか。

 しかし、今は暑さのせいか不機嫌そうにしかめられている。


「暑い……」


 汗だくで額の汗を拭いながら呟く悠理。

 しかし自分で言った言葉だが、それだけでも体感温度が2、3度上がったような気分になったようである。言ったことを後悔していた。後悔したところで暑さはどうにもならないが。

 そんなまるで世界の悪意が透けて見えそうなる地獄の中を、汗だくになりながら悠理は自宅に向かいながらぶつくさ文句を言いながら歩くしかないのである。それにいつもならば自転車で帰っているはずなのだが、タイヤがパンクしたために歩いていた。

 そのため、いつも以上に暑さが堪えている。また、高校から自宅まで結構な距離があるのもその理由であった。


「はあ」


 悠理は溜め息とも、息継ぎともとれる息を吐き、暑さから気を紛らわせようと空を見上げる。やはり彼の視界が青一色に染め上げられる。ただ遮る物がないために嫌なものも同時に見えてしまう。チラリと憎しみすら感じる太陽の無駄にイイ(・・)笑顔が見える。

 だが、彼はすぐに視界から外す。見ているだけで暑くなるからだ。もう暑くなったので今更遅いのだが。


「空がたけえな……」


 悠理はそう呟く。

 空は果てしなく高い。それに青い。気を抜けば吸い込まれそうな程に。そのままどこか、別の世界にでも行けそうである。そう思ったのか悠理は呟く。


「どっか、行けねえかな……」


 その呟きの通り、悠理はそのまま吸い込まれてどこかに行きたいと思った。どこか、こことは違う場所へ。世界へ。

 昔からどうしようもない違和感があったのだ。どこか自分が他の人間とズレているような、そんな感覚があった。違和感があった。

 それを感じないで済むようになったのはファンタジー小説に出会ってからだ。勇者が魔王から姫君を助け出す物語。人を襲う悪の(ドラゴン)を倒す英雄の物語。神々に戦いを挑んだ男とその仲間の物語。様々な語り手によって語られる様々な古今東西の英雄譚。それらに目を通し、世界に入っている(読書している)時だけはその違和感を忘れることが出来た。

 また、高校入学と共に失踪した父親に勧められた曰く付きというか、物凄いというかの高校に入学してからも忘れることができた。高校での生活によって、違和感のせいで人と話すことが苦手だった悠理に、しかも女子で、素でファンタジーのような夢見がちな話をする相手もできた。

 だが、それでもこうして時々思いだしてしまう。違和感に、どこか別の世界へ行きたいという望みを。そしてそれはぐるぐると悠理の頭の中を駆け回る。


「いや、やめよう」


 自宅が見えてきたので頭を振って今まで考えていたことを振り払う。ぐるぐると回っていた考えは消えた。こんなことを考えたままでは自宅には入れない。入ってしまえばそういうことに敏感で少し鬱陶しい同居人に色々とからかわれるだろうからだ。

 自宅に着いてまずはパンクした自転車を所定の位置に置き悠理は玄関を開けた。そこには彼を待ち望んだ涼の空気と、まったく待ち望んでなどいなかった意味不明なものが迎えた。

 悠理の目の前に飛び込んできたのは、幾重にも重なり合い1つと化した布団の塊であった。大きさが彼の腰程度まであるので中に何か入っているのは確実だ。それが何なのか、何となく彼にはわかった。だが、わかりたくなどなかったし、こんなものなければよかった。


「はあ~」


 溜め息をついて瞬きする悠理。できれば目をあけたら、布団の塊がなくなっていることを願って。

 しかし、現実は無情でいくら瞬きしても、目の前の現実(布団の塊)は消えてはくれない。寧ろ存在感が増しているような気さえ起こさせる。実際、転がったのか幾分か悠理に近づいてきていたので、あながち悠理の感じていることは間違いではない。


「はあ~~」


 悠理は、再度溜め息をついてから靴を脱いで家に上がった。きちんと靴を揃えることは忘れない。

 しかし、地獄から帰って来れて嬉しいはずなのに、悠理の気分は全く晴れない。寧ろ晴れるどころか天候は悪化していると言ってもよい。

 原因は明らかで目の前の布団の塊。強いて言えばこんな馬鹿げたことをしている中身だ。


「はあ~~~」


 三度目の溜め息をついた悠理は、蹴りの構えを取る。

 悠理が何をするのかは一目瞭然。これから目の前の布団の塊を蹴るのだ。蹴ってどうなるかなどしったことではない。暑さでだいぶまいっていた所にこんなものを置く誰かさんが悪い。

 というわけで、軸足に力を入れ、腰を捻りつつ悠理が考えうる最高のフォームで蹴りを放つ。今まで溜まっていた暑さによるストレスも一緒に乗せて放った一撃は綺麗に布団の塊を捉えた。


「ギャッ!?」


 ボスッ、という鈍い打撃音と女の悲鳴が聞こえた後、サッカーボールのように布団の塊は、綺麗に廊下を転がった。悠理は特に何かスポーツはしていないので、布団の塊放物線に飛ぶなんてことはない。

 転がるごとに塊の布団が剥がれていき見る見るうちに小さくなっていく。そして、廊下の端の扉に真ん中の中身がぶつかった時点で、見事に布団の道が出来上がった。

 中身はというとガスン、と扉に頭をぶつけて痛みに悶えている。しばらくして、痛みから回復するやいなや悠理に詰め寄ってきた。


「何するの悠君!」

「あんたこそ何してんだ麻理さん」


 布団の塊の中身こと鷹野麻理(たかのまり)。ワイシャツ一枚という酷く一部の人間に物凄い好まれる姿をした20代くらいの、かなり開けっぴろげな女性。篠宮家に割りと昔から下宿中の自称大学生。

 自称が付くのは、悠理が小学生か中学生、もしくは物心がつく位の時から下宿というか居候しているので、一体何年大学生とかやっているんだという話だからである。

 事実、悠理は彼女が普段何をしているのか良く知らない。ただ、料理や家事はかなり出来るので悠理としては助かる限りであるので、何も聞かない。

 なぜなら、悪い人ではないからだ。仕事で多忙でいなくなることが多かった父親に代わり、しっかりと親代わりを務めてくれたからである。言葉には出さないが精一杯感謝している。

 容姿についてはとてもよいだろうが、どこかずぼらっぽい。髪は黒髪で癖っ毛でハネて広がっている。とにかくスタイルがよく、背が高い方の悠理以上に背が高い。どこの世界のアマゾネスだろうか。

 まあ、物凄いアマゾネスからは程遠い格好なのだが。その格好のせいもあり酷く目の毒な彼女は非常にくだらない理由を言い放った。


「失恋したから」

「そうか……」


 悠理はそのまま玄関の目の前にある階段に足をかけ、自室へ行こうとする。何で失恋であんなことになるのかとは聞かない。聞いたところで理解できるとも思えない。

 また、失恋した理由も聞いてやらない。聞いたところでどうせ同じ理由だ。もう一度聞くなどそんな面倒なことはしたくない。

 というかこのやりとりも年中というか毎日やっているので、悠理からしたら一体何がしたいんだという話なのである。


「ちょっと、ちょっと! 待ってよぉ~! 話聞いてよ~」


 だが、悠理の希望通りに事が進むはずはない。

 案の定、階段を上がりかけた彼の腕が麻理に掴まれる。振り解こうとしても振り解けない。力の差があるのに振りほどけないのはどういうことだろうか。

 そこはやはり、リアルアマゾネスの家系のせいなのかもしれない。これも含めていつものことである。

 悠理は溜め息をつき、渋々と、本当に渋々と嫌々そうに振り返った。


「話聞いてくれる?」

「ああ――断る!!」


 悠理が振り返って気を抜いていたのか、麻理の拘束を彼はいとも簡単に振り解くことができた。それと同時に一段飛ばしで階段を駆け上がる。そのまま二階の廊下の奥へ。

 元からドアの開いていた自室へと滑り込み、すかさずドアを閉めて鍵をかけた。その間約5秒ちょい。慣れたものである。悠理本人からすれば慣れたくなどないだろうが。

 そして、次の瞬間には外で勢い良くドアに麻理がぶつかる音と悲鳴が聞こえた。その後、ドンドン! とドアを叩く音と、ガチャガチャとノブを回そうとする音が響く。

 だが、悠理はこれを無視。どうせいつものことなのだ。気にするだけ無駄なことは悠理にもわかっている。

 しかし、ここで問題が1つ。しばらくは部屋から出れない。

 いつもならば良いのだが、今回はそうもいかない。悠理はいまだに昼食を食べてはいないのだ。さすがに食べないのはいけない。

 食べるには部屋を出なければならない。でも出ることができない。


「……まあ、別にいいか」


 さて、どうするかと考える悠理であったがすぐに考えるのをやめた。一食抜いたくらいではそこまで騒ぐことではない。一食抜いたところで今すぐ死ぬなんてことはないのだ。

 それに、少々この所はうまく逃げていて激しい運動をしていなかったので、微妙に運動不足であったのでちょうど良い。

 昔は剣道とか何とかかんとかやっていた記憶が、あるようなないようなはっきりしないのだが、今は高校が忙しいので何もやっていない。その忙しいが剣道以上にハードなものであったのは悠理にとって笑えないところであったが。

 さて、部屋の外で麻理がしきりにドアをあけようと格闘しているせわしい音をバックミュージックに悠理はラフな部屋着へと着替えて、パソコンの電源を入れた。

 制服やらを畳んでいる間にパソコンは起動し終える。ディスプレイを見るとメールの着信を知らせていた。


「何だ?」


 それは悠理には心当たりのないものだった。

 メールアドレスも彼が見たことがない代物であったし、なによりパソコンにメールをして来るような友人はいない。

 いや、別にメールをしてくる相手がいないわけではない。携帯ならばきちんとメールをしてくる友人がいる。だから決して悠理の友達が少ないとかそういうのではない。

 確かに友達は数えるくらい少ないのだが。メールしてくる者はもっと少ないのだが、いないことはない。具体的に言えば2人くらい。

 しかし、そのどちらもパソコンにはメールをしてこない。迷惑メールも来ないように設定しているので、何なんだろうかと思いながらも悠理はメールを開いた。

 無警戒すぎるが、警戒した所でどうにかなるものでもないし、そのメールのタイトルに惹かれたのだ。

 メールのタイトルは【異世界への招待状】。

 明らかに嘘臭いし、眉唾も良いところのタイトル。だが、悠理の興味をそそるには十分なタイトルであった。何にしても良い暇つぶしにはなる。

 もし本物だったら、昔からの違和感を消すことができるだろう。

 そんな感覚で彼はメールの内容を見る。そこにはURLのが書かれているのみであった。

 そこに飛べということなのだろう。またも、悠理は無警戒にURLをクリック。URLの示すサイトへと飛んだ。


「へえ、面白そうだ」


 読み込みが終わった画面を見た悠理はそう嬉しそうに呟いた。

 ――【Dream Role Playing World】。

 夢のような、ゲームのような異世界生活プロデュース。

 異世界での生活を望む方、社会に押さえつけられ自身の力を発揮できずにいて、その力を発揮させたい方、または異世界で新たな人生を望む方歓迎。夢を彩る異世界の生活をあなたへ――。

 だいたいそんなことが画面には表示されていた。画面中央タイトル下にEntryのボタンがある。

 悠理は一瞬迷ってから押した。確かに胡散臭いが不思議と本物ではないか、信じて良いのではないかと思えた。彼は何か面白いことが起きるのではないかと、年甲斐もなくワクワクている。そのせいか良くサイトを見ずにEntryを押した。押してしまった。

 それが始まりだとも知らずに……。


読んでいただきありがとうございます。


次回もよろしくお願いいたします。

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