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ホテルの向こうの異世界へ  作者: テイク
第1章旅の始まり編
12/94

1-8

今回は、ホライゾンでの話です。


 ????年??月??日(?) ホテル【ホライゾン】8811199号室


「はっ!?」


 毎度毎度の如く気がつくと見慣れたような自室に似たホテル【ホライゾン】の部屋の天井が悠理の目の前に広がっていた。

 だが、悠理にはそんなことはどうでも良かった。問題は何故ここにいるのかであった。


「何で……いや、そうか」


 悠理は3日間異世界にいるようにした。

 3日目に眠らなければホテル【ホライゾン】には戻らない。つまりはそういうこと。最後に気を失ってからその間に3日目が過ぎてしまったということだ。

 その事実に気がついた悠理は頭を抱える。向こうで自分がどうなっているのか気が気でなかった。どうしようか考える。

 とりあえず、イリスがやったならば問題はないだろうが心配ないとは言い切れない。悠理はイリスを信用してもよいのか計りかねていた。


「考えても仕方ないか」


 考えた末、悠理はイリスを信用してもよいと判断する

 。恐らくはキチンとしてくれているだろうという根拠のない自信があった。どの道、今すぐ異世界に戻らない限りは正確には判断できない。

 色々調べたいこともあるので今すぐ異世界に戻る気はない。どんな非日常であろうとも時間が経てば日常へと変わる。

 それを防ぐには適度にすることだ。適度に元の世界に戻って、日常を過ごし、また適度に異世界で過ごせば少しでもそれを防ぐことができる。

 だから戻らない。そのため今心配しても意味がない。意味がないなら考えないに限る。


「しかし、失敗したなあ。3日間とか設定しなけりゃ良かった」


 それよりも今回のことで悠理は何日間で帰る設定はあまりしない方が良いと思った。設定してしまったら突然のトラブルに対応できない。

 一々ホテル【ホライゾン】までもどって、トラブルがあったから、また異世界に戻るというのは面倒くさい。それに心構えができない。そういった理由で悠理は帰る設定を止めることにし、別のことを考える。

 考えるのは村を出てから必要になるであろう知識についてだ。

 悠理は何時までもスニア村に留まる気はない。もっと世界を見て回りたいからだ。それにミレアに聞いた話であるが、近くの村が山の砦にいた盗賊に襲われているらしいのでいつ盗賊がスニアの村までやって来るかわからないからだ。

 ミレアやニーナたちは、どういうわけか絶対に大丈夫と言っていたが、信用してよいかイマイチその理由がはぐらかされてわからない上に、外に頻繁にでている悠理にとっては全く意味がない。

 だからいずれ村を出た時の為にサバイバルできる知識が必要になる。それについて何が必要なのか考えなければならないのだ。

 特に悠理は特別記憶力が良いわけではないので、最低限の知識だけに絞らなければならないため、良く考える必要がある。

 どうするかしばらく考えた悠理は決定とばかりに呟く。


「やっぱりこういう時は図書館に行くか」


 インターネットよりも手間はかかるが遥かに信憑性が高いということで悠理は必要な知識を得る為に図書館に行くことを決めた。悠理がホテル【ホライゾン】のことや、異世界に行ったということを話してやりたい奴もそこにいるのでちょうど良い。

 目的と目的地が決まったので早速行こうと、悠理が寝ていたベッドから起き上がり出口に向かおうとすると、服の裾を掴まれた。ここに裾を掴むような相手は1人しかいないので誰が掴んだのか見なくてもわかった。


「何だシィ?」


 裾を掴んでいたのは未だぶかぶかの魔法使いのローブのようなものを身にまとったシィ。光を受けて相変わらず髪は輝いている。悠理を見上げて何やら要求しているようであった。


「ん!」

「いや、わからん」


 シィは目をキラッキラッと輝かせてしきりに何かを伝えようとしているのだが、如何せん彼女はまだ喋れないので悠理には伝わらない。

 早急に言葉を教えた方が良いんじゃないだろうかと悠理は思いつつ、シィが何を伝えようとしているのか考える。

 しかし、あまり察しの良くない、というよりむしろ鈍感な部類に入る悠理には判断材料が少ないのもあってシィの伝えようとしていることがわからない。

 とりあえず、恐らく、十中八九、遊んで欲しいのであろうと悠理が考えついたのはしばらく経ったあと、この前のことを思い出してからだった。

 思い出すのに時間が経ったのは3日行っていたからである。そのためすっかり忘れていた。異世界での生活が楽しすぎたのもある。人間、楽しすぎたら何か他のことは忘れてしまうものだ。


「遊んでほしいのか?」

「ん!」


 悠理が聞いてみればやはり当たりのようである。

 ガイド曰わく、悠理の神様らしいので仲良くして損はないだろうと彼は考えて、少しくらい遊ぶことにした。キラッキラッ輝く瞳を曇らせることができなかったのもあるが。

 そういうわけなのでシィと遊ぶことにした悠理なのだが、何をしてよいのかわからなかった。遊ぶにしても悠理の部屋は子供と青年が遊ぶには狭い。

 そうすると必然的にパーティーゲームやら、何やらの室内ゲームしかないのだが、本来の悠理の部屋ならまだしも、再現されたホテル【ホライゾン】の部屋にはそういったものはない。

 何かないかと考えていると悠理の服の裾が引っ張られる。引っ張っているのはやはりシィ。しきりに悠理の服を引っ張っり出口とは逆方向にあるドアを指差している。


「ん? ドア?」


 本物の悠理の部屋には本来あるはずのないドアがそこにはあった。前からそこにあったかのように、当たり前に部屋に同化していたので気がつかなかったがそこにはドアがあった。


「そこに行けばいいのか?」

「ん(コクリ)」


 何かわからないがシィが行けというのなら大丈夫だろうと判断し悠理はドアへ向かう。シィは楽しそうについて来た。悠理はドアを開けてくぐり抜けた。

 そこはスニアの村の外に広がる平原に負けず劣らず広大な草原だった。

 空には淡く澄み切った幻想のような空に太陽と白い雲が浮かんでいる。

 夏の忌々しくギラギラと照りつけるような太陽ではなく、燦々輝く見ていて此方も笑顔になるような笑顔を振りまく爽やかで白い太陽が草原を照らし、穏やかで涼しげで爽やかな青い風が吹き、緑が美しい柔らかな草を揺らす。

 神域の草原がそこには広がっていた。

 草原に足を踏み入れた途端シィが笑いながら駆けて行く。実に楽しそうであった。悠理はそれを見ながらふわっふわっとした草に腰をおろす。色々と疑問はあるがこの際それは横においておく。

 このような人智を超えた気持ちよい場所にいるのだやることは一つだけだ。シィと遊ぶと言ったが、今は飛んでいる蝶を追っかけ始めたのでしばらく放っておいても大丈夫だろう。そう悠理は判断した。

 というわけでやること(昼寝)を始めることにした。寝てばかりだと言われそうだが、昼寝をする勇気で乗り切ることにする。


「あ~、気持ちいいな。こういう時は寝るに限る」


 ごろんと寝転がった悠理は体を伸ばしながら言う。その言葉は爽やかな風に乗ってすぐにどこかへ飛んで行くが悠理は気にせず、そちらの方がより気持ちよくなると言わんばかりに口にする。それから悠理は腕を枕代わりにし眼を閉じた。

 目を閉じれば優しげな風がその体を撫でているのがわかる。柔らかな草はまるでベッドのようだ。最初は気がつかなかった花の良い匂いも感じる。それは無性に眠りを誘った。


「少し、くらいな……」


 そんな世界に抱かれた悠理はすぐさま昼寝(至福の時間)へと入って行ったのだった。

 さてさてそれからしばらく後。具体的には2時間と6分後。結構な時間眠っていた悠理は自身をゆさやさ揺さぶる感覚を感じて目を覚ました。


「何だ、シィか」

「ん♪」


 むしろシィ以外にいないのだから彼女以外が悠理を起こすのは考えるまでもなく当たり前である。体を伸ばしつつ起き上がった。喉が渇いていたが水がないので唾を飲み込んで何とかする。

 そんな感じで完全に体を覚醒させて行く悠理は隣に立ってるシィを見た。悠理が寝ている間に何をしていたのかはわからないが、かなり楽しく駆け回っていたらしくシィは体中泥だらけだ。だが満足げな笑顔を浮かべているため本人は気にしていない様子。

 次に周りの景色を悠理は確認する。どこも変わっていない。悠理が寝る以前との違いはなかった。どうやら時間が進んでもここの景色は変わらないようだ。そんなことを確認した悠理はシィへと話しかける。


「さて、満足したか?」

「ん(コクリ)!」

「そうか。なら着替えろ。泥だらけだ」

「?」


 シィはわからないご様子。なので悠理は着替えについて説明。無事理解を得た。しかしシィに合う服がない。悠理の服を着せるわけにもいけないのでどうするか考える。ガイドでも呼ぶかと思ったが、あんなのの相手はしたくないと却下した。


「はーい! 呼ばれたようなので来ましたよ」

「呼んでねえ!」


 だが、却下して呼んでもいないのにガイドが現れた。姿も格好も相変わらず奇妙奇天烈で人を不快にさせる笑みを張り付けている。


「彼女の服をご所望とのことなのでカタログをお持ち致しました。初回は無料でご利用できます。はい」


 ニヤニヤと笑うガイドから手渡されたのは服のカタログだった。


「そうかもう帰っていいぞ」

「おや、せっかく御要望にお応えして持って来たというのに酷いですねぇ(ニヤニヤ)」


 どこがだ。と思いつつ悠理はガイドを無視してどれにするかを選び始める。ガイドはやれやれと首をまわしてから何事もなかったかのように頭を背中側に向けて去って行った。どんな恐怖映像だそれは。


「さて、邪魔者はいなくなった。シィ、どれがいい?」

「ん?」


 悠理はシィにカタログを見えるのだが、彼女はわからないというように首をかしげる。着替えの意味は教えたが、こういうことは教えていないのでわからないのは当たり前である。仕方がないので、悠理が選ぶことに。

 しかし、どういったものを選んでよいのかわからない。シィならば何を着せても問題はなさそうであるが、それだと今後シィが成長して分かるようになったときに怖い。


「……動きやすいのでいいか」


 散々悩んだ挙句動きやすいのでいいやと投げやり気味に決定。すると、カタログは消えて変わりに商品が現れた。

 これには若干驚いたが、ガイドが神出鬼没なのを考えればワープや瞬間移動くらいあるかと思い直し、さっさと着せることにする。その際何もなかったのでその描写はカットの方向で。


「~♪~♪~♪」


 部屋に戻った悠理たち。シィは新しい服ということで喜んでいるのだろうか部屋の中でくるくる回っている。

 シィが着ているのは半袖のシャツの上にグレーのパーカー、それにショートパンツにニーソという格好。悠理にはあまりファッションセンスがないのでこんな格好になりました。まあ、似合っているのでよしとしておこう。


「さて、俺は帰るとするか」

「ん?」

「また来るよ。それまでこれでも読んでな」

「ん!」


 前来た時よりは聞き分けがよいシィはまた来るということがわかったのか悠理が渡した本(適当なファンタジー)を素直に受け取った。

 これで大丈夫だろうと悠理は部屋を出る。見慣れてきた豪華な廊下に出た悠理は古いタイプのエレベーターに乗り下へと降りた。体感的に三日ぶりロビーはやはりどこも変わっていない。


「さてと、サロンとかガイドは言ってたけど、俺には関係ないから良いか。とりあえずは日本に戻って図書館だな」


 両サイドの扉からはサロンやカジノなどホテル【ホライゾン】の各種施設に行けるのだが、悠理はあまりそういうのに興味がないらしくスルーする。

 今大事なのは図書館で調べものをすることらしい。実は施設を使えば色々と出来るのだが、悠理は知らないというかガイドが説明していない。説明していれば日本に戻るなどと言わなかっただろう。

 だが、ガイドが言わなかったので階段を下りた悠理はまっすぐにフロントへ向かう。

 フロントにはメアリと呼ばれる受付嬢がいた。ここに来た時と同じく変わらぬ姿、変わらぬ姿勢でそこにいた。相変わらず目に感情がない作り物であるので、与える印象は怖いの一択のみである。そんなメアリに悠理は話しかけた。


「鍵を預かってもらいたいんだけど」

「鍵を……」

「ああ」


 酷く機械的で平坦で抑揚のない声でメアリが言う。それに従って悠理は鍵を取り出して渡す。少しの間、メアリは奥に引っ込み鍵を仕舞って出てきた。


「他に何か御用はございませんか?」

「いや、特にはない」

「では、お帰りですね」

「ああ」


 悠理は特に何もなかったので、さっさとフロントに背を向け、出口に向かって歩き出した。


「またのお越しをお待ちしております」


 淡々とした事務的で感情の一切ない機械的な棒読み声を背中で聞きながら悠理はホテル【ホライゾン】を出て自分の世界へと戻ったのであった。


読んでいただきありがとうございます。

よろしければポイントや感想をお願いいたします。ポイントと感想は作者のやる気が上がります。


あとこんなキャラ出してという案があれば申して下さい。出すかもしれません。男、女問いません。何でもござれ。

あ、男キャラなら言われたらいずれ絶対出します。


あと、作者は豆腐メンタルなので批評はソフトにお願いします。すみません。


では、また次回も会えることを祈ってます。



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