0-0 ~始まりへ至る終わりの夢幻~
注意
これは完璧に自己満足からなる小説です。よくある異世界トリップ小説です。
設定の無駄遣い、ご都合主義、超展開、作者の都合、主人公成長チート(?)、無駄、よくある展開、低クオリティー、低文章力などが多分に含まれます。
それでも良いという心広い方のみ、お読み下さい。
また、作者は豆腐メンタルなので批評はソフトなものでお願いします。
では、どうぞ
それは、遥か昔の事。
記憶すら霞み、夢幻の彼方でのみ、その残滓を見る程度に掠れた過去。
雄大で、堅牢で、荘厳な城の空中庭園で、弾む玉を黒髪の小さな子供が追いかけている。
青々とした芝が敷き詰められ、四季折々の花々が咲く美しき空中庭園を駆け回るその黒髪の子は、とても楽しそうで幸せそうであった。
それを見つめるのは、二つの影。機能性を追求した動きやすい服に豪奢なマントを羽織った、子供と同じ光を吸い込む黒髪の男と、余り装飾のないドレス法衣を纏った、光を放ち輝くような金髪の女。父と母。両親であった。
二人は、穏やかな表情で我が子を見つめていた。
「あ、お母さまー、お父さまー」
それに気が付いた黒髪の子が二人に手を振る。父親は盛大に振り返し、母親は女性らしく控えめに振り返した。
穏やかな日々であった。世界の終末を決死の思いで阻止したのだ。平和でなければ、穏やかでなければ嘘であった。
「おーう、平和だなチクショー」
そこに時空を歪ませ一人の青年が現れる。動きやすい旅人の服を着て、腰に剣を差した青年はどかりと座り込む。
そんな青年を見下ろしながら父親が言った。
「まーた、クビになったのか?」
そう言う父親の顔はニヤニヤと笑っていた。
「うっせー。一国の王様になって、しかも美人の嫁さんまで貰ったリア充が!」
「フッ、モテない男の僻みだな」
「コノヤロウ」
「あらあら」
そんな風にじゃれあう二人を母親は、面白そうに見ていた。
「しかし、何でお前、普通に仕事探してんだよ。一生遊んで暮らせるだけの金は貰ったんだろ」
「ま、そうだな。だけどさ。そんなのは性に合わん。暴れたい。まあ、平和な時代に勇者なんて必要ないんだがなあ」
「履歴書の職業欄に勇者じゃ恥ずかしいもんな」
「テメェ!」
良い話が台無しだよ! と父親に掴みかかろうとする青年。それを父親は笑ってかわして庭園を逃げる。
とても楽しそうなそれを母親とやってきた黒髪の子が一緒に見ていた。
そこに更に一人、空間を歪ませて現れる。黒マントに黒のロープ、黒の帽子という魔女コスの女だ。
どこか沈んだ様子であった。
「あら、どうしました?」
「また、逃げられた」
彼氏に。と、どよーんと答える。
「このままじゃいき遅れるー」
だはーと、落ち込む女。ふとそこで珍しいそうに女を見つめる黒髪の子が目に入った、
「…………」
「駄目です」
いきなり母親が女に言って黒髪の子を背後に隠す。
女は、
「まだ、何も言ってない!」
「獲物を見つけた獣みたいな眼をしてよく言いますね」
「うぐっ! で、でも、ほら、私ショタもいけるし」
「駄目なものは駄目です。と言うよりそんなこと関係ありません。結婚したいなら勇者にでも行けばよろしいのでは? 旅の時は仲がよろしかったではありませんか」
「…………」
その手があったか、という表情をする女。母親はやれやれといった様子だ。
有言実行と女は青年に突っ込んで言った。黒髪の子はその様子を見て笑っている。とても平和であった。
その光景が霞み歪み消え失せる。フィルムが切り替わるかのように切り替わる。
「ヤッ!」
「ホレホレ、もっと腰使え、腰」
小さな少年と男が剣を交えていた。成長しているが、あの黒髪の子と父親であった。
そんな、がむしゃらに剣を振るう子供とあしらう父親を呆れたような視線で、日傘の下で見つめる黄金と真紅の少女。
「んお、姫さんじゃねえか。そんな遠くじゃなくてこっち来いよ。うちの子紹介してやらんぞ」
「別に構いはしないわ。どうせ、矮小なものは矮小なものに変わりないのだから。こんな刹那しか生きれない人の子と関わる意義なんてないわ」
「おいおい、連れないな。よし、おい、あのお姉さんに挨拶して来い」
「はい!」
「何を……」
「はじめまして、僕は××××」
「え、えっと、私は…………」
ノイズが走る。場面が途切れ、また新たな場面へと切り替わる。
黄金と真紅の少女が黒髪の子が一緒にいた。場所は、空中庭園ではなく、どこか別の、古城と言うべき古くもどこか気品の感じられる城だ。
「すごいなあー」
目をキラキラと輝かせる黒髪の子供。黄金と真紅の少女は、
「あまりはしゃぎすぎて転ばないようにね」
と、呆れ顔だ。しかし、その顔にはどこか寂しさがあった。
子供というのは、総じて敏感である。特に感情の変化など、他者の気持ちの変化を感じやすい。
黒髪の子供も例に漏れず、聡かった。
「何で、そんなにさびしそうなの?」
子供らしい無邪気さで黒髪の子は少女に聞いた。
「寂しそう? この私が? あり得ないわ」
「でも、すっごくさびしそうだったよ」
「関係ないわ。矮小な人間にはね。だって、すぐにあなたは私の前から消え失せてしまうのだから。有限の生命に対して、何らかの感情を私が感じるはずがないもの」
「消えないよ! 僕はずっといっしょにいるよ!」
黒髪の子には理解出来なかった。目の前の少女が何でそんな悲しいことを言うのかを。
「無理よ」
「むりじゃない! やくそくする、僕はどんなことがあっても君といつまでも一緒にいるよ。そうしたらさびしくないでしょ」
黒髪の子は、そう言った。できるはずがないのに、黒髪の子は、出来ると信じているようである。
少女にはそれを不可能と切って捨てることが出来る。
しかし、少女は、それをしなかった。黒髪の子の言葉が、心に心地良く響いたからだ。
だから、こう言葉を紡いだ。
「わかったわ。約束ね」
「うん、やくそく!」
二人は小指を絡め、小さな小さな約束を紡いだ。
そこで色が消え失せて、燃え散るように光景は消えて新たな光景が始まる。
「魔女?」
「うん、本物の時空の魔女見習い」
ストロベリーブロンドの少女が黒髪の子と幻想的な森の中で話をしていた。辺りには妖精の光が舞っている。
時が止まる。
加速する。
変わる。
目の前の景色が変わる。
淡い空色の黒髪と瞳の、ドレス姿の少女が獣と共に寝ている。黒髪の子もまた獣に背を預けて、眠りについていた。
暗転。
映像の奔流が流れ去っていく。平和な日々が紡がれ過ぎ去って行った。何時までも続く悠久の平和だと、誰もが信じてやまない日々が過ぎていった。
しかし、何時までも続くと思われていた、そんな日々は、唐突に終わりを告げる。
空を闇が覆い尽くす。そして、全ては漆黒に染まった。
だが、希望はあった。
「やれやれ、終わったんじゃないのかよ」
「そういうなや。お互い、背負ってるもんがあんだからよ」
「違いない」
父親と勇者の青年が漆黒の闇に眼を向ける。
「さて、行くか」
光に遮られて暗転。
痛み、憎しみ、力、力、力。
嫌なものが、聖なるものが、流れ込む。
一つは二つになり。
境界線の重なり合う混沌が胎動する。
神は、ヒトに自身を殺しうる力を与える。
王は、千の時を数え。
姫君は、鎖に縛られ千の呪縛を受ける。
魔女は、汚染され、まどろみを打ち壊そうとする。
子は、何処へと消え去り、そして、物語は、その始まりへと歩みを進める。