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懐かしい声
車をマンションのパーキングに停めて、後部座席に置いてある買い物した袋を手に取りエレベーターホールに向かった。
週に二回ほど、私は郊外の大型スーパーへ買い物に出かける。食料品の買出しが目的だ。買出しといっても、私一人が食べるだけなのでたいした量ではない。
出掛けるのが面倒なときは、出前を取ったり近くのコンビニのお弁当で済ませたりもする。
夫は一月ほど前から海外への長期出張で不在なのだ。
夫の勤める自動車メーカーが、タイへ新工場を建設する。夫はそのプロジェクトのリーダーに抜擢されている。もともと多忙な夫だったが、今回のプロジェクトでさらに忙しくなってしまった。
ほとんど家には寝に帰るだけだったのに、とうとう単身赴任で家に帰る事すらままならなくなった。
私は、家を留守にしがちな夫に不平不満を言った事はない。男の人が仕事で忙しいのは当然だと思っているし、そのおかげで私はパートに出る必要もなく、専業主婦をさせてもらっている。
毎日の食事に困ることもなく、平穏無事な生活が保障されているのだ。
愚痴など言ったら罰が当たる。私は心の底からそう思っている。