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懐かしい声
信号待ちをしている車の運転席から、私はぼんやりと外の景色を眺めていた。見慣れたいつもの風景。三月も終わりに近いのに、まだ寒い日が続いている。コートを羽織っていないと、とてもじゃないが表なんて歩けない。車のヒーターのスイッチをひとつ強くして、私はひとつくしゃみをした。
停車している位置から見える市営公園で、幼い子供を連れた母親たちが立ち話をしている。近所に住む主婦達なのだろうか?皆、幸せに満ち足りた顔をしている。慈愛に満ちたマリア様のようだ。
不意にギュッと胸を捉まれた様な感覚に囚われ、私は信号が青になるのを確認してからアクセルを踏み込み、その場を逃げるように立ち去った。