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白黒冒険譚  作者: 夕日影
3/13

Black1.現実から非現実へ

 目を開ける。

 目の前にはいつも見慣れている真っ白な天井。

 起き上がり辺りを見回すと、そこは私の部屋。

 そして、ゆっくりと私の横に顔を向ける。


 そこには白い髪をした、一人の少年が眠っていた。

 私は、そんないつも通りの光景に小さな幸せを感じながら、傍らで眠る弟に手を伸ばす。


「ほら、白斗はくと。朝だよ、起きなさい」


 少々強く、身体を揺らす。

 すると、白斗はゆっくりと目を開いて私の姿を捉える。


「ん……おはよう、黒乃くろの

「はい、おはよう」


 そう答えると、白斗はゆっくりと笑い、私も微笑みを返す。


 これが私達、双子のいつもの朝だ。


***

「それじゃ、行ってきます」

「……行ってきます」


 そう両親に声をかけ、玄関を出る。

 外は清天、太陽がまぶしい。


「……いい天気」

 白斗がそう言って、私は「そうだね」と返す。

 ああ、これもまたいつもの朝の風景。


「おーい! 黒乃ー、白斗ー!」

 と、向こうから友人達が駆けてくるのも、いつもの――……


「白斗ー! マイスウィートラブハニ……ごべばぁっ!?」

 私は、白斗に抱きつこうとした不届き者を蹴り飛ばした。


「おはよう。毎朝懲りないね、銀次ぎんじ

 私は地面にへばりついている不届き者――朝井あさい 銀次の姿を見下ろし、睨みつける。

「黒乃……何故それほどまでに俺を……っは、やきもちか!? お前、白斗にやきもちをやいたんだな! そうだよなお前ツンデレだもんな! だが安心しろ、俺はお前も愛して――ぶぼっ!」

 気味の悪い言葉が聞こえる前に頭を踏み潰す。めりっ……うん、いい音がした。


「……灰澤はいざわ

「なぁに、野渡のと君? 邪魔するなら君も道連れにするけど?」

「……すまない、なんでもない」

「なんだ、また負けたんだ。ほんと無様だねー」


 メガネの奥の瞳が怯えているぞ、野渡 いたる君。

 そして、そんな野渡君の背後からひょこりと顔を出し、銀次を見下ろしている我が親友、阿久津あくつ 衣音いおんよ。そこまで言うことないんじゃないかい? 彼だって最下層なりに頑張っている。


「って俺、最下層なの!?」

「人のナレーションにツッコまないでよ」

 地面から顔を上げた銀次の顔にカバンを叩き込む。ばきっ……うん、かなりのいい音がした。


「……仲良しだね」

 白斗がぼそりと呟いた言葉を、私は聞き逃さない。――誰と、誰が仲良しだって?

「心外だよ白斗。私とコレ、どこをどう見たら仲が良いように見えるの?」

「なんだ、白斗にはそう見えるんだな。俺達、意外とお似合いカップルなんじゃね? この勢いで付き合おうぜ黒乃!」

「死ね下等生物」

 そう言い捨てて銀次のアホ面に右ストレートを叩き込む。ごきゃっ……うん、シャレにならないくらいのいい音がした。


「さて、おふざけも程々にして急ごうか」

「おふざけにしては力いっぱい……いや、なんでもない」


 こうして、いつも通りのバカ騒ぎの後に学校へ向かう。

 ちなみに、気絶中の銀次は衣音がずるずると引っ張ってくれる……うん、我が親友ながらいい性格してるよ、衣音。


「ねーねー、今日の放課後何する?」

「朝から放課後の話? 衣音、君は気が早すぎるよ」

「あっ、俺カラオケ行きたい!」

「……そしてお前は復活が早すぎる」

「銀次、大丈夫?」

「俺は大丈夫だぜハニ……っぶぼばぁっ!」

「……また気絶した……」


 いつも通りの朝。いつも通りの毎日。

 しかし、そんないつも通りの中で――ひとつだけ『いつも通りじゃない』ことが起こった。


「――ねぇ、今なんか揺れなかった?」


 一瞬だけ、地面が揺れている感覚がしたのだ。

 そして次の瞬間、


「……っ!?」


 大きな揺れが、私達を襲った。


「何、これ……地震っ!?」


 揺れはそのまま収まることはなく、だんだんと大きくなっていく。

 そのせいで私に辺りを見回す余裕などない。だから、気付かなかった。


 私達の足元に、大きな黒い穴が開いたことなんて。


「……っ!?」


 次の瞬間、私の身体は抵抗することなく黒い穴の奥へと落ちていった。

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