図書室と黒猫(先輩と後輩※600字の短文)
学校の図書室には、猫のような美少年がいる。
真っ黒な髪の毛と、猫のように釣りあがった瞳。
黒猫を連想させる外見に、中身も猫のように気まぐれで気高い性格をしている。
「先輩」
文庫本越しに彼を観察する私に、彼は眉根を寄せて不快感を表す。
非難の視線と不機嫌な声に、しかし動じることなく観察を続けると今度はチッと舌打ちが聞こえた。
おお、ガラの悪い猫だこと。
「先輩、不快です」
「おお、スマンネ」
感情のこもらない謝罪に、彼はまたチッと舌打ちをする。
そしてついには席を立って図書室を出て行ってしまった。
「……先輩」
翌日、昨日はあまりにもわざとらしすぎたかなと反省し、今度は本棚越しに彼を見つめていたら、やはり見つかってしまって睨まれた。
ちぇ、本棚越しに見るくらい許してくれたっていいのに。
「先輩、ストーカーとして訴えますよ」
それは困る。
すぐに視線を逸らすが、数分後、私の視線は再び彼を捉えていた。
「先輩、うざいです」
「うん、私もそう思う」
だけどどうしても私の瞳は君に吸い寄せられてしまうのだ。
「……はあ」
美少年は深い溜息を一つ吐いて、座っていた席を立った。
また出て行ってしまうのかな?
残念に思いながらも、引き止めることなく見守っていると、予想に反し彼は私の方へと歩いてきた。
そして、私の足元へと腰を下ろす。
「……えーと」
どうしたのかしらん。
戸惑う私に美少年は本を開きながらポツリ。
「もう好きなだけ見ればいいですよ」
「いいの?」
「諦めました」
投げやりに言う彼に、私は近所の野良猫を連想した。
警戒心の高い猫が懐いた瞬間ってこんな感じかしら。