結菜と怜02(お嬢様×下僕(?)*超短め*R15)
短いです!1200字。そしてR15(温め)。苦手な人はご注意下さい。
腕の中に飛び込んできた、柔らかい身体。
「怜」
自分を呼ぶ、甘い声。首筋に顔を埋められ、舌を這わせられる。赤く熱い、舌。細い、力を入れればすぐに折れてしまいそうな手が縦横無尽に身体を撫で。
「怜」
「……はい」
そらしていた視線を彼女に戻せば、嬉しそうに笑んで口の端にキスを落とされた。
「服脱がしていい?」
頷く事も拒むことも出来ず、怜はただされるがままにそれを受け入れた。
叶うことなら抱きしめて、押し倒し、自分のことしか考えられないよう、犯してしまいたい。いつも口の端ギリギリにしか降ってこないその唇を、奪って、全部、全部、自分のものに。
「うあ……」
ズボンの上から膨らみを撫でられ、たまらずに呻くと、結菜は美しい笑みを浮かべた。
怜から手を出すことは許されない。してはいけない。
柔らかい黒髪を撫でることもできずに、怜はそっとまた目を逸らした。
結菜に出会ったのはお互いがまだ六歳のときだった。
父に連れられて行った、父の上司の家で、桃色のワンピースに身を包んだ結菜と会った。真っ黒な髪を二つ縛りにして、母親の影からじっと怜を見る。
「結菜、怜君よ」
「れい?」
母親に背を押されるようにして前に出た結菜は、緊張しつつも、興味深げに怜を見つめた。怜は他の子供に比べて色素が薄く、茶色い髪と薄茶の瞳をしていた。それが珍しかったのだろう。いつもからかわれるそれに、ちょっと後ずさったとき。
「きれいね、れい」
笑った顔はとても可愛くて、怜の警戒心は一瞬の内に消え去った。
「いっしょに、あそんでくれる?」
返事を待たずして取られた手を握り返し、怜も微笑む。
「よろしくね、ゆなさん」
父が呼ぶのを真似して名前にさん付けで結菜を呼んだ。
その呼び方は十年たった今でも変わらずに、怜と結菜、二人の関係だけがおかしく、歪なものに変わっていった。
「今日は、司さん、に、会いに行ったんじゃなかったんですか?」
途切れる声で紡ぐと、結菜はちょっと顔を上げて
「会ったわ」
あっさり肯定する。
「でも、仕事が入ったとかで、すぐに帰っちゃったの」
「そう、ですか」
だから、自分がこうして代わりをさせられているのか。
心の内にどす黒い感情が湧くのを感じ、怜はそれを振り払うようにして首を振った。
大企業の社長令嬢である結菜には、四つ上の、大学生の許婚がいる。大学に通う傍ら、親の仕事も手伝うというその人は、とても優秀な青年で、容姿も、家柄も、頭脳も、何一つ欠けることのない、結菜にぴったりな人物だ。
所詮、怜は結菜の玩具でしかない。手に入れたくても、怜からは絶対に手に入れることのできぬ、高嶺の花。ただ、好きなように扱われて、用が済んだら捨てられる。結菜にとって自分は、それだけの存在だ。
「怜」
伸ばされた手が、怜の手を掴む。
いつか来るその日に怯えながらも、それでも怜は結菜のことを拒みきれない。
己の手を握る彼女のそれを握り返しながら、
「結菜さん」
目の前の愛しい人のことを、ただ思った。