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【一話完結】婚約破棄された地味令嬢、実は国王の第一王女でした ~偽聖女と公爵令息をまとめて断罪します~

卒業パーティーで婚約破棄された地味な令嬢エリス。

しかし彼女の正体は、暗殺を避けるため男爵家に身を隠していた国王の第一王女だった。

直後、王都を襲った魔獣を圧倒的な力で討ち倒したエリスは、婚約破棄を宣言した公爵令息と偽聖女に冷たい断罪を下す。

「エリス、貴様との婚約を破棄する。この方こそ真の聖女、マリアだ」


 王立学院の卒業パーティーの最中、大広間にバロア公爵の嫡男レオンの声が響いた。貴族たちがひそひそと囁く。


「やっぱりな。あの地味な男爵家の養女じゃ、公爵家とは釣り合わない」


「マリア様は光魔法の使い手だというのに、エリス様ときたら」


 エリスは俯いたまま何も言わなかった。灰色の髪に黒縁眼鏡、体に合わない古着のドレス。誰の目にも、哀れな令嬢としか映らなかった。


「声も出ないか。今すぐこの場を去れ」


 レオンの隣で、マリアが勝ち誇った笑みを浮かべる。


「ごめんなさいね、エリス様。でも、レオン様を守れるのは私だけなの」


 そのとき、緊急の報せが鳴り響いた。


「魔王城より放たれた魔獣が王都上空に侵入した模様」


 天井が爆音とともに吹き飛び、黒い竜のような魔獣が姿を現した。


「魔獣だ!」


「聖女様、お救いください!」


 悲鳴が上がる中、レオンが叫ぶ。


「マリア、結界を張れ!」


「え、あの、私……」


 マリアの放った光は線香花火のように弾けて消え、魔獣の黒炎が一瞬で結界を破った。


「熱い! 無理です、レオン様!」


「なんだと、この役立たずが!」


 魔獣の爪が二人に振り下ろされようとした、そのとき。


 静かな靴音とともに、エリスが歩み出た。黒縁眼鏡を外し、髪を留めていたピンを抜く。現れたのは純金色の髪と、王家だけが持つ黄金の瞳だった。


「な……なんだその姿は」


 エリスは羊皮紙を取り出した。


「男爵家の養女としての役目は、本日をもって終わりです。レオン様、先ほどの婚約破棄、喜んでお受けします。私は男爵家の娘ではなく、暗殺の危険から匿われていた現国王の長女、第一王女エリス・ド・ロザリアです」


「王女……!?」


 エリスは魔導書を開き、指先を掲げた。


「出でよ、極光の剣」


 太陽のような光が大広間を満たし、魔獣が震え上がる。


「絶ちなさい」


 光の刃が魔獣を切り裂き、跡形もなく消し去った。


 歓声が湧く中、レオンが卑しい笑みで駆け寄る。


「エリス殿下! やはり私の目に狂いはなかった。共にこの国を――」


「お手を触れないでください」


 エリスの声は冷たかった。


「婚約はすでに破棄しました。バロア公爵家には国家反逆未遂と王族不敬罪の疑いで、すぐに調査が入ります」


「マリア様も同罪です。聖女を騙った罪は重い」


「そんな、レオン様が『聖女ということにすれば都合がいい』って言ったのに」


「余計なことを言うな!」


 近衛兵たちがなだれ込む。


「バロア公爵令息レオン、およびマリア。連行せよ」


「エリス、助けてくれ! 俺が悪かった!」


 引きずられていく二人を、エリスは振り返らなかった。ドレスの裾をつまみ、貴族たちに微笑む。


「騒がしい夜になりましたが――これより、本当のパーティを始めましょう」

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