"保健室"
一日に一度、僕は保健室に行く習慣が有る
『習慣』と云うよりは、必要が有っての事だ
幼い頃から僕は重度の造血病に罹って居る
一日一回
血液を躰外に排出しないと心臓が損傷し、最悪の場合は生命を喪う
中学生までの間は、どうにか一回だけしか排出を欠かす事無く、生きてくる事が出来た
高校になった今は、欠かす心配は無いと思って居る
何故なら
僕は保健室登校で通学だし、先生から血を抜かれるのが癖になってしまったからだ
「先生!」
僕の声が背中に聞こえると、必ず先生は保健室のカーテンを閉じる
場合によっては僕の声色から判断し、保健室を施錠する場合もある
今日はそのパターンだった
「もう溜まってしまって」
言いながら唇の端が上がっていくのを、自分でも抑える事が出来ない
「早いな」
デスクの椅子に掛けると、先生が僕を視る
「昨日の夕、あんなに抜いたのにか?」
それだけで躰が熱かった
「悪い子だね」
そう言う頃には、先生はもう僕の腕に注射器を刺して居る
軽く刺す、痛み
虚脱感
注射器は常人の血を吸う事を基準に作られて居る為、入り切らずに溢れた血が、先生の膝を覆う白衣に、ひたひたと染み渡っていく
いつも先生はそれを指で掬って一嘗めし、嘲るような上眼遣いに僕の眼を視る
僕は知って居る
こうして抜き取られた血液も、実際には廃棄されて居ない
全部、先生が飲んで居るのだ
近頃は、先生も僕に視せ付けながら飲むようになった
好ましく思って居る相手に自分の躰液が飲まれる事に、僕は喜びを感じても居る
「先生」
我慢出来ず、僕は提案する
「今度、何処かの浴室かなにか───」
「血を沢山出しても差し支えの無い場所で」
「先生に、まだ視せた事の無いくらいの血を視せたいです」
話して居る内に、興奮が高まり過ぎた様だ
躰の中で液躰音と共に、血が過剰生成される音がする
僕は我慢ならず、ポケットに入れて居た安全ピンを抜くと、腕に浅く刺した
鮮血が散らばり、先生の頬に掛かる
先生がそれを舌で嘗め取るのを視て、血が更に作られ始める
声にならない声を出しながら、僕は自分のあちこちを突き刺して、少しでも欲望を吐き出し尽くそうとした
実際には、出せば出す程に欲望は増え続け、血も乾くと云う事を覚えてくれ無かった
不意に保健室の戸を叩く音がして、僕たちは、はっとした
「先生!大丈夫ですか?」
「何か声がしたようですが!」
廊下を歩いて居た学生が、僕の声を聞き付けてしまったらしかった
「気にする事は無いよ」
「ただ、吐いてしまった人が居てね」
「片付けて居たのさ」
先生がそう答えると、彼は手伝うような事を申し出て居たが、衛生等の理由から先生はそれを断った
平静そのものと云った声だったが、話しながら先生は僕の口を片手で塞ぐと、安全ピンを乱暴に奪い取って、僕の腿に執拗に突き刺してきた
声を出す事はおろか、呼吸もままならない
廊下の彼が立ち去ると
先生は口を塞ぐ代わりに、僕の舌を指で掴んだ




