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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第1章:無能と呼ばれた少年、学園で“隠しても隠しきれない力”を見せてしまう

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第7話:影から見つめる視線。リオの異質さに気づく者たち

 基礎科の実技授業で“上級魔法を再現してしまった”翌日、僕はできる限り目立たないように、息を潜めるようにして学園へ向かった。


 いつもなら清々しい朝の空気が気持ちよく感じられたのに、今日は妙に重たく感じる。空の色も澄んでいて、校庭を渡る風も心地よいはずなのに、胸の奥だけが落ち着かない。


(……お願いだから、昨日の噂が消えていますように)


 そんな願いを込めて教室へ入ったのだが——


 その瞬間、全員の視線が突き刺さった。


「……来た」「あれが昨日の……」「上級魔法を一発で再現したって本当?」


「基礎科の、しかも無能って言われてたやつが……?」「いや、もう無能じゃねぇだろ……」


 どこを見ても僕の視線を避けてくれない。

 むしろ興味と警戒の入り混じった目ばかりだった。


(……やっぱり……広がってるよね……)


 昨日の実技授業で魔導石を一刀両断した光魔法の“余波”は、すでに学園の隅々まで届いているらしい。噂の速度は魔力通信に負けないくらい速い。


 静かに席へ座ろうとすると、すぐ近くにいた男子がひそひそ声で囁いた。


「お、おい……天城ってさ、本当に魔力ゼロなのかな……?」


「ゼロのわけないでしょ。だって上級魔法だよ? あれ、光属性の才能がないと無理だって……」


「実戦科どころか、特別科でも難しいって噂なのに……」


 僕は椅子の上で体を小さくした。

 隠したい。

 とにかく目立ちたくない。

 だけど、すでに噂は学園中を巡ってしまっている。


(……どうにか普通に過ごせないかな……)


 そう思って俯いていると、教壇からクロード教官の視線がそっとこちらへ向けられていることに気づいた。


 あの目は、ただの教師のものじゃない。

 僕を“注意深く観察している者”の目だった。


(……クロード教官……完全に気づいてる……よね)


 彼は何も言わない。

 けれど、放たれる気配には確かに“見極めようとする”意志があった。


 授業が始まっても落ち着く暇はなかった。

 昼休みになれば、どこからともなく声が聞こえてくる。


「昨日の魔法、見た?」「いや、見てないけど噂だけで十分すごそう」

「影の守護者って呼ばれてるらしいよ?」「いや……それは流石に……」


 影の守護者?

 また知らない名前がついている。


(僕がそんな呼び方されるほど何かしたっけ……? いやしたけど……したくてやったわけじゃ……)


 胸の中で混乱が渦巻く。


 フィアも、セレナも、エリスも、ミュリスも……昨日の件以来、僕を注意深く観察するようになっている。

 何かを問い詰めたいのに、問い詰めきれない距離感が続き、僕はただ逃げ腰になっていた。


(……本当に、隠しきれなくなる……?)


 そんな不安が胸を締めつけていく。


 だが——その頃。


 僕が知らない場所で、まったく別の視線が僕をずっと監視していた。


 学園都市アルケディアを取り囲む外壁。その上には、精霊結界と魔力探知網が張られ、街中に不審者が侵入できないようになっている。

 その防衛網の境界線。その外側の森の影に、ひっそりと立つ黒い影があった。


 黒いローブ。

 光を吸い込むような布。

 風が吹いても揺れないほど、静止した気配。


 男は、遠くの学園を見据えていた。


「……完全適応の気配。間違いない」


 かすかな声が、影に吸い込まれて消える。


「学園に潜む“異質”。

 姿を隠していたようだが……あれほどの魔力操作をみせれば、隠しおおせるものではないな」


 男の目は細く、獣のように鋭い光を帯びていた。

 その瞳は、獲物を追い詰めた猛禽の眼差し。


 風が吹き、外套の裾がひらりと揺れた。


「……古代封印に反応しているのだろう。

 ならば——放置はできん」


 彼は冷徹に、淡々と告げる。


「完全適応は世界の均衡を壊す。

 ゆえに、抹消する。」


 その響きは、まるで裁定の宣告。


 そう言いながら、男は森の闇に溶けるように姿を消した。


 教国の執行者——ノア・アルベント。


 世界各国が恐れる“闇の執行者”が、ついに動き始めた。


 一方その頃、学園の昼下がりを歩く僕は、まだノアの存在を知らなかった。


 校内の廊下を歩くたびに、誰かの視線が僕に向けられている。

 半信半疑の好奇、警戒、興味、噂。

 それらがまるで渦のように僕を包み込んでいた。


(……普通にしたいだけなのに)


 本当にそれだけだった。

 勉強して、授業を受けて、みんなと同じように生活したかっただけ。


 だけど——


「リオくん、今日の午後……ちょっと時間ある?」


 フィアが声をかけてくる。


「昨日の戦い、ちゃんと説明してもらうわよ」


 セレナも後ろにいる。


「リオ、本当に怪我してない? 怖かったでしょう……?」


 エリスの心配そうな声。


「ねぇねぇ、今日も面白そうな気配してるよ?」


 ミュリスの無邪気な笑み。


 囲まれた瞬間、逃げ場が消えた気がした。


(……うわぁ……)


 どう言い繕っても説明にならない。

 どう逃げても追いかけられる。

 そんな状況が続く中——


 遠くの外壁の向こうで、ひとつの影が学園へ向けて歩み始めていたことを、僕はまだ知らない。


 影は静かに、しかし確実に近づいていく。


 やがてその影は、学園の運命を大きく揺るがす存在へと変わるだろう。


 そして僕自身もまた、普通ではいられなくなる未来が待っている。


(……何かが、動き始めてる……)


 胸の奥でそんな予感がかすかに響いた。

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