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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第1章:無能と呼ばれた少年、学園で“隠しても隠しきれない力”を見せてしまう

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第5話:勝利の余波でヒロイン集結。「あなた…何者なの?」

 レオンとの模擬戦が終わったあと、演習場の空気はしばらくざわつき続けていた。

 歓声でも、称賛でもない。

 驚愕と困惑が混ざり合った、得体の知れないざわめき。


 中心に立たされてしまった僕は、どう距離を取ればいいのか分からず、半ば逃げるように演習場の端へ歩き出した。

 熱風が残した焦げた匂いがまだ漂っていて、地面にはレオンの炎斬撃の跡が生々しく刻まれていた。


(……どうしよう。本当に、やりすぎた……)


 避けるだけのつもりだった。

 戦う気なんてなかった。

 それなのに、《完全適応》は勝手に最適解を選び、レオンを“瞬殺”してしまった。


 観客の視線が刺さるように痛い。


「……あの速さ……」「基礎科じゃないだろ」「魔力ゼロって嘘じゃね?」


 耳に入ってくる言葉に、胸がざわつく。

 嫌な汗が背中を伝い、息が落ち着かない。


 そんな僕の前に、影も差さなかったのに気配が降ってきた。


「リオ」


 名前を呼ばれ、顔を上げる。


 光を帯びた金色の瞳。

 フィア・ルミナリエ。


 彼女は真っ直ぐこちらへ歩いてきて、そのまま距離を詰め、僕の目の前で足を止めた。


「さっきの戦い……説明してくれる?」


「……あ、あれは……その……」


「見た魔法を理解できるのも、剣を見ただけで最適解を選ぶのも——普通じゃないわよ」


 いつもの柔らかさがない。

 真剣な瞳が、僕の奥にあるものを覗き込むようだった。


「ただの偶然で、実戦科トップを“避けて”“倒せる”なんてありえない。

 ……あなた、本当に“魔力ゼロ”なの?」


「ち、違うんだ……! 本当に違くて……!」


「その慌てた否定が、一番信用できないのよね」


 ぐ……また論破されている。

 フィアは容赦がない。天才の洞察は鋭すぎる。


 そこへ、影のように音もなく別の気配が割り込んできた。


「リオ、すごかったぞ」


 風を背に纏ったような佇まい。

 銀髪が揺れ、冷静な鋭さを感じさせる少女——セレナが立っていた。


 彼女は戦場のような視線で僕を見つめ、短く告げる。


「次は本気で勝負したい。……あれが君の力の一端なら、私はもっと強くなれる」


「ま、待って……! 僕は別に強くなんか——」


「強い。認めろ。あれを“弱い”とは言わない」


「…………」


 反論が、出てこない。


 セレナは続ける。


「無能だの劣等生だの、全部ただの噂だったんだな。

 私はそういうのに興味はない。見たものだけを信じる」


 真っ直ぐな言葉が、逆に刺さる。


 そこへ、走ってくる足音。

 白髪が風に揺れ、青い瞳を潤ませながら僕の名を呼ぶ声。


「リオ……本当に無事なの……!?」


 エリスが駆け寄ってきた。

 王族らしい気品をまとった少女が、この場ではただの幼なじみとして僕を案じてくれている。


「噂を聞いて……レオンと戦ったって……怪我してない?」


「あ、うん。大丈夫……本当に平気だから」


「よかった……本当に……」


 エリスは胸に手を当て、安堵の息を漏らす。

 その姿を見るだけで、胸が締め付けられそうになる。


 だが、次の瞬間。


「やっぱりねぇ。リオって、どう考えても“普通じゃない”よね」


 柔らかい声が背後から現れた。

 空気が揺れ、影が寄り添うように地面から浮かぶ。


 ミュリス。


 魔族の血を継ぐ少女は、薄く笑って僕の肩に顔を寄せる。


「だって、私……感じたもん。“同族の因子”ってやつ」


「ちょ、ちょっと待って! それを大声で言わないで!」


「言ってないよ? だってここ、みんな騒がしくて聞こえてないでしょ?」


 言いながら、紫の瞳が細められる。


「でも……あなたの力、もう隠せないよ?

 あんな動き、無能じゃできないでしょ?」


「ち、違うんだ……本当に……!

 僕はただ……普通に……っ」


「普通の人間なら、実戦科トップを一瞬で転ばせたりしない」


「そうそう」「確かに」「だよねぇ」


 四人が完璧に同時にうなずいた。


「いや、だから本当に違うんだってば……!」


 苦しすぎる言い訳。

 誰も信じてくれない。

 当たり前だ。僕自身、あの動きを“自覚”していないのだから。


 視線を外せば、周囲の生徒たちが騒ぎ始めている。


「黒髪の無能……強すぎじゃね?」

「いや無能じゃねぇだろ、どう見ても」

「実戦科より強いってマジ?」

「影の守護者とか呼ばれてるやつ、あいつなんじゃね?」


(……影の守護者? なんの話……)


 知らないうちに妙な噂まで生まれているらしい。

 学園中に広まりつつある“黒髪の無能が実は最強”という尾ひれが、いよいよ本格的に動き始めていた。


 僕は必死に息を整えながら、四人に向き直る。


「みんな……記憶違いじゃない? 僕は本当に無能で——」


「「「「それはない」」」」


 四人の声が、綺麗に重なった。


 完全に、論破されている。


 ああ……どうしてこうなったんだろう。

 今日の朝までは、誰にも気づかれずに静かに過ごすつもりだったのに。


 四人の視線が絡まり、逃げ道がない。

 観客の注目も熱を帯びている。


(……隠しきれない。どこかで線を引かないと……)


 そんな焦りが胸の奥で渦を巻いたその時、

 演習場の端で、クロード教官が静かにこちらを見ていた。


 温厚な顔つきの奥に、確かな観察の眼差し。

 彼だけが——僕の“異常性”を正確に理解したような目をしていた。


(……クロード教官……やっぱり気づいてる)


 四人の少女と、ざわめく群衆と、鋭い教官の視線。

 その全てが混ざり合って、僕の心はどこへ逃げればいいのか分からなくなる。


 こうして──

 “黒髪の無能”と呼ばれた少年は、一瞬の勝利をきっかけに、学園中の注目と疑惑の中心へと押し上げられてしまった。


 僕の意思とは、まったく関係のないところで。

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