第41話:ヒロインたちの決意――『リオは一人じゃない』
胸の奥の脈動はまだ止まらない。
自分が自分でなくなるような、嫌な感覚が身体の芯にこびりついていた。
(怖い……また、誰かを傷つける……)
その恐怖で足がすくみ、顔を上げることすらできなかった。
そんなとき――
背後から、光がゆっくりと近づいてきた。
「リオ……」
静かな声。
振り返ると、フィアがそこに立っていた。
柔らかい光が彼女の手のひらから溢れ、
僕を包み込むように漂ってくる。
「暴走しそうなら……私が止める。
絶対に、あなたを見失わせない」
光は暖かくて、涙が出そうだった。
怖かった心が少しだけほぐれていく。
(どうして……そんなふうに言えるんだよ)
胸の奥を押さえながら問いかけるような視線を向けると、
横から風が吹いた。
「……逃げても追いかけるからな」
セレナが真っ直ぐ僕の前に立った。
刀を握る手は震えていない。
ただ、僕を見つめる瞳だけが揺れていた。
「お前がどこへ行こうとしても、私は隣で戦う。
理由なんていらない。
……お前が怖がるなら、怖がらなくなるまで付き合う」
その言葉に、呼吸が乱れそうになる。
「セレナ……」
次に、白い影がそっと寄り添った。
「リオ……」
エリスだった。
彼女は僕の手を両方から包み込むように握りしめる。
「あなたがどんな存在でも……
世界がどう言おうと……
私は、あなたを大切な人だと思ってる。
それは変わらない」
涙をこぼしながら、それでも前を向いている。
その顔を見るだけで、胸の痛みが少し和らぐ。
そして、最後にミュリスが僕の背中へそっと抱きついた。
「リオはリオだよ。
王でも化け物でもない。
私にとっては、ただ……大好きなリオ」
その言葉は、魔族である彼女だからこそ届く深さを持っていた。
「あなたが怖いって思ってるなら……
その怖さごと、私たちで抱えていけばいいんだよ」
四人に囲まれている。
それだけで、足の震えが止まっていく。
(僕……こんなに守られてたのか……)
一人で苦しんでいたと思っていた。
誰にも迷惑をかけたくないと思っていた。
でも今は、違った。
光も、風も、結界も、闇も――
全部、僕のために動いてくれていた。
「みんな……僕……」
声が震え、胸の奥が熱くなって、
どうしても涙がこぼれそうになる。
「……ありがとう。
本当に……ありがとう……」
それしか言えなかった。
フィアが微笑み、光を強めた。
セレナは安堵したように肩を落とし、
エリスは僕の手をぎゅっと握り、
ミュリスは背中に頬を寄せる。
「リオは一人じゃないよ」
「どれだけ強くても関係ない」
「困ったら、頼っていいんだよ」
「一緒に戦おう、リオ」
その言葉たちが胸に響いた瞬間、
封印の脈動がゆっくりと静まり始めた。
(……僕は一人じゃない)
初めて心の底から、そう思えた。
この四人が隣にいるなら――
もう逃げるだけの自分じゃなくてもいい。
涙をこらえながら顔を上げたとき、
夜の闇が少しだけ明るく見えた。




