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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第6章:世界分岐の刻――揺らぐ均衡と支える四つの想い

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第40話:揺れる心――『力を抑えたい』『誰も傷つけたくない』リオの葛藤

 ミュリスと立ち止まった夜の裏道は、ひどく静かだった。

 風の音すら遠くに追いやられ、世界が僕たちを置いていったように感じられる。


 胸の奥で、封印の欠片が脈を打っていた。

 さっきからずっと、一定のリズムで、まるで“中から叩いている”みたいに。


 ドクン……

 ドクン……


(なんだよ……どうして、こんなに……)


 ミュリスの言葉が耳に残る。

 世界の理から外れた存在。

 精霊が排除しようとしている。

 魔族が迎えようとしている。


 それが意味するものを、頭では理解しているはずなのに――

 心だけはまったくついていけなかった。


(僕の力のせいで……世界が揺れてる……?)


 そんなはずないと否定したかった。

 でも胸の奥の脈動が、それを肯定してくる。


 ドクン……ッ


「っ……!」


 突然の痛みに、思わず壁へ手をついた。

 息が詰まる。

 自分の身体なのに、何が起きているのか分からない。


「リオ!? 大丈夫!?」


 ミュリスが心配そうに駆け寄る。

 けれど僕は、彼女の目をまともに見られなかった。


(……怖い)


 その言葉を、心の中で初めて認めてしまった。


(僕……自分が怖い)


 力が勝手に反応する。

 相手の技を模倣して上位互換を作る。

 魔法を見ただけで再構築する。

 巨獣を一撃で砕く。


 あの瞬間、僕は確かに誰かの命を救った。

 でも同時に――


(もし……あれが誰かに当たっていたら?

 もし……ミュリスに……フィアに……エリスに……セレナに……)


 想像するだけで、膝が崩れそうになった。


 完全適応は、僕の意思なんて聞いてくれない。

 勝手に進化し、勝手に最適を選び、勝手に動く。


(また誰かを傷つける……)


 怖くてたまらない。


 胸が焼け付くように熱いのに、

 手足は冷たい。


 抑えたい。

 この力を閉じ込めたい。

 消えてほしいとさえ思う。


 でも――


(抑えられない……)


 そんな残酷な現実が、胸の中心に居座っていた。


 ミュリスが僕の肩に触れる。


「リオ……震えてる。

 ねぇ、大丈夫だよ。

 私は……ここにいるよ」


 優しい声なのに、その温かさが胸を締め付けた。


「……僕……怖いんだ」


 ようやく声が出た。

 吐き出すように、喉の奥から絞り出すしかなかった。


「僕のせいで……誰かが傷つくかもしれない。

 僕が出歩くだけで、世界が揺れて……

 こんな……こんな力、いらないよ……!」


 言葉にした瞬間、涙がこぼれた。

 自分でも驚いた。

 泣くなんて思っていなかった。


 ミュリスがそっと抱きしめてくれる。


「リオは優しすぎるから……怖いって思えるんだよ。

 本当に壊すつもりの人は……そんなふうに悩まないよ」


「でも……」


「大丈夫。

 私が一緒にいる。

 あなたが間違わない限り……絶対に支える」


 優しい声。

 でも、心の奥の恐怖は簡単には消えなかった。


 完全適応の脈動は止まらない。

 僕の成長は止まらない。

 封印が揺れるたびに、力が勝手に“次の段階”へ進もうとしている。


(僕は……どこへ向かってるんだろう)


 その答えが見つからないまま、

 闇の中で僕はただ、自分の胸に手を当てていた。

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