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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第1章:無能と呼ばれた少年、学園で“隠しても隠しきれない力”を見せてしまう

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第4話:避けるつもりが“瞬殺”。無意識の《完全適応》がレオンを圧倒する

 演習場に響く歓声とざわめきが、僕の耳には遠い雑音にしか聞こえなかった。

 レオンとの模擬戦が始まってから、時間の感覚が曖昧になっている。

 避けるだけのつもりだった。戦う気なんて微塵もなかった。

 それなのに——身体が勝手に動き続けている。


 レオンの剣が炎を纏って閃いた瞬間、僕の視界が異様なほど鮮明になった。


(……来る。速度は……角度は……)


 脳内で無数の情報が高速で走る。

 炎の温度、軌道、風の流れ、レオンの踏み込みの癖、心拍——

 それらが勝手に組み合わされ、最適な回避パターンが浮かび上がってくる。


(やめろ……そんな分析、僕は求めてない……!)


 願いとは裏腹に、身体は迷いなく反応した。


 レオンの炎突撃が迫る。

 普通なら焼け焦げるはずの距離。

 しかし僕は、自然な呼吸のように、一歩横へ滑った。


 炎の軌跡を紙一重で見送る。

 熱風が頬を撫でるが恐怖はない。

 ただ、冷静すぎる思考だけが残っていた。


「……避けた……だと?」

「嘘でしょ……あれ、実戦科でも回避は難しいのに……」


 観客のざわめきが、遠くから聞こえてくるようにぼんやりしていた。


 レオンはすぐさま体勢を立て直し、次の突撃に移る。

 炎の魔力が一層強く燃え上がり、地面が鳴った。


「面白ぇ……なら、もっと速くしてやる!」


 足元の魔法陣が爆ぜ、爆風とともにレオンが射出される。

 風圧が砂を舞い上げ、視界を遮る。


 それでも——僕の目は彼を完全に捉えていた。


(速さ……さっきの二倍以上。軌道予測……回避ルート三つ……最適は——)


 身体が、また勝手に動き出す。

 砂煙を切り裂き、前へ出た。


「なッ——!?」


 レオンの驚愕が遅れて響く。

 僕は彼の懐に入り込み、衝撃を最小限にする角度で剣の柄に触れた。


 “はじく”のではなく、“死角へずらす”。

 それだけでレオンの体勢が崩れる。


 そして——気づけば、レオンの剣は宙を舞っていた。


 次の瞬間、雷鳴のような衝撃音が響く。


 レオンが地に叩きつけられた。


 


(……え?)


 僕の意識が追いつく前に、身体が勝手に選択していた。

 回避の最適解から導き出される、最も反撃を受けにくい角度。

 それを無意識のまま実行してしまったのだ。


 演習場が、しんと静まり返る。


「……っは、は……? え、今……何が……?」

「瞬間移動……? いや、見えなかっただけ……?」

「無能じゃなかったのか!? あれ、基礎科の動きじゃねぇぞ!」


 観客席で悲鳴にも似た声が飛び交う。

 僕は呆然と手を見つめていた。


(何が……起きた……?)


 意思と行動が一致していない。

 動きたい方向ではなく、最適な方向へ動かされる。

 まるで、僕の身体は僕の“意識”ではなく“最適解”だけを拠り所に動いている。


 そう、これは——


《完全適応》


 僕が最も隠したい力。


 自分でも制御できない、自動最適化の怪物。


「……は、ははっ……まじかよ」


 レオンが倒れたまま笑った。

 笑っているのに、その頬には悔しさと困惑が混じっていた。


「お前……本当に基礎科かよ……?」


「ち、違う……僕は、本当にただの……」


「答えになってねぇ……っ!」


 レオンの声は怒鳴りではなく、歓喜に近かった。

 だがそれよりも強い視線が、僕の背中に突き刺さっていた。


 クロード教官がいた。


 静かに、冷静に、鋭く。

 まるですべて見透かしているかのような目で。


(……見られた)


 あの動きを、いくら温厚な教官でも「偶然」とは受け取れない。

 彼の観察眼は本物だ。

 僕の適応の“異常性”に、気づかないはずがない。


 観客のざわめきは次第に渦となり、僕の名前を呼び始めた。


「天城リオって……何者だ……?」

「無能じゃなかったなら……じゃあ、何?」

「基礎科のくせに、実戦科トップを……瞬殺……?」


 人々の視線が熱を帯び、僕の身体にぶつかる。

 逃げ場を失ったような圧迫感が胸を押しつぶす。


(……こんなはずじゃなかった)


 避けるだけで良かった。

 やり過ぎるつもりなんてなかった。


 なのに——身体が勝手に最適解を選んでしまう。


 これ以上目立てば、本当に隠し続けられなくなる。


 レオンが立ち上がり、砂を払いながら僕を見た。


「天城リオ……次は本気でやろうぜ」


「……いや、その……僕は……本気とかじゃなくて……」


「ははっ、誤魔化すなよ。見りゃわかる。

 お前は“無能なんかじゃない”。」


 痛いほどの断言。

 それが、胸に突き刺さる。


 それでも僕は——ただ静かに首を横に振るしかなかった。


 演習場に漂う熱気の中、

 クロード教官の低い声が風に乗って届く。


「……あれは……普通じゃないな」


 その言葉は僕にだけ聞こえたような気がした。


(……隠しきれなくなる……)


 不安が胸の奥で膨れ上がる。

 僕の背中を冷たい汗が伝った。


 こうして——

 “無能”と呼ばれていた少年は、一瞬で学園の中心に躍り出てしまった。


 ただ避けるだけのつもりだったのに。

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