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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第6章:世界分岐の刻――揺らぐ均衡と支える四つの想い

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第38話:ミュリスの決断――リオを逃がすための“秘密の脱出行”

 武闘祭の混乱が落ちつくことはなかった。

 巨獣が崩れ落ちたあの瞬間から、学園全体の空気はどこか歪んでいる。

 強まる監視、警備の増強、ざわつく教師陣……

 そして、どことなく刺すような視線。


(……嫌な気配が増えてる)


 廊下を歩くだけで、見えない“網”に絡め取られる感覚があった。

 誰が見ているのか分からない。

 けれど、確かに誰かが僕を追っている。


 そんな中で――

 ミュリスはいつもと違った。


 笑っているのに、笑みが震えている。

 無邪気に見えるのに、瞳の奥がずっと揺れていた。


 夕暮れが落ちるころ、彼女はそっと手を引いてきた。


「リオ……今夜、時間ある?」


「え、あぁ……別にいいけど」


 その声が、どこか切迫していると気づいたのは、

 夜になってからだった。


 寮の裏手。

 人気のない古い通路――

 ミュリスは壁にもたれたまま、深い息を吐いた。


「リオ……ほんとは言いたくなかったんだけど……」


 いつもの軽い調子は影も形もない。

 僕は息を呑んだ。


「どうしたんだよ。何があった?」


「……全部だよ。

 精霊も、魔族も、帝国も、教国も……

 みんな、リオを狙ってる」


 その言葉を聞くのが怖かった。

 でも、予感はずっとあった。


「もう、“監視”で済む話じゃないんだ。

 奪いに来る。

 どっちの勢力も……リオを、自分たちに引きずり込もうとしてる」


 闇の子である彼女の声は、いつになく重かった。


「僕を……奪う?」


「うん。

 精霊は、リオを消そうとしてる。

 魔族は……リオを王にしようとしてる」


(そんな……)


 息が詰まる。


 逃げ道なんてない。

 選べる余裕なんて、もっとない。


 ミュリスは僕の腕を掴んだ。


「だから――逃げよ?」


「……逃げる?」


「うん。

 この学園にいたら、いずれ捕まる。

 どっちかに取られて……もう戻れなくなるよ」


 その瞳は泣きそうなくらい真剣だった。


「僕は……逃げたくないよ。

 みんなを置いて、どこへ行くんだよ」


「違うよ、リオ。

 逃げるんじゃなくて……守るの。

 リオが消されちゃう前に、どこか安全な場所へ隠れるの」


 彼女は震える声で続けた。


「……お願い。

 私、リオがいなくなるの……嫌だよ」


 小さな声なのに、胸の奥に刺さった。


「行こう。

 裏道を使えば、今なら結界が緩いとこがある。

 そこなら抜けられる」


 ミュリスは僕の手を握ると、夜の通路へ駆け出した。

 僕も引っ張られるように走り出す。


(本当に……逃げるのか?)


 学園の明かりが遠ざかる。

 夜の風が冷たく頬を撫でた。


 でも、胸の奥の封印は静かに脈打ち続けている。


(僕は……何を選ぶべきなんだろう)


 答えがないまま、

 僕たちは暗い裏道へと姿を消していった。

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