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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第5章:魔法武闘祭――隠しきれない力が、ついに世界の目に触れる

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第30話:異変の前兆――ヒロインを狙う闇の襲撃者が動く

 競技場の熱気は最高潮に近づいていた。

 観客席のざわめきと魔力の光が交錯し、まるで祭りの渦のような空気が生まれている。


(フィアの準決勝……そろそろだな)


 観戦席の最上段で、僕は胸に手を当てながら深呼吸した。

 封印の脈動はまだ弱い。

 これなら最後まで静かに見ていられる――


 そう思った矢先。


 ――結界が軋んだ。


 ほんの一瞬。

 ほんのわずかな揺れ。


(……今のは?)


 観客の歓声に紛れるほどの微細な揺れ。

 誰も気づかないような、さざ波のような魔力の変動。


 でも、僕の胸は敏感に反応した。


 ドクン……。


 痛みはない。

 ただ、冷たい何かが背骨を撫でる。


(嫌な気配……近い)


 視線を競技場から外して、控室の方向へ目を向けた瞬間――


 暗がりが“動いた”。


 影が滑るように壁へ張り付き、一瞬で姿を消す。


(……誰かがいる?)


 目を凝らすと、控室の周囲に複数の“気配”が点々と広がっているのが分かった。


 その気配は、生徒のものではない。

 学園の魔力の流れとも違う。

 冷たく濁った、外部の“闇”。


(嫌だ……これは……)


 胸が熱くなり、呼吸が早まる。


 フィアの控室は……あの方向。


 そのころ、裏通路では。


「……この気配……どこかで感じた」


 セレナ・ヴァルクレアが足を止めた。

 刀の柄に自然と手が伸びている。


 風が、耳元を鋭く通り過ぎる。


 その風は“警告”だった。


「エリス、下がれ。

 何かいる」


「わ、わたしも感じてる……結界の内側なのに、外の気配が……」


 二人が身構えた瞬間――

 黒い術式が壁に浮かび上がった。


「……っ、闇属性の符文……!」


 エリスが結界魔法を展開するより早く、

 別の場所で同じ符文が“三つ”同時に輝いた。


 ドッ……!


 術式が闇を解き、空間が歪んだ。


「分断……!」


 セレナが叫んだ時には、

 エリスの姿が闇の結界に飲み込まれ、

 足元の床に裂け目が走った。


「エリス!」


「大丈夫、セレナ……っ、離れ――」


 声がかき消され、閉ざされた。


 そのすぐ隣で別の闇が伸び、

 今度はフィアの控室前へ現れた。


 光と闇が交錯し、悲鳴が上がる。


 ミュリスも別方向で叫び声を上げていた。


「やだ! 罠だよ……分けられてる……!」


 ヒロインたちが意図的に孤立させられていく。


(なに……? なんでフィアたちの周りだけ……)


 僕の背中に、氷の針のような寒気が走った。


 影の気配は最初からフィアたちを“狙っていた”。

 守りの薄いタイミングを見計らって、闇の術式が発動した。


(……僕じゃなくて……まずフィアたち?

 いや──)


 胸がドクンと跳ねる。


(狙いは……彼女たち を通して ……僕?)


 理解した瞬間、

 観客席に座っている余裕なんてなくなった。


 気配が強くなる。

 胸の中の欠片が微かに震える。


(今動かないと……誰かが危険だ)


 立ち上がると同時に、

 観客席から裏道へ続く通路へ駆け出した。


 歓声が遠ざかり、肌に冷たい風が触れる。


「……やっぱり……」


 影の気配は、確実に近づいていた。

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