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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第4章:光と闇と軍勢――少年を巡る“三勢力の奪い合い”が始まる

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第21話:“執行者ノア”動く――完全適応を抹消せよ

 空気が冷たい。

 朝日が昇りかけの学園を照らしているのに、胸の奥は晴れなかった。


 昨日から続く嫌な気配。

 背後にまとわりつくような影。

 “見られている”という感覚だけが、朝の静けさを濁していた。


(……今日だけは、普通に過ごせますように)


 そんな願いが届くほど、世界は甘くないらしい。


 一方その頃。

 学園から遠く離れた教国の地下聖堂では、静かな儀式の光が揺れていた。


 黒い法衣に仮面をつけた男がひとり、ひざまずいている。

 その男こそ、“執行者”と呼ばれる存在――ノア。


 壁一面に古代文字が浮かび、重厚な声が響く。


『完全適応――あの力が揺らぎ始めている。

 今度こそ、封じねばならない』


 ノアは頭を伏せたまま、淡々と答える。


「確認済みです。

 封印の揺らぎは、この世界の均衡を脅かします」


 その声音は落ち着きすぎて冷たい。

 感情というものが削ぎ落とされたような、不気味な静けさ。


『対象は黒髪の少年。

 魔力量に異常は見られぬが……内側の存在は確かだ』


「……確かに、揺れています。

 あれは“ただの少年”ではありません」


 ノアはゆっくり顔を上げ、仮面の奥の瞳が光る。


「世界の理に背く力。

 あれを放置すれば、いずれ封印そのものが破られる」


『執行せよ、ノア・アルベント。

 完全適応――抹消対象と判断する』


 静かな声が聖堂に落ちた。


 ノアは一度目を閉じ、深く頷いた。


「拝命いたします」


 淡々とした口調なのに、そこには絶対的な決意が宿っている。


「これより、影の追跡者を放ちます。

 黒髪の少年の位置を割り出し、確保。

 ……必要であれば、処理します」


 聖堂の光が強く脈動し、ノアの背後に数体の黒い影が生まれた。


『出発せよ』


「はい、“秩序”のために」


 影たちは一斉に広がり、世界に散っていく。

 向かう先は、アルケディア学園。


 昼休み。

 学園の中庭では、生徒たちがのんびりと昼食を楽しんでいた。


「リオ、今日のお弁当また小さくない? 食べてる?」

「ちょ、ミュリス……引っ張るなって……!」


 ミュリスは僕の腕に絡みつきながら、覗き込んでくる。


「ん〜……なんか、今日のリオは特に“魔力の匂い”が濃いね?」


「ちょっと意味分かんないから、その表現やめて……!」


 隣でフィアがため息をつく。


「ほんとに……あなたは無理に笑ってるだけでしょ。

 疲れが全然取れてない顔してる」


「え……そう見える?」


「見えるわよ。隠せてると思ってるの、あなただけ」


 ぐさりと刺さった。


 セレナも腕を組んでこちらを見ている。


「風が落ち着かない。

 何かが近づいている気配がある」


「気配……?」


「理由は分からないが……胸騒ぎがする」


 エリスも控えめに僕の袖をつまんだ。


「リオ……今日、どこか痛くない? 体調悪くない……?」


 全員が不安げに僕を見る。


 その視線が嬉しい反面――胸の奥がさらに痛んだ。


(この日常を……僕は壊すかもしれない)


 そう思うたび、息が浅くなる。


「大丈夫だよ。今日は本当に……何も起きないと思うから」


 笑ってみせたが、フィアがすぐ見抜いた。


「その言い方が一番信用できないのよ」


「ぐ……」


 その時だった。


 風の流れが止まった。


 周囲の音が一瞬だけ途切れ、影が地面に張り付くように濃くなった。


 ミュリスがぴくりと肩を震わせる。


「……来てる……」


「え?」


「リオを探す“影”。

 普通の魔力じゃない。もっと深くて……冷たい気配」


 フィアは空気の乱れに気づき、杖を握りしめる。


「なんなの……この闇の流れ……?」


 セレナは即座に目線を鋭くして周囲を確認する。


「敵か……。姿は見えないが、圧が強い」


 エリスは胸元を押さえ、小刻みに震えた。


「学園結界が……微かに軋んでる……

 こんな揺れ、数年に一度しか起きないはずなのに……!」


 僕だけが、ただ息を呑むことしかできなかった。


(これ……僕を探してる?)


 そんな馬鹿な、と言いかけた瞬間――


 背後の影が、ぬるりと揺れた。


 形はない。

 音もない。

 ただ、存在だけが確かに僕へ向かって伸びてくる。


(こいつ……僕を――)


 その正体を知らないのは僕だけだった。


 遠く離れた場所で、ノアが静かに呟く。


「見える……黒髪の少年。

 笑っているが、胸の奥に揺れがある。

 “あの力”は隠しきれていない」


 仮面の奥の瞳が細められる。


「完全適応。

 ——抹消対象と認定する」


 その声は低く、冷たく、救いの欠片もなかった。

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