表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第1章:無能と呼ばれた少年、学園で“隠しても隠しきれない力”を見せてしまう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/48

第2話:天才少女フィアの疑念。「あなた、本当に無能なの?」

 午前の授業が終わった直後、教室の空気が少しざわつき始めた。

 魔法理論の講義は、基礎科にしては驚くほど専門的だった。魔力の循環式、魔法陣の干渉領域、属性の相性計算——どれも初日から習うような内容とは思えない。うんざりした顔の生徒が半分、諦めてノートすら閉じている生徒がもう半分。


 そんな空気の中、僕だけは静かに胸の中で焦っていた。


(……やってしまった。あの回答、明らかに普通じゃなかった)


 フィアに疑われたことが、頭の片隅にずっとこびりついている。

 彼女の金色の瞳は鋭かった。まるで“真理を暴く光”そのものみたいで、下手に誤魔化せばすぐに見抜かれそうだった。


 教室を出ようとしたその時——


「天城リオ、ちょっといい?」


 背後から、澄んだ声が肩を掴んだように響いた。

 振り返るとフィアが立っていた。

 距離が近い。心臓が跳ねる。


「さっきの授業のことなんだけど」


「あ、あれ……? いや、その……たまたま……」


「たまたま、ねぇ?」


 フィアは細い指を顎に当て、こちらをじっと見つめた。

 その観察するような眼差しは、まるで魔法陣を解析する時のそれに似ていた。


「“魔力ゼロ”のはずなのに、どうして魔力循環の不安定点がわかったの? あれ、普通の生徒じゃ絶対に気づけないわよ。私だって初学年の時は気づけなかった」


「……えっと……なんとなく?」


「その“なんとなく”が怪しいって言ってるの」


 食い気味の返しに、完全に詰んだ気がした。

 彼女の問いは正確で容赦ない。

 天才と呼ばれる彼女だからこそ、違和感を敏感に察知するのだろう。


「いい? あなた、何か隠してるわよね」


「……か、隠してないよ。本当に無能だし」


「さっきの答えで、その言葉が一番信用できなくなったのよ」


「…………」


 言い返せない。

 否定すればするほど怪しく見えるという最悪の状況。

 逃げたい。全力で逃げたい。


 だがフィアはさらに一歩近づき、声を落とした。


「別に責めてるわけじゃないの。ただ……気になるのよ。“普通じゃない”って」


 その瞳に嘘がないのが逆に困る。

 僕は誤魔化すことが苦手だ。

 心臓がどくどくと脈を打ち、額に汗がにじむ。


「ほんとに何でもないんだ。ただ、たまたま……」


「その言い方、信用できないって言ってるのに」


 フィアが眉を寄せた瞬間、後ろからクラスメイトたちの視線が突き刺さり、僕は耐えられなくなった。


「ごめん、ちょっと用事あるから!」


 そう叫んで、半ば逃げるように教室を飛び出した。


 廊下から外へ出ると、昼休みの喧騒が広がっている。

 中庭では生徒が弁当を広げ、魔導具店の方からは明るい笑い声が聞こえてくる。


 僕はその全てを避けるように、木陰と廃棟の狭間にある、ほとんど使われない回廊へ向かった。

 昼下がりでも薄暗く、人も滅多に来ない場所。


 誰もいない。

 ここなら落ち着ける。


(はぁ……フィア、鋭すぎるな……)


 壁に背を預けて息を整えていると、ふと、微かな気配が風の流れに混じった。


 柔らかい気配。

 闇に溶けるような、でもどこか甘い匂い。


「やっと見つけた」


 耳元に声が落ちてきたかと思うと、影の中から小柄な女の子がふわりと姿を現した。

 黒髪、紫の瞳、そして小さく笑う唇。

 ミュリス・ナハト。


 魔族の血を継ぐ少女。


「……どうしてここに?」


「なんとなく、あなたの気配を追ってきただけ。リオって、すごくわかりやすいから」


 にこっと笑うその表情は、人懐っこいようで、どこか底知れない。

 僕は背筋を伸ばした。ミュリスが近くにいるだけで、体内の何かが微かに反応する感覚がある。


「さっきの授業での答え、聞こえちゃった。あれ、絶対に普通じゃないよね?」


「……またそれ……」


「だって本当にそうなんだもん」


 ミュリスは僕の周囲の空気を嗅ぐようにして、顔を近づけた。

 紫の瞳が僕を覗き込む。


「ねぇリオ。あなた、普通の人間じゃないよ。魔力の流れ方が……ほら、こんな風に歪んでる」


 ミュリスの指が僕の胸元の空気をなぞると、見えない魔力が微かに波打った。


(……やばい。完全に勘づかれてる)


「気にしないで。私は“同族の因子”を感じられるだけだから」


「ど、同族……?」


「うん。リオの中に流れてる力、少しだけ私たち魔族に近いんだよ。だからね——」


 ミュリスは小さく笑った。


「あなたは“無能”なんかじゃない。むしろ……とんでもなく異質」


 心臓が跳ねた。

 今朝から何度も隠してきた秘密が、簡単に暴かれていく。


「安心して。私は誰にも言わないよ。だって……」


 ミュリスが一歩、僕に近づいた。


「あなたが普通じゃない方が、絶対に面白いから」


 その言葉は、囁きというより予言のように聞こえた。


 昼休みの小さな回廊で、僕は気づく。

 逃げても、隠しても、僕の“異質さ”はすでにいくつもの瞳に捕らえられ始めている。


 そして——それは、まだ序章にすぎなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ