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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第3章:封印の亀裂と魔族王の影――揺らぎ始めた“少年の正体”

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第18話:セレナの静かな決意――「お前が暴れたら私が止める」

 フィアに支えられたまま、しばらく息を整えていた。

 暴走が収まったとはいえ、胸の奥の軋みは完全には消えていない。

 魔力が戻ったわけでもなく、ただ沈んでいるだけ。


(……また起こるかもしれない。

 僕が完全に制御できない限り……)


 思考の渦が胸を締め付け、息が詰まりそうになる。

 そんな時だった。


「……リオ」


 落ち着いた、しかし鋭く響く声が、風を裂くように届いた。


 顔を上げると、セレナがゆっくりと僕の方へ歩いてくるところだった。


 銀色の髪が陽光を反射して淡く光り、凛とした表情のまま僕を見つめている。

 彼女の周囲だけ、風が静まっているようにすら感じた。


 フィアがそっと僕から離れ、セレナに視線を向ける。


「セレナ……」


「フィア、ありがとう。あとはいい」


 静かな声。それは拒絶ではなく、役割の交代を促すような穏やかさだった。


 セレナは僕の目の前に立つと、ゆっくりと片膝をつき、視線を合わせてきた。

 その瞳には怒りも困惑もない。ただまっすぐに“僕”を見ている。


「見た。……全部じゃないが、暴走の一部はな」


「…………」


 責められると思った。

 怖がられると、避けられると、そう覚悟していた。

 でも——


 セレナは眉ひとつ動かさず、ただ静かに言った。


「リオ。

 お前がどんな存在でも、私は隣に立つ」


「…………え……?」


 胸の奥が一瞬凍り、次に熱くなった。


 嘘でも慰めでもない。

 ただ静かに、事実のように言い切る声。


 セレナは続けた。


「そしてな」


 真っ直ぐな瞳が僕を射抜く。


「もし……お前が暴れたら、私が止める。

 それだけだ」


 その言葉は、優しさでも拒絶でもない。

 “覚悟”そのものだった。


 彼女の声が震えないのは、剣士としての確固たる意志があるからだ。

 決して僕を脅すためではなく、離れる理由にしようとしているわけでもなく。


 ただ——僕を守るための覚悟。


「せ、セレナ……」


「勘違いするな。

 私はお前の力がどうとか、魔族がどうとか……そんなものに興味はない」


 彼女は胸に手を当て、静かに言葉を紡ぐ。


「私が知っているリオは、戦いを避け、他人を守ってばかりの優しいやつだ。

 それが“何者か”なんて、どうでもいい」


 思わず息が詰まる。


「だけど……」


 セレナは一歩だけ近づき、僕の肩に手を置いた。


 温かくて、でも強い手だった。


「もしその力が……お前自身を壊し、人を傷つけるのなら——

 私は剣を持って、それを止める」


 風がふっと弱まり、木々の影が揺れた。


「お前が怖いんじゃない。

 失う方が、ずっと怖い」


「……っ」


 胸が鋭く締め付けられた。


 誰にも言えなかった恐怖を、セレナは簡単に見抜いていた。

 僕が一番恐れているのは“自分を制御できなくなること”。

 そのせいで誰かが傷つくこと。


 だからこそ、セレナはこう言うのだ。


「拒絶しない。

 逃げない。

 ただ……隣に立つ」


「セレナ……君……」


 喉が震える。

 うまく言葉にならない。


 セレナは少しだけ目を細めた。


「だから……お前も逃げるな。

 私からも、フィアからも、エリスからも、ミュリスからも。

 お前を“ひとり”にする気はない」


 フィアが思わず小さく息をのむ。

 その横で、ミュリスは静かに微笑んでいる。


 セレナの言葉が、胸の奥深くに届いていく。


 熱いものがこみ上げてきて、視界が少し滲んだ。


「……僕……本当に……暴れたら……」


「その時は私が止める。

 何度でもな」


 そう言って、彼女は剣士のように静かに笑った。


「だから安心しろ。

 お前はここにいていい」


 拒絶じゃない。

 同情でもない。

 “受け入れ”でもあり、“覚悟”でもある。


 その言葉が、どれだけ僕を救ったか。


 胸に刺さっていた恐怖が、静かにほどけていく。


(……こんなに……強く……優しい人だったんだ……)


 気づけば、身体の震えも止まっていた。


 フィアの光が残した温かさに、セレナの言葉が重なり、

 胸の奥で暴れていた脈動が、少しだけ静まっていく。


「……ありがとう、セレナ……」


 かろうじて絞り出したその声に、

 セレナは小さく頷いた。


「礼はいい。

 その代わり、次に暴走した時は……容赦しないからな」


 軽口のように見えて、決して冗談ではない。

 その覚悟が、僕の心をさらに強く締め付けた。


(本当に……僕は……こんなにも守られているのに……)


 それでも、まだ胸の奥では小さな“脈動”が生きている。


 セレナの言葉の温かさと、内側に潜む不穏が、

 奇妙な均衡を保ったまま揺れていた。

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