表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第3章:封印の亀裂と魔族王の影――揺らぎ始めた“少年の正体”

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/48

第17話:魔力の暴走再び。フィアの光がリオを包み込む

 胸の奥に、昨日と同じ“嫌な脈動”が戻ってきたのは、昼休み直前だった。


 魔力核が揺れるような違和感。

 背骨の奥を爪でなぞられるような冷たい感覚。

 息を吸うたびに胸がじわりと熱くなる。


(……嘘だろ……また……?)


 ミュリスから聞かされた真実が、頭の中で繰り返される。


 “古代魔族王の欠片”。

 世界が恐れる力。

 完全適応が封印を揺らしている。


(頼む……今日は……いつもの“普通の僕”でいさせてくれよ……)


 祈るように席に座ったが、胸の奥の脈は止まらなかった。


 昼休み。

 生徒たちが食堂に向かい、廊下に活気が戻る。


 しかし僕は、その賑やかさから逃げるように人のいない裏庭へ向かった。


 深呼吸しようとした瞬間——


 空気が歪んだ。


「……っ!」


 足元に置かれた落ち葉が、吸い寄せられるように宙へ舞う。

 周囲の花壇の魔力灯がぱちぱちと瞬き、光が不自然に揺れた。


 胸の奥で、何かが強く脈打つ。


 ドクン。

 ドクン……!


「う……あぁ……っ……!」


 膝が沈み、片膝をついた。

 頭の奥で、またあの軋みが響き出す。


 魔力が勝手に漏れる——いや、吸い寄せている。


 周囲の魔力が僕に向かって流れ込み、空気全体が渦を巻いた。


(やばい……止まれ……止まれ……!)


 必死に抑えようとしても、制御が利かない。

 胸の奥の“欠片”が騒ぎ、背中を内側から押し広げるように熱を生んでいく。


 喉から押し出されるように声が漏れた。


「っ……誰か……っ、来ないで……!」


 叫んだ、その時。


 校内に警報音が響き渡った。


《結界異常反応! 学園全域、警戒態勢!》


 驚きの声が校舎中から上がる。


「また!?」「何が起きてるんだ!?」

「魔力の揺れ……リオの方向から……?」


(やめろ……! 気づくな……!)


 願いは届かない。


 背後から、光が走った。


「リオ——ッ!!」


 振り返る前に、柔らかい光が僕の身体を包み込んだ。


「しっかりして! リオ!」


 その声は、フィアだった。


 フィア・ルミナリエの光魔法が、暴走する僕の魔力を包み込むように広がっていく。

 光は暖かいはずなのに、今は痛いほど眩しく、胸の奥に突き刺さる。


「ちょ……フィア……っ、来るな……危険だから……」


「危険なのは分かってるわ!

 だから来たのよ!」


 彼女の声が震えていた。

 恐怖の震えではない——心配の震えだ。


 僕の周囲で舞っている魔力の渦を、フィアは両手をかざして押さえ込もうとする。


「う……くっ……!

 この魔力……強すぎる……!」


 額に汗を浮かべ、必死に光を強める。


 フィアの光属性は清浄で正しい流れを持つ。

 だからこそ、僕の内側の“異質”とぶつかった瞬間に、火花のような反応を起こす。


「フィア……離れて……!

 僕……また誰かを傷つけるかもしれない……!」


「黙って! 傷つけるもんですか!」


 フィアは叫ぶように言って、光をさらに強くした。


 渦が押し返され、暴走の波が少しずつ弱まる。


(……すごい……)


 フィアの魔力は繊細で、強く、美しい。

 なのに今、彼女は自分の身体を削りながら光を放っている。


「リオ……耐えて……!

 あなたの魔力、押さえ込むから……!」


「フィア……!」


「お願いだから……!

 これ以上、苦しまないで……!」


 光が僕の胸に触れた瞬間、暴走の熱がわずかに引いた。


 フィアの光が、僕の内側の“異質”を包み込み、押し返している。


(……こんなにも……支えてくれてるのに……)


 胸の奥が熱く、それでいて冷たくなる。


 フィアの顔が近い。

 その瞳は涙すら浮かべていて、必死に僕を見ている。


「リオ……私に……任せなさい……!」


 その声に、身体が応え始める。


 魔力の渦が薄れ、吸引が弱まり、周囲の空気が少しずつ静まっていった。


 暴走は、止まった。


 しばらくして、僕は地面に座り込んでいた。


 フィアが僕の背に腕を添えて、支えてくれている。


「だ、大丈夫……?」


「……うん……助かった……」


 息をするので精一杯だった。

 でもフィアの腕の温かさが、とても心地よかった。


 フィアは安堵しつつも、信じられないものを見たように僕を見つめた。


「リオ……あなたの魔力……いったい……」


「……ごめん……ほんとに……ごめん……」


 ふらふらと首を振りながら、僕はようやく口を開くことができた。


「僕……危険なんだ……

 自分でも……分からないぐらい……」


 フィアは驚いたように目を瞬かせた。


「危険って……あなたが誰かを傷つけるわけないでしょ……!」


「違う……僕じゃなくて……

 僕の中の……“力”が……」


 言いかけた瞬間、胸がまた小さく脈動した。


 フィアはそっと僕の手を握り、強く言った。


「リオ。

 あなたは……誰より優しい。

 だから、その言葉が……一番悲しいわ」


「……フィア……」


「あなたの中にどんな力があっても、私はあなたを……」


 そこまで言った彼女の声が震えた。

 顔は赤く、涙と怒りと困惑が入り混じったような表情。


「……放っておけるわけ、ないじゃない……!」


 その言葉に、胸の奥で何かがほどけた気がした。


 遠くで警報音が鳴り続ける。


 結界は揺れたまま。

 学園はざわめき、誰もが原因を探している。


 その中心にいるのは、僕。


(こんなにも周りを巻き込んで……

 こんなにも誰かに支えられて……

 それでも……)


 フィアに支えられながら、歯を噛み締めた。


「……僕は……やっぱり……危険なんだよ……」


 ぽつりと漏れた言葉は、空気に溶けて消えた。


 しかしフィアの手だけは、離れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ