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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第3章:封印の亀裂と魔族王の影――揺らぎ始めた“少年の正体”

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第16話:ミュリスの告白――『あなたの中には魔族王の欠片がある』

 朝の光が差し込むはずの時間なのに、世界が少し霞んで見えた。

 夜の異変のせいで、眠れたのかどうかも曖昧だ。

 身体の奥で残響のような脈動がまだ微かに続いていて、胸の奥に不安が貼りついて離れない。


(……あれは、一体なんだったんだ)


 封印が軋むような音。

 背骨を焼くような熱。

 結界が歪んだ瞬間。


 あの異常は、ただの体調不良なんかじゃない。


 けれど理由が分からないまま、僕は半ば引きずられるようにして寮を出た。

 そんな僕の後ろから、そっと影が寄ってくる。


「リオ、おはよ〜。今日は……顔色悪いね?」


「うわ……ミュリス……急に後ろから出ないでよ……」


「ん〜……だって、心配だったんだもん」


 いつもは明るく無邪気な声なのに、今日はどこか低い。

 笑っているようで、笑っていない。

 その目は、観察するように僕の顔をじっと覗き込んでいた。


「ねぇ。ちょっと……人がいないところで話そ?」


「え……?」


「お願い。リオだけに話したいことがあるの」


 ミュリスがこんな顔をするのを、僕は見たことがなかった。

 ふざけるでもなく、無邪気でもなく、真剣に。

 その眼差しに逆らえるはずもなく、僕は頷いてしまった。


 連れてこられたのは、学園裏の小さな森の奥。

 昼間でも薄暗い場所で、風の流れも少し淀んでいる。


 静かすぎる空気に、胸の鼓動が余計に響いた。


「ここなら、誰にも聞かれないよ」


 ミュリスは光を受けて揺れる黒髪を払い、こちらへ向き直る。

 いつもの笑顔は消え、代わりに真剣な瞳だけが残っていた。


「リオ。あなたに……大事な話があるの」


「……?」


 僕が言葉を探す前に、ミュリスは深く息を吸い込んだ。


「あなたの中の魔力……昨日、夜に暴れたよね?」


「っ……!」


 胸が跳ねた。

 誰にも気づかれないようにしていたつもりが、ミュリスにはすべて見透かされていた。


「わ、分かるの……?」


「うん。だって……“あれ”は私たちの血に近い。

 魔族の気配だもん」


「魔族……?」


 それは、僕にとって触れてはいけない領域。

 あの闇の囁きの正体が、それなのか。


 ミュリスはそっと手を胸に当て、視線を落とした。


「リオ。あなたの中には……古代魔族王の“欠片”が眠ってる」


 時間が止まったようだった。


「……欠片?」


「そう。

 普通の魔族じゃない。

 まして人間の魔力でもない。

 もっと深いところにある、“王の力”。

 世界に恐れられた存在の……その残響」


 ミュリスの声は震えていた。

 でもそれは恐怖ではなく、覚悟を伴った静けさ。


「あなたは、ただ強いだけの人間じゃない。

 世界の法則の外側に立つ力を持っているの」


 心臓が痛いほど脈打つ。


(世界の……外側……?)


 頭が追いつかない。

 でも昨日の異常を思い返すと、否定できなかった。


 封印の軋み。

 結界の歪み。

 内側からあふれた異質な魔力。


 全部が“説明できてしまう”事実だった。


「……そんな……馬鹿な……」


「嘘じゃないよ」


 ミュリスは近づき、僕の手をそっと取る。


 冷たいはずの指先が、微かに震えていた。


「あなたの中の力……ずっと眠ってたの。

 でも最近、周囲の環境と刺激が重なって……封印が揺れ始めた」


「封印……」


「うん。“王の欠片”は本来動かないはずだった。

 でもあなたの《完全適応》が、それを無理矢理生かそうとしてる」


 ミュリスの声は静かに深く、森の空気を震わせた。


「リオ。

 あなたは……この世界にとって“危険”なの。

 人間にも、精霊にも、魔族にとっても」


 息が止まった。


「なんで……僕は普通に生きたいだけなのに……」


「分かってるよ」


 ミュリスは優しく微笑んだ。

 今まで見せたどんな笑顔より、悲しみを秘めたものだった。


「だから言うの。

 世界はあなたを放置しない」


「……!」


「力の揺らぎは人間の結界にも、精霊にも……魔族の上層にも届き始めてる。

 “完全適応”が、ただの便利な能力じゃないと……世界はもう気づいたの」


 世界が僕を恐れている。


 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが崩れる音がした。


「じゃあ……僕はどうすれば……」


「リオ」


 ミュリスは僕の手を強く握った。


「逃げなくていい。

 でも、隠してばかりでもいられない。

 あなたが力を制御しないと……世界のどこかが壊れる」


「……っ」


「私が助ける。

 あなたがどんな存在でも、そばにいるから。

 世界がどう言おうと……私は味方だよ」


 その言葉は、救いであり、重荷でもあった。


 ミュリスの手の温かさが、心に深く染み込む。


 でも同時に、胸の奥の“欠片”が再び脈動した。


 まるで応えるように。


(……僕は……何になってしまうんだ)


 吐き出せない問いだけが、胸の中でいつまでも渦を巻いていた。

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