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最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~  作者: トワイライト
第2章:学園を揺るがす影――無能少年の“正体不明の英雄譚”が始まる

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第11話:影の守護者の噂。リオは全否定するが、学園は沸いていく

 帝国スカウト部隊の襲撃から一夜明けた学園は、興奮と混乱の余韻を色濃く残していた。

 早朝の校庭には、破壊された地面の焦げ跡が生々しく残り、修復班の魔導師たちが忙しなく動き回っている。

 魔力の残滓がまだ空気に漂い、昨日の戦闘の激しさを物語っていた。


 だが、それ以上に騒がしいのは“人々の声”だった。


「聞いた!? 黒髪の少年が帝国兵を撃退したって!」

「影の守護者って呼ばれてるやつ、ついに姿を見せたのか……?」

「いや、目撃した奴が言ってた。“基礎科の黒髪”、だってよ」

「基礎科にそんなやついる!? 転入生じゃないのか!?」


 校門をくぐった瞬間、あちこちからそんな声が耳に飛び込んできた。


(……うわぁ……終わった……完全に終わった……)


 昨日の帝国兵との戦闘は、隠密で済ませた“つもりだった”。

 けれど完璧に隠れていたはずの僕の影は、誰かに目撃されていたらしい。


 しかもよりによって、学園中に広がる噂の核として。


 校庭を歩くだけで、視線が刺さる。


「あれ……黒髪……?」「でもあんな細い子が……?」

「いやでも、影の守護者って背はあれくらいらしくて……」

「もしかして本人……?」


(違う……絶対違うから……! 影の守護者って誰だよ……!)


 心の中で全力否定しながら教室へたどり着くと、案の定クラスも騒然としていた。


「昨日の帝国兵を倒した“黒髪の少年”の話聞いた?

 服装は基礎科っぽかったって!」

「でもあんなバケモノみたいな帝国兵を倒せるわけ……」

「……いや、あの無能って言われてた天城……ちょっと怪しくない?」


(いや怪しくないから!!)


 そこへ、いつものようにフィアが僕の机に近づいてきた。


「リオ。あなた、昨日どこにいたの?」


「え、えー……ほら……寮で休んで……」


「嘘ね」


「なっ……!」


 フィアは僕の顔を覗き込むようにして言った。


「帝国兵から助けられたっていう子が言ってたわ。

 “黒髪で、華奢で、動きが異常に速くて、声が柔らかい少年だった”って」


 ピッタリ一致しすぎる。


「ま、待って!? 黒髪なんて学園に何人もいるし、声だって——」


「そんなに焦って否定するところが怪しいのよ」


「うぐ……!」


 そこにセレナが歩み寄ってきて、静かな声で一言。


「リオ。否定しても無駄だ。目撃者があれだけいる」


「いやいやいや、僕じゃないってば!!」


「……あれだけの動き、私には見覚えがある。

 昨日の帝国兵との戦い……風を切るあのステップ。

 あれは、君だ」


「…………っ」


 セレナは感情を表に出さないタイプだが、その目は嘘を許さない凛とした光を宿していた。


(……ほんとに見られてたのか……)


 心臓が痛いほど脈打つ。


 さらに、エリスがそっと僕の袖をつまんで言った。


「リオ……危険なこと、してないよね……?

 昨日の夜、ずっと不安で眠れなかったの……」


「エ、エリス……だ、だいじょうぶだから……ほんとに……!」


「じゃあ、どうして黒髪の少年の特徴が……全部リオなの?」


「…………」


 もう反論がなくなってきた。


 そこへ最後の刺客、ミュリスが笑顔で登場した。


「影の守護者? そんなのリオに決まってるじゃん♪」


「決まってない!!」


「だって……昨日の夜、リオの気配がずっと走ってたもん。

 “戦ってる”ってすぐ分かったよ?」


「お前……そんなに分かるの……?」


「うん♪ だって同族の因子って、わかるでしょ?」


 言わないでほしい情報まで言ってくるミュリス。

 もはや味方なのか敵なのか分からない。


(というか……同族って言われたらますます誤解される……!)


 四方八方から詰められ、僕は机に突っ伏した。


「違う。違うんだよ……

 僕は影の守護者でもないし、最強の転入生でもないし、

 ただの無能なんだよ……!」


「「「「それが一番信用できないの!!」」」」


 再び四重ツッコミ。

 もう反論する気力すら消えてきた。


 少し離れた席では、クラスメイトがこんな会話をしていた。


「影の守護者って、黒髪で小柄で、すごい動きするんだろ?」

「天城ってその条件全部当てはまるよな……」

「実戦科トップのレオンも倒したらしいし……」

「いやもう、隠せないだろ……」


(やめて……お願い……やめて……)


 心の中で叫んでも、噂は止まらない。

 むしろ膨れ上がる一方だ。


「影の守護者が学園を守ったらしいぞ!」

「黒髪の英雄って異世界に多いよな!」

「いや英雄じゃないって本人も言ってるらしいけど……」

「謙虚なタイプか……余計に怪しい」


(なんで謙虚なだけで怪しまれるんだ……!?)


 涙が出そうなほど困惑しながら顔を上げると、フィアがため息をついた。


「ねぇリオ。

 あなたが“違う”って言い張るほど、私たちは余計に気になるのよ?」


「そんな……!」


「隠し事をするなら、もう少し上手に嘘つきなさい」


「……ぐっ」


 フィアの言葉が痛いほど刺さる。


 セレナは腕を組んで言った。


「私は、君が何者でも構わない。

 だが……危険なら、私たちにも知らせろ。

 守りたいと思っているから」


「……っ」


 エリスは心配そうに小さく笑った。


「リオを責めてるんじゃないの。ただ……心配なの」


 ミュリスはにこにこしながら言った。


「大丈夫だよ。

 どうなっても私が一番、リオの味方だから♪」


 味方なのは嬉しいけど……言い方が完全にフラグ。


(ああ……これはもう……隠し続けるの、無理じゃない……?)


 胸の奥で、静かに覚悟のようなものが芽生えはじめていた。

 噂は止まらず、むしろ僕の知らないところで加速している。


 影の守護者。

 黒髪の英雄。

 最強の転入生。


 どれも僕ではない。

 でも、世界はそう思い始めている。


(本当に……どうなるんだろう、これから)


 視線を遠くへ向けたとき、ふと背筋に寒気が走った。


 窓の外。

 学園の外壁の向こう。

 影に紛れた、見知らぬ“気配”がこちらを見ていた。


(……誰……?)


 それはまだ遠いが、紛れもなく“こちらへ向かっている”。


 影の噂が学園を沸かせる一方で、

 “本当の影”が確実に、僕の近くへ迫っていた。

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