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第67話 秘密兵器

〈セツナ視点〉


 初めに馬車に乗り込んだ風景とほぼ同じだった。商品が置かれる荷台に乗り込み、出発した馬車に揺られている。違うと言えば、尾行対象者はフードや襟巻きを外し、青みがかった綺麗な黒髪と整った顔立ちを顕にする。そして土属性魔法で造ったであろう見るからに硬質そうな剣が私の喉元に向けられていたことぐらいだ 。


 ミカエラ・ブオナローテが問い質す。


「お前は何者だ?」


 今日で2度目の尋問だ。この質問は私が先程の暗殺者ザクセンの仲間である可能性を込めた質問であるかもしれないし、私が暗殺者に狙われている訳有の人物であるかもしれないと予測された質問だ。


 何故なら、ザクセンの質問は『あの日、何があったのか言え』という内容である。これはザクセン的には私に対してした質問であるが、ミカエラ的には馬車の背後に隠れていたミカエラに対しての質問だったかもしれないと思った可能性があるからだ。


 姉さん曰く、ミカエラは魔の森で同じく三大楽典のリディアと何やら交渉が決裂し、失意の底に沈んでいたとのことだ。 


 そんなことはないのだが、そのリディアがシュマール王国と手を組み、ミカエラに暗殺者を寄越した可能性をミカエラは考慮している。


 私の当初の予定は、私を尾行していたザクセンに対してハルモニア神聖国の者が私を護衛、ないしは共闘しているというところを見せられれば何でも良かった。


 これでザクセンは、私がハルモニア神聖国の者とまではわからないかもしれないが、誰かと手を組んで暗殺を阻んだと思ってくれることだろう。いや、ゴーレムと土属性魔法、そしてミカエラの姿を少しでも見た筈である。勘の悪い奴でもミカエラ、或いはミカエラと思われる者が私と行動を共にしていると思うだろう。


 さて、ミカエラの質問に対して私は考え、そして答えた。


「ミカエラ様で、ございますね……」


「……」


「私は帝国がシュマールの国境を侵攻する前夜にてヌーナン村を襲撃しようとした者であります」


─────────────────────

─────────────────────

 

〈ミカエラ・ブオナローテ視点〉


 セツナと名乗る魔法詠唱者はヌーナン村を襲った経緯を語った。


 バーリントン辺境伯と帝国の共謀によって、ヌーナン村を襲撃し、その後そこを1つの拠点とし、帝国が国境を越えて小都市バーミュラーを落とす算段だったとのことだ。


 私の聞いた話では、王弟エイブルがバーリントン辺境伯の裏切りに気が付き、バーミュラーを守ったということだけだった。セツナの言う侵攻前夜にヌーナン村を夜襲した等という情報は入ってきていない。


「しかし私達がヌーナン村を襲った際、とあることが起きました」


「なんだ?」


「突如モンスターの群れがヌーナン村を囲うように現れ、私達の襲撃を阻んだのです」


「ッ!?」


 リディアだ。リディアがヌーナン村を守ったのだ。私は尋ねる。


「そのモンスターは何の個体だ?」


「アーミーアンツでした」 


 リディアの最後の報告と一致する。


「そのアーミーアンツに黒い縞模様のようなモノはなかったか?」


「いえ、夜襲でしたのでそこまでは確認できませんでした」


 セツナは続ける。


「私はその場から逃げ、次の日に帝国が侵攻、王弟がそれを平定して今に至ります。おそらく王弟はアーミーアンツを何らかの方法で操り、それを目撃した私に暗殺者を寄越して消しに来たのだと思います」


「どうしてそう思うのだ?」


「だ、だってあんな大群のモンスターを操れるのですよ!?王弟の隠したい兵器ではありませんか!?」


 なるほど。しかしこれでわからなくなった。王弟はこのセツナを暗殺しに来たのではなく、リディアに頼まれて私を殺しに来たのではないかということだ。


 ──だがそれにしては、戦力が低すぎる……

 ──いや、王弟と一時的にしか手を結んでいないとすれば王弟の戦力を私が返り討ちにすることを狙っていた?

 ──それともハルモニア神聖国の使者を襲ったとして王弟と神聖国が争うように仕向けたのか?

  

 セツナはアーミーアンツの群が王弟の隠し兵器だと思っているようだが、それはリディアの仕業であることに間違いない。


 バーリントン辺境伯と帝国が手を組んだように、王弟とリディアが手を組んだのならば、私を魔の森、ひいてはヌーナン村から追い出そうとしたこともわかる。


「セツナ、お前に行くあてはあるのか?」


「いえ、取り敢えずはシュマール王国より出てハルモニア神聖国へ向かおうとしておりました」


 セツナを野放しにし、王弟やリディアに私がシュマールに入ったことをこれ以上広められたくはない。


「ならば、私と共にハルモニア神聖国へ来い。身の安全ぐらいなら保証してやる」


「ほ、本当ですか!?」


「ただし、今私にした発言を教皇猊下の前でもしてもらう」


「承知致しました」

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