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第5話 神の領域

〈セラフ視点〉


 僕はリンゴの木の実験を思い出していた。


 付与魔法によってこの世界の生命エネルギーである魔力を強化させた。そのせいでリンゴの木は膨れ上がってしまった。だから身体を強化させる身体強化を施したのだ。そうすることで木は巨大化した。


 僕はそんな魔力強化と自己治癒能力を強化させるための身体強化をリュカに施した。するとリュカの身体は少しずつ修復し始めたが、リュカはただの雌牛であるため魔力そのものが弱い上に、瀕死状態のせいで魔力が枯渇状態にある。


 十分な回復ができていない。


 ──魔力の源となる何かをリュカに与えることができれば……


 魔力は生物だけでなく植物にも宿っており、ただの雌牛であれど、この世界にいるどんな生物でも魔力なるものを宿しているのだ。そんなありふれた魔力をどのようにしてリュカに与えれば良い?


 何も思い付かない僕は何かないかと辺りを見回した。そして手についたホブゴブリンの血を見て咄嗟に思い付いた。


 ──僕の魔力が定着している血を飲ませれば……


 そうだ。僕は自分の指を噛んで傷付け、血を流す。それをリュカの口に入れて魔力の増強を図った。しかしこの量ではあまり効果が得られなかった。


 ──もっと血がいる……


 僕は自分の腕を切り落とそうかと考えた。リュカにかけた付与魔法を自分に行使すれば、切った腕はきっと生えてくる筈である。その証拠にリュカの内蔵と前足が修復しているのだから心配はいらない筈だ。


 しかし自分の腕を切り落とすには物凄い勇気がいることだ。


 刻一刻と弱り始めるリュカを見て僕は、意を決した。ホブゴブリン達が使っていた短剣を手に取る。付与魔法をかけて短剣の切れ味を向上させた。


「ふぅー、ふぅー……!!」


 迷っている最中に僕の家族が、リュカが死んでしまう。覚悟を決めて僕は自分の右腕を切り落とした。


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 飛び散る血とじっとしていられない程の激痛が走る。僕は何とか自我を保ち、弱っているリュカの口の中に僕の血を流し込んだ。


 僕の魔力によってみるみる内に回復していくリュカだが、あまりの魔力とその強化によって今度は内側から魔力暴走を起こしそうになってしまう。


 木はほぼ際限なく巨大化できるが、生き物のリュカにとってはいくら身体強化を施しても刻まれたDNA以上の成長はしない。


 僕は自分の腕をリュカの口から出して、魔力の供給を絶ったが、一度増幅した魔力はリュカの体内で暴走し始めてしまった。


「くそっ!!リュカ!!」


 溜まった魔力が爆発を起こすか、それを発散させるように体外へ放出するなどしなければこの暴走は止まらない。体外へ放出するような、僕達が行っている無意識の、或いは意識的なコントロールが必要である。


 僕は不意に思い付いたことがあった。精神強化の付与魔法によって、魔力の発散をリュカに無理矢理覚えさせるのだ。


 しかしこの一手は最早神の領域である。


 リュカの牛としての精神を別の何かに変えてしまうかもしれないからだ。モンスターのような存在になってしまうかもしれない。普通の野生動物とモンスターの違いは一定量以上の魔力を意識的に、或いは無意識的に利用して生命活動や肉体の強化などをしているかどうかである。


 しかしリュカを生かす為には、もうこれしかないし、僕にはそれができる。


 神が与えしこの力。前世では僕に力がなかった。だが今は誰かを救う力を備えている。


 僕は意を決してリュカに精神強化を使った。


 バチバチと内側に溜まった魔力が黒い稲妻のようにリュカの周囲に放電し始めた。


「よし!!これで……」


 リュカは生き返る筈だ。しかし僕に急激な疲労が押し寄せた。血を流しすぎたし、付与魔法を使い過ぎたせいだ。


 僕は最後の気力を振り絞って、自分の腕を回復させる為に身体強化を使ったが、


 ──ダメだ……魔力が足りない……


 これじゃあ、腕が治らない。


 僕は腕から流れる血を見て、意識が頭から腕に向かって放出されていくような気がした。そして眠るようにしてその場に倒れた。


 しかし倒れた僕を誰かが支えてくれた。そして僕に何かを咥えさせる。僕の口の中に甘い何かが流し込まれた。


 ──なんでだろう…魔力が回復していく……


 僕はほぼ無意識的に身体強化を使い、腕を治そうと試みたが途中で完全に気を失ってしまった。

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