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第49話 告白part2

〈セラフ視点〉


「僕らは父さんだけじゃなくて帝国からも神聖国からも狙われてるってこと」


 アビゲイルが尋ねた。


「え?帝国はわかるよ?国境に近いし、また侵略しにくるかもしれないからさ。でも神聖国は──」


「違うよ」


 僕はアビゲイルの言葉を否定した。


「何が違うの?」


「帝国が僕らを狙う理由は、アビーのいうことだけじゃない。僕とリュカが帝国兵を撃退した…んだけど、その撃退方法にきっと帝国は違和感を覚えると思うんだ」


 殺したという表現から撃退したという表現にした。僕の心はまだ完全には立ち直っていない。いや、これからずっとこの気持ちに寄り添うべきなのだ。デイヴィッドさんが言った。


「なるほどな、地割れを引き起こしてそこに帝国兵達を落下させ、再び地面を戻した……」


 アルベールさんとセツナさんが目を丸くしながら反応した。


「は!?」

「そ、そんなことが!?」


 僕は心を痛めながら頷いて、先を続けた。


「それにその前の400人隊の件もある。一体どこへ自分達の兵が消えたのかと帝国は不思議に思ってると思う」


 確かに、と納得したアビゲイルが尋ねる。


「じゃあ神聖国は?神聖国がこの村を狙う理由なんてないんじゃない?」


「あるよ。魔の森に──」


 僕は言葉を途切らせ、デイヴィッドさんに視線を合わせて、皆にずっと黙っていたことを告白する許可を貰う。デイヴィッドさんが頷いたので僕は言った。


「ハルモニア神聖国の凄い人が魔の森に潜んで、たくさんのモンスターを精神支配しているんだ」


 アルベールさんとセツナさんとローラさんが反応する。


「え?」

「は?」

「初耳なんだけど?」


 デイヴィッドさんが後を引き継ぐ。


「この前、オークジェネラルやホブゴブリン達が現れたのはそのハルモニア神聖国の凄い奴、ハルモニア三大楽典の1人リディア・クレイルのせいなんだ」


 ローラさんは少しだけ納得したように見えたが、アルベールさんとセツナさんはその前の言葉に驚く。


「オークジェネラル!?」

「オークジェネラルが!?ソ、ソイツはどうなったんだ?」


 デイヴィッドさんは言った。


「リュカが1発で退治しちまったよ」


 リュカさんは得意気な表情を浮かべる。


「そんで、後はお前らの腹の中さ」


 アルベールさんとセツナさんは自分のお腹に視線を向け、あの時食べたオークジェネラルのジンジャーソテーの味を思い出していた。


「どうりで……」

「味が違ってたわけだ……」


 ローラさんが尋ねる。


「それでハルモニア3大楽典のリディアはどうなったんだい?」


 僕は答える。


「まだ魔の森にいると思う。でもここ最近ずっと、動きがないんだよ」


「は~……アンタ達、そんなことを内緒にして……」


 デイヴィッドさんは言った。


「す、すまねぇ。でも皆を心配させない為によぉ──」


「黙りな!私達を甘く見すぎだよ!!」


 その言葉にアビゲイルと母さんは力強く頷いた。僕とデイヴィッドさんとジャンヌは反省する。ローラさんは口を開く。


「他に、隠してることはないかい?」


「あ、あのぉ──」


 僕はゆっくりと手を挙げて、アーミーアンツのことを皆に言った。


「はぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

「8千の!?」

「アーミーアンツが配下にぃ!?」 


 なんで?どうして?と口々に尋ねられるので僕は答えた。


「そのリディア・クレイルがアーミーアンツの女王を精神支配したせいで、オークキングを倒しちゃったみたいなんだ。それでオークジェネラルが村の方まで来ちゃったって感じで……」


 ローラさんは僕に先を促す。


「それで?」


「アーミーアンツの女王の精神支配を解いてあげたら、僕の配下に加わりたいって──」


「待て!」

「待って!?」

「待ちな!」


 冒険者の3人(1人は元だが)が同時に僕の話を止めた。ローラさんが3人を代表して尋ねてくる。


「アーミーアンツの女王がセラフの配下に加わりたいって、どうやって言ってきたんだい?」


「…思念伝達……?」


「そんなの聞いたことないよ!?」


「たぶん、僕の付与魔法とオークキングを倒したことによって少し進化したんじゃないかな?」


「そ、それにしたって……」


 3人の冒険者は納得が言っていなかった。しかし僕は本題に入る。


「色々と話しちゃって整理が追い付かないと思うけど、この状況を利用しようと思うんだ」


 デイヴィッドさんが尋ねた。


「どうやって?」


「帝国兵を撃退したのはリディア・クレイル、ひいては神聖国がしたことだと思わせるんだよ」


 皆が押し黙った。僕の提案をそれぞれ吟味しているようだった。アビゲイルがまず始めに反論した。


「それって危険じゃない?帝国と神聖国が会談か何かしたら直ぐにバレちゃうよ?」


「だから、リディアが神聖国を裏切ったってことにするんだ」


 今度はローラさんが反論する。


「それも直ぐにバレちゃわないかい?リディアと神聖国は連絡を密にとっているだろうし」


 デイヴィッドさんが言った。


「いや、そうとも限らねぇ。口から出任せなんていくらでも言える。リディアが裏切ってないってどうやって神聖国は信じることができるんだ?」


 僕が引き継いだ。


「そう。僕らは現在リディアと同じくらい、魔の森を支配できている。神聖国にはリディアの報告と違うような動きを魔の森で見せれば直ぐに疑心暗鬼に陥ると思う」


 母さんが言った。


「じゃあ王弟はどうするつもり?」


「それは、今後敵対するであろうインゴベル国王陛下に対処して貰えば言いと思う」


 つまりこうだ。父さんにはインゴベル国王陛下をぶつけ、帝国には神聖国をぶつけ、神聖国にはリディア・クレイルをぶつける。


「その為にはまず──」


 僕は作戦のあらましを説明した。

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