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第44話 バーミュラー攻略計画

〈バーリントン辺境伯長男グレッグ視点〉


 小都市バーミュラーを囲う白亜の壁が見えた。朝焼けの光が壁に反射して、やけに眩しく見える。


 我が軍は、バーミュラーの援軍要請に従い、寝る間を惜しんで此方に向かったことを演出せねばならなかった。


 そんな我々の到着に都市長ロバート・ザッパは咽び泣き、感謝を告げながら歓迎することだろう。


 バーミュラーの西門に到着した我々に衛兵はどこの所属の軍かを尋ねる。


 見ればわかるだろうと思ったが、私は答えた。


「バーリントン辺境伯より遣わされた軍である!私はその長男のグレッグ・バーリントンだ!!」


 将来、お前らの主人となる者だ。


「しばし待たれよ!!」


 私は鼻を鳴らし、8千の兵を眺める。


 実に壮観であった。


 この兵達が私の号令で攻撃を始める。小都市バーミュラーを我が一族より乗っ取ったこの逆賊達にようやく思い知らせることができる。


 元六将軍にして都市長ロバート・ザッパの首を切るのは私の役目だ。


 様々な思考が渦巻き、私を高揚させる。


 そしてようやく門が開いた。


 ──まだだ……


 攻撃は全軍が門より入ってから行う。


 門が開き先程の衛兵が出てくるかと思いきや、続々と弓矢部隊が出てきた。


 ──なんだ?まさか弓矢隊を率いてこのまま帝国軍と戦えと申すのか!?


 そう思ったのも束の間、門の中より号令が聞こえた。


「放てぇ!!」


 あろうことか弓矢隊は我が軍に矢を放ち始めた。それに弓矢隊は門から出てきた者達だけではない。壁の上を隙間なく占領し、我が軍目掛けて矢を放つ。


 ──な、なんだと!?


 矢の雨が我が軍に、そして門から出てきた弓矢隊の弓は私にも向かって放たれた。


「ぐはっ!!」


 5本近くが私と私の股がった馬に命中した。私は落馬し、何が起きているのかを混乱の最中思考する。


 ──まさか計画がバレた!?

 ──だとしたら一体誰が漏らした!?

 ──い、痛い!!

 ──マズイ、マズイまずいマズイ!!


 私は混乱する自軍を盾にしながら、地を這うように後退した。そして命令を下す。


 ──せめてもの悲願を!?


「全軍!バーミュラーの南門方面へと向かい、帝国兵と戦っている王国兵を撃退しろ!!」


 突き刺さった矢を抜く。口の中は血の味がした。


 ──まだだ!!まだ倒れるわけにはいかない!! 


─────────────────────


─────────────────────


〈小都市バーミュラー都市長ロバート・ザッパ視点〉


「危ないところでした」


 私は救援に駆け付けてくれたインゴベル国王陛下の実弟にあたるエイブル殿下に感謝を告げた。


「礼には及ばない。ここ最近の帝国の動きが不穏であったんでな。密偵に調べさせたところバーリントン辺境伯と帝国が繋がっているのを突き止めたのだ」


 もしエイブル殿下に来ていただけなかったらと思うとゾッとする。援軍に来ていたバーリントン辺境伯の兵はおよそ8千。それがバーミュラーへと侵入し、この小都市を内側から攻撃されては、対処のしようがない。ましてやバーミュラーの外では帝国軍が迫ってきている。


「誠に感謝申し上げます」


 私が再び頭を下げ、礼を言うと、急報を知らせる衛兵が現れた。


「きゅ、急報!!バーリントン辺境伯の軍がバーミュラーの南門方面へと向かっております!!野営している我が兵に襲い掛かろうと予測されます!!」


「なにっ!?」


 しぶとい奴等だ。ならばと小都市に残る兵を西門と南門から出撃させようと思ったその時、髪を後ろに撫でつけたエイブル殿下は言った。


「ならば我が軍に出撃命令を下す」


 エイブル殿下は、ここへ1万の軍を援軍として夜通し行軍して来て頂いたのだ。


「よ、宜しいのですか?流石に兵達も疲労が──」


「構わぬ。その為に来たのだ」

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