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第22話 伐採

〈セラフ視点〉


 僕らは目的の伐採許可の出ている魔の森の入り口に到着した。


 デイヴィッドさんが持っていたハンドアックスを使って木を切り始める。


「っしゃあ!!」


 と掛け声をかけながら数回ハンドアックスの刃を木に叩き付けた。木の幹に3角形の切れ込みを入れ始め、それが幹の1/3ぐらいまで届くとデイヴィッドさんは反対側へ回った。


 そして僕らに説明する。


「木を切る際は先ずは、このようにして木を倒したい方向へ三角の切れ込みをいれるんだ」


 僕ら3人は頷いた。


 そしてデイヴィッドさんは切れ込みを入れた反対側へ回り込み、僕らにもついてくるように指示する。


「そんで、反対側へ回って、さっき切り込みをいれた少し上を切る」


 デイヴィッドさんはハンドアックスを今度は水平方向にして木を切り始めた。


 幹の半分ぐらいまで切ると、また説明する。


「ここでさっき切った切れ込みに繋げるんじゃなくて、ある程度残すんだ。こうすることで木はゆっくりと倒れて安全なんだ」


 僕ら3人は感心しながら頷く。


 デイヴィッドさんは木の板のようなモノを取り出して、水平に切った切れ込みにその板を軽く差し込んで、それを玄翁げんのうと呼ばれる木槌で木の板を奥に差し込むようにして叩く。数回叩くと、デイヴィッドさんは言った。


「倒れるぞ!気を付けろ!!」


 木はミシミシと音を立てて大地に倒れた。


「おおおぉぉ~!!」

「凄いです凄いです♪︎」

「これは面白い」


 僕らはそれぞれに反応を示して拍手を送った。


「よし!セラフ、やってみろ!」


 僕はデイヴィッドさんからハンドアックスを受け取り、目標である木の幹に叩き付ける。


「まずは、倒したい方向に切れ込みをいれる!っと」


 しかしこの一撃で木が真っ二つに斬れ、この横凪に振り払った衝撃で後ろにある木々も幾つか切れてしまった。


「ヤバッ!!?」


 呆然としているデイヴィッドさんとは正反対にリュカとジャンヌは「流石です!」と僕に拍手を送っていた。


 最近、身体強化を使いすぎているせいか、僕の筋力が強いまま戻らないのだ。これは身体強化の持続時間が延びたことによる効果の継続ではないことはわかっている。この上に更に身体強化を重ねることもできるからだ。


 ──今後とも力加減に気を付けなきゃ……


 僕が反省している間に、リュカがハンドアックスを手にする。倒す木に向けて、ハンドアックスを構えるとリュカが口を開いた。


「よ~し!セラフ様に負けないぞぉ!!」


 この台詞で僕とデイヴィッドさんは嫌な予感がした。


 リュカは引くほどの魔力を練り上げ始めた。僕は加減するように制止をかけようとするがもう遅かった。


 リュカはハンドアックスを振り払う。


 リュカを頂点とした扇形の土地ができた。大量の木々が伐採され、まるで野球の球場のような仕上がりとなった。


 僕とデイヴィッドさんは口をあんぐりと開けて、呆ほうけているとジャンヌが拍手を送った。


「やりますねリュカ殿。次は私の番で──」


 僕は思った。


 ──これ切り過ぎだって……絶対怒られるやつだって……


 僕はデイヴィッドさんの方を見ると彼は固まっていた。そして切り終えたリュカは僕に誉めてほしそうに僕の右頬に頭をグリグリとこすりつけてきて言った。


「凄い?リュカ凄い?」


 リュカさんはきっと頭を撫でてほしいのだ。僕は「凄いよ」と半ば呆然としながら今後のことを考える。


 僕がどうしようかと考えていると、またしてもとてつもない魔力を感じた。


 その魔力の発信源はジャンヌである。元は風属性の魔法を扱えるグリフォンだ。僕は慌てて言った。


「加減し──」


 加減しろ、僕がそう言おうとしたが彼女はハンドアックスにこれまた引く程の魔力──リュカの魔力よりも一層磨きのかかった洗練さがあった──を溜め込み、振り払った。  


 魔の森に通る1本の道が出来上がった。その道は地平線の彼方まで続いている。


 ジャンヌは僕に近付いて目をキラキラとさせながら言った。


「どうです!セラフ様!?私はお役に立てそうですか!?」 


 彼女は自分の有用さを僕にアピールしたかったのだ。その気持ちはただ純粋で、悪気はないのである。それにリュカもジャンヌも人間になったばかりじゃないか。僕は2人を叱ることはしなかったし、できなかった。


「……う、うん。凄いよジャンヌ」


 ジャンヌは恍惚とした表情をして言った。


「あぁ、セラフ様……なんと勿体ないお言葉……私、ジャンヌはセラフ様のお役に立ててこれ以上にない幸せを感じております……」

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