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宿屋無双~転生して付与魔法に目覚めた僕は神の御使いとして崇められてしまう~  作者: 中島健一


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第150話 壁

〈Aランク冒険者ミルトン・クロスビー視点〉


 将軍フースバルと殺気を放った女、そして俺がちょうど三角形を形作るようにしてお互いの距離を等間隔の位置に置いた。俺は2人を視界に入れる。ヌーナン村の壁が2人の背景に写った。


 フースバルが言う。


「何のつもりだ!?ミルトン・クロスビー!!邪魔立てするならまず貴様から殺すぞ!!」


 普段のフースバルではない、荒げた様子だった。しかし俺は女に注意を払っていた。鷲のように鋭い目を俺に向けている。


 ──間違いない、この感覚……


 あの時、バーミュラーで感じた殺気の片鱗がある。俺は女に尋ねた。


「貴様はランディル・エンバッハの使いか?」


 女は答える。


「誰だ、その者は?」


 とぼけるか。だがこれで良い。ランディル・エンバッハは誰もが知っている魔導師である。その者を知らないと答えることがそもそもおかしなことだ。つまり、この女はランディルを意図的に隠そうとしているということだ。


 そしてこの問いは、もう1つ意味があった。それは時間稼ぎ。ホワイトとセレスがここへやって来るのを待つ。


 ──この女を倒せば、俺は四執剣になれる!!


 しかしこの時、フースバルが魔力を込め、俺に向かって槍を構え始めた。だから俺は唱える。


 背負った大剣を大地に突き刺し、魔力を解き放った。


「グラウンドフレア」


 地中を葉脈のように火炎が蠢き、フースバルと女に向かって広がる。そして、その地中で爆発を引き起こし、地上の者達を爆散させた。その爆発は天にまで届きうる勢いで2人を、この場を飲み込み、爆風と土煙が舞った。


 土煙が晴れ、爆発によって抉れた大地が顔を覗かせる。フースバルは先程いた位置より後退し、息切れをしていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 ヨロヨロとしながら姿勢を起こす。恐らく、爆発する寸前に大地に向かって渾身の槍を突いたのだろう。俺が魔法で抉った大地とフースバルが槍で抉ったであろう大地が互いに衝突しているような痕跡が残っていた。フースバルの真後ろにいる兵達は尻餅をつき、恐れおののいていたが、奴の背後から少し離れた兵達は爆発に巻き込まれて死に、ヌーナン村の木製の壁を破壊していた。直撃を免れた壁も爆発の影響で炎に焼かれ、この戦場を明るく灯す。


 ──一方、女の方は……


 俺は女の様子を窺うと、女は爆発を目の前で止め、女の真後ろだけでなく女の真横から後方にかけて全ての範囲を防いでいた。つまり、女の後方にいたアーミーアンツ達は無事である。抉られた大地を見ると、女に届く少し前で爆発が止まっていた。大地がまるで測ったかのように真っ直ぐの段差を形作っていた。


 ──どうやって止めた?


 水属性魔法か風属性魔法で止めたのがわかる。


 ──恐らく風属性魔法だな……


 火炎が地中を泳ぐ前に大地を切り裂いて分離したのだろう。水属性魔法でもそれは可能だが、大地は湿り気を帯びていない。


 俺が分析をしている間、女は俯き、黙ったままだ。そして膝を地面についた。


 ──仲間のアーミーアンツを守るために魔力を使い果たしたか?


 その時、ホワイトがようやく到着した。風属性魔法を駆使して空を飛んできたのだ。肩にはセレスが乗り移っている文鳥が乗っていた。


「もぉ~、ミルトン様ったら危ないじゃないですかぁ!!」


 危うく爆発に巻き込まれるところだったとホワイトは文句を垂れる。ホワイトはそのまま俺が相手にしていた者達を見た。


「え?終わった感じですか?」


「そのようだ──」 


 後は止めを刺すだけ。


 ──そうすれば俺が四執剣となる!!


 そう思ったが女は俯きながら言った。


「…そ、その壁は一体誰が造ったと思っている……」 


 ホワイトは答える。


「は?誰ってあれじゃない?大工さんとか?」


 破壊され、無事であった木壁にも火がついていることをホワイトは視認した。


「あらら~、こりゃ台無しだねぇ」


 女は俯いた顔を俺に向けた。涙を流していた。


 女は歯噛みをしながら俺に言った。


「この壁は我が主が建て賜うた壁だ!!あの小さき御身おんみで、ただひたむきに、誠心誠意を尽くされ築き上げた壁だ!!」


 ホワイトが言う。


「は?じゃあ壊されないように守ったらぁ?あ、もう壊れちゃっ──」


 ホワイトは言葉を切る。何故なら俺があの時、バーミュラーで感じた以上の殺気がこの戦場を覆い尽くしたからだ。


─────────────────────

─────────────────────


〈ウェスタン視点〉


 金髪の男は、暗殺者の女を紳士的に起き上がらせてから言った。


「ここは、私がやりましょう」


「わ、わかりました……」


 女はそう言って、南側方面へと移動する。私は最大限の注意を払う。その一挙手一投足に自分の全細胞を集中させた。


 先程男を化け物と評したのは、私の水属性魔法が効かなかったからだ。


 今まで私の魔法を無効化した者は何人かいる、例えば我が主、フースバル様である。主は自身の魔法であらする身体強化をかけ、私の操る水撃に槍を突けば、ただの水に戻すことができた。また水属性魔法は土属性魔法に弱い為、土属性魔法を操る者に我が魔法は阻まれたことがある。


 しかしこのくすんだ金髪の男は、今まで私の魔法を破った方法のどちらにも当てはまらない。この男は本来水属性魔法に弱い筈の火属性魔法を使って、私の魔法を打ち消したのだ。


 そんなことが可能なのか、今でも疑わしく思ってしまう。だからこそ、思わず化け物と口にしてしまった。そして私の感覚が言っている。この男に私は敵わない、と。


 私はザクセンに告げる。勿論、男から目をそらさずに。


「今すぐ、我が主に──」


 しかしザクセンは、私の目の前にいるこの化け物に魔法で作った人形を男の背後からけしかけていた。


 ──愚かな……


 ザクセンの人形は男の背後から剣を突き立てて襲う。しかし男は気付かず、人形の攻撃を受けた。人形が男の背中に剣を突き刺したように見えた。ザクセンは言う。


「よし……」


 しかし、直ぐに異変に気が付く。


「さ、刺さらない?」 


 男は背後にいる人形の方を向き、手を回して人形の頭を鷲掴みにした。


「ほぉ~、魔法でこういうこともできるのですか?」


 ザクセンの魔法に感心していた。しかし次の瞬間、熱波が私を襲った。一瞬だけ身体の表面全体が熱いと思ったが、何ともない。しかし背後でドサリと物音が聞こえる。私は振り返るとザクセンが全身黒焦げとなり、地面に横たわっていた。


 私は直ぐに視線を男へと戻す。男の手に握られていたザクセンの人形が灰となっていた。この時ようやく男が何をしたのかわかった。


 男は人形にほんの一瞬、火属性魔法を放ったのだ。その人形に付いている糸を伝って炎が操縦者であるザクセンを襲った。


 私は直ぐに自分の役目を全うすることに専念する。この男を野放しに戦場を歩かせてはならない。私が少しでも時を稼げば、別のところで益が生ずる。それが我々の勝利に近付けばそれで良い。


 私は全ての魔力を後先考えずに解き放つ。大気中の水を集めつつ、自ら水を生成する。巨大な岩石のような水を空中に浮かせ、男を飲み込むようにして水塊の中に閉じ込めた。


滄囚華そうしゅうか……」


 水中で男はまたもや魔法に感心ししているようだった。しかし次の瞬間、水牢は泡立ち始め、忽ち沸騰し、蒸発した。男は濡れた大地に足を付け、散歩をするように私に向かって歩く。


 ──時間稼ぎもできぬか……?


 その時、北東方面で爆発が生じる。あそこは我が主が向かった方角である。私も男も、北東方面を見る。爆煙が空を覆い尽くしていた。私はそれには構わず、男に視線を戻す。男も私に視線を戻そうとしたが、その途中で、視線を止め、ワナワナと震え始めた。頭を抱え、声を漏らす。


「…あ……あぁ……」


 どうした?さっきの爆発のせいでこうなったのは想像にかたくない。


 そして男はとうとう膝をついた。


 何がなんだかわからない私だが、これは好機と思えた。ひざまずく男に接近し、長剣を振り払う。


 しかしその直後男は天を見上げた。


「だが遅い!!」


 私の渾身の一振が男の脳天に直撃した。しかし、バキンと長剣が折れた。


「は?」


 そして、男は私を見ずに天に向かって嘆いた。


「セラフ様がお造りなさった壁がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 

 

 その刹那、男が発火した。私はそれに巻き込まれ一瞬にして灰となった。

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