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宿屋無双~転生して付与魔法に目覚めた僕は神の御使いとして崇められてしまう~  作者: 中島健一


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第144話 ヌーナン村攻略戦

〈Aランク冒険者ミルトン・クロスビー視点〉


 ヌーナン村攻略作戦が始まった。早朝よりバーミュラーを出て、対帝国へと向かうバーミュラーの軍とたもとをわかち、陽が昇り切る前に目標のヌーナン村が見えてきた。


 ──あれが……


 木製の防護壁に囲われたヌーナン村が見えてきた。


 ──防護壁が聞いていたよりも高く建造されているな……


 村の様子はここからではわからないが、俺達が攻めに来たことに対して、あまり動揺がみられない。


 俺は早朝、バーミュラーで行われた簡単な作戦会議に参加した時のことを思い出す。


◆ ◆ ◆


 都市長ロバート・ザッパとバーミュラーの騎兵隊隊長、将軍のフースバルとその参謀達が集まった。


 フースバルは俺を睨み付け、俺の身体のあちこちに焦点を合わせては、弱点を探している様子だった。初めて相対した天幕でもそうだった。そんなフースバルの2人の参謀も同じ様に俺を睨み付ける。1人──俺と同じくらいの身長の男──は俺の眼前まで迫り、がんたれたが、落ち着いた黒衣を着た者に制止をかけられていた。


 都市長のロバート・ザッパがまず口火を切る。


「本日、我々バーミュラーの兵は南門より、南下しこれから来るであろう帝国の侵略を止めることに注力します。なるべくフースバル将軍殿の邪魔にならぬよう帝国兵を押し止めておく所存です」


 フースバルが言った。


「構わぬ…こちらは作戦が終わり次第、そちらに合流するつもりだ……我々が王女マシュを捕らえるまで──」


 フースバルは先程会った時の睨みをきかせながら続きを俺に向かって言った。


「どうか何もなさらないでもらいたい……」


 念を押された。むしろ俺達側からしたらランディル・エンバッハが何かをしてくるのを、様子見できるのはありがたい。俺はフースバルの目を見ながら、視線はそらさずに頷く。


 すると都市長のロバート・ザッパがヌーナン村の情報を簡単に説明する。村の人口はおよそ150人程度、最近はケインズ商会が入り、武具店等を建設していたが、営業はまだしておらず、中にはおそらく、ヴィスコンティ伯爵の私兵と王弟エイブルの副官ヴァングが拘束されているとのことだ。ザッパは、この軍を見てヌーナン村の住人達が戦う姿勢を見せるとは思えないが、と前置きをしてから言った。


「仮に戦闘となった場合、ヌーナン村の中には元Bランク冒険者のデイヴィッド・リーンバーンがおります。片足が義足ですが、普通の兵士よりかは──」


◆ ◆ ◆


 懐かしい名前だった。


 確か俺がAランク冒険者になるために利用した奴だ。お陰でAランク冒険者となれたが、その更に上の存在である四執剣のことを知ったのだ。


 ──しかし、その座も今日で手に入る……


 隣にいるセレスが撫でるような声で言った。


「珍しいですね。ミルトン様が笑みを浮かべるなんて」


 セレスは対四執剣用に仲間にした女だ。対象者の身体に乗り移れる魔法を有している。セレスはまだ四執剣の1人であるウィンストンとは会っていない。あのウィンストンの身体に乗り移れるか試したかったが、そんなことはもうどうでも良い。今はウィンストンの言うランディル・エンバッハに集中する。


「少し楽しみではあるからな」


 ランディル・エンバッハのあの殺気は、俺を狂わせた。俺と同等かそれ以上の強さだと感じた。だからと言って対処できない訳ではない。まさか対四執剣の為に揃えたパーティー達がここで役に立つとは思っていなかった。ランディル・エンバッハが出てきたら俺達全員で相手をすれば問題ない。


「この村にミルトン様に敵う者がいるのですか?」


「…さぁな……だが、お前達全員となら、どんな相手にでも勝てる筈だ」


「ミルトン様ったら……」


 セレスやヒルダ、ゼンウにホワイトが自らを奮え立たせるように俺を見た。


 フースバルの軍が遠巻きにヌーナン村を囲い始める。


 それを見てホワイトが言った。


「さあ、どうするのかな?」


 ゼンウが言う。


「静かすぎるな……」


 ヒルダは固唾を飲んで見ていた。


 何も起こらない。


 フースバルの参謀である男──名前は確かタイロン──がヌーナン村を囲う壁に取り付けられた門の前まで愛用していると思われる斧を持って歩いた。


 門の前まで辿り着くと言った。


「え~、ヌーナン村の住人に告ぐぅ……ここに元王女であり国賊のマシュ・ティエール・ライト・シュマールがいることはわかっている」


 タイロンは紙を読みながら、辿々しく大声を張り上げた。


「お、大人しくマシュを差し出せば…わ、我々はお前達の命をほしよう…保証、しよう。だ、だがこのままマシュを差し出さないのであれば、反抗の意思ありとみなし、四大将軍フースバル将軍様のこの軍がよ、容赦しない」


 タイロンの大きな声が虚しく響く。


 ホワイトが言った。


「あれじゃ、威厳も糞もないね?クヒヒ」


 ゼンウが言う。


「何故笑うんだい?彼は一生懸命自分の仕事をしているだけだよ」


 ホワイトだけでなく多くの者がそう思っただろう。しかしタイロン以上に大きな声を出せる者がフースバルの軍にいなかったようだ。


 タイロンは自分でもそう思ったのか、紙から顔を上げて怒鳴った。


「いいからとっとと出てこい!!」


 そう言って門に突進し、飛び蹴りを門に食らわせた。恥をかいたことによる憂さ晴らしも兼ねての蹴りだ。その蹴りは雷が落ちるような大きな音を出したが、門は破られない。


 ──思ったよりも頑丈に造られている……


 タイロンの蹴りにもヌーナン村の住人達は何の反応も見せない。


 タイロンが言った。


「フースバル様ぁ!?これ、もうやっちゃっていいっすよねぇ!?」


 少ししてから本陣に戦旗が掲げられた。戦争の合図だ。それを見てタイロンを始め、ヌーナン村を囲った多くの兵達が声をあげた。


「もうマシュを連れて来たって遅いからな!?この村もろともぐちゃぐちゃにしてやるよ!!」


 戦争が始まる。そう思ったその時、大地を揺るがす振動と地響きが聞こえた。村の東側にある魔の森から聞こえる。


 ──来たか……


 俺がそう思うと、村の東方面を囲っていた兵士達のどよめきが聞こえる。俺達のいる西側からは反対方面である為、何が起きているのかよくわからない。


「ゼンウ?」


 俺はゼンウに声をかけた。そのゼンウは屈伸運動をして、膝を伸ばしてから深く沈み込む。その場で力一杯両足を踏み締め、大地を蹴り、跳躍した。空高く飛んだゼンウは、間もなく落下してくる。その間に俺はもう一度ヌーナン村を見た。騒ぎからして東側で戦闘が起こっている。


 ヌーナン村の北側、南側を囲っている兵達はどうしたものかと混乱していた。タイロンも門の前で「なんだなんだ!?」と右往左往している。


 着地を決めたゼンウが空より見た光景について報告した。


「壁の東方面、魔の森からアーミーアンツの群が兵士に襲いかかっている」

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