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宿屋無双~転生して付与魔法に目覚めた僕は神の御使いとして崇められてしまう~  作者: 中島健一


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第141話 迫る軍勢

〈セラフの父王弟エイブル視点〉


 私は目を覚ました。ここは王都と小都市バーミュラーの間にある都市ルミヴェイルだ。そこの都市庁舎の1室で私は就寝していた。


 以前、ここからバーミュラーへと行軍し、バーリントン辺境伯の対処をした。この都市ルミヴェイルの都市長は私の派閥に属している。


 都市長は我々に宿泊と備蓄していた兵站を分けてくれた。惜しかったのは、ここの兵力は南のバロッサと帝国の戦争に派兵している為に、我が援軍としては機能しない。


 野営をしていた我が軍にインゴベルの兵が接近し、夜襲をしかけてくることはなかった。またここからインゴベルとの再戦をしても構わない。


 だが、この状況は王都より脱出し、ロスベルグへと逃げたインゴベルと同じ轍を踏んだこととなる。


 それが私の面目を潰した。この屈辱は決して拭い去れぬ。


 その間にインゴベルが各都市を上洛じょうらくさせるならばそれでも構わない。マシュさえ手に入ればそれで良い。アイツは妻や娘を捨てることができない。初めから全てを持って生まれた者が、何かを捨てるには自死を選択するような覚悟が必要となる。


 それが私にはできる。だからこそ私が王に相応しい。


 王都に置いてきた妻のサラや息子のハロルドが人質にとられても問題ない。また新たな息子を違う女に生ませれば良いだけのことだ。


 ──ハロルドが死ねば次の息子が生まれるまでセラフ、だったか?あの落とし子を担いでも良い……


 四大属性魔法を所有していないゴミだが、利用することは可能だ。


 そんなことを考えながら徐々に覚醒に近付いてくと、ルミヴェイルの都市庁舎に用意された私の部屋に衛兵が訪れ、伝言する。


「早朝より申し訳ありません。カイトス将軍が、バーミュラーよりお戻りになったそうです」


「わかった。全員を起こせ、会議を開くぞ」


 私はシルクのローブをまとい、髪を整えて都市庁舎の執務室へと向かった。重厚な樫の扉を開けると、書架が壁を埋め、革装の本が静かに並ぶ。窓から差し込む朝陽が、彫刻の施された机を照らし、インクと古紙の香りが漂った。


 既にカイトス、フースバル、それぞれの参謀が執務室におり、私の到着を静かに待っていた。カイトスはバーミュラーよりそのままこの執務室にやって来たのだろう。既に疲れを滲ませている。


 私はカイトスを労う。


「カイトス・リンゼイ、お前の忠義に感謝する」


 私は奥にある作業机を前にして座り、早速カイトスからの報告を述べさせた。


「バーミュラーはまるでエイブル陛下に協力するつもりはないみたいですよ?兵の派遣や兵站等の工面もできないと言われました」


 予想していたことだ。マシュの捜索により、バーミュラーは完全にインゴベル派閥へと鞍替えしていた。


 フースバルの参謀である大男が言う。


「それでカイトス将軍様はおめおめと帰ってきた、というわけで?」


 カイトスは苛立ちながら言った。


「うっせぇなぁ?そうなったのもフースバル将軍様が派遣した500の兵のせいなんだぜ?」


 フースバルは反応する。


「記憶にないな……」


「いやいやマシュの捜索に500の兵を派遣したろ?アイツらがバーミュラーで暴走したらしいぞ?だからその問題を起こしたフースバル将軍様の兵ならば派遣する、ってか返すって言ってる」


 フースバルは「そうだったか」と自分の派遣した兵のことを思い出したようだ。カイトスは続ける。


「だもんで、先の帝国の侵略及びフースバル将軍の兵の暴走によって兵站もギリギリらしくてエイブル陛下の軍には与えられねぇってよ。それと、バーミュラーから衛兵を派遣させてヌーナン村の奴等にマシュを差し出せと命令しても門前払いだったとか」


 私は言った。


「報告はそれだけか?」


「いえ、今帝国軍がバーミュラー付近の国境でこちらに攻撃をしかけようとしているらしく、エイブル陛下の軍がヌーナン村へ進軍をしても、その対応で忙しくなりそうだと言っておりました」


「つまり、都市長ロバート・ザッパは私につくこともなく、インゴベルにつくこともない、と言った立場なのか?」


「おそらくは……あの都市長、帝国との戦争しか見えてないみたいです」


 これは都合が良い。今の段階でザッパがマシュを手にしてしまえば、ザッパは帝国と私達に挟まれてしまう。だからザッパはマシュをヌーナン村に置いておきたい筈である。そこへ我々がマシュを捕らえようとヌーナン村へ行軍すれば後ろからザッパの軍に狙われる可能性もあった。しかし、ヌーナン村にマシュと私の落とし子がいると聞き付けた帝国が行軍の準備をしているとなれば、話は別である。


 ならばここでこの5万弱の軍から1万5千の兵をヌーナン村に向かわせれば良い。残りの兵はここルミヴェイルでマシュを保護しようとやって来るインゴベルの軍を押さえていれば良い。いや、なんなら5千の兵でも十分なくらいだ。


 ──しかし……


 私はカイトスを見た。


 ──こ奴が裏切っている可能性も考慮にいれねばならない……


 私は命令した。


「フースバルの兵と、カイトスの主力の半分、合わせて1万5千をヌーナン村に派遣する。マシュを捕縛した後、1万の兵はバーミュラーに残って、ザッパの兵と共に帝国軍と戦え。残りはここに残ってインゴベルの兵を止める」


 少しの疑問が残っているが、これで良い。


 その疑問とは、何故帝国がマシュと私の落とし子の存在をこれ程早くに知ったのかということだが、バーミュラー方面からただ単に攻めに来ているだけの可能性もある。それよりもなによりも、今はいち早くマシュを捕らえることが先だ。


─────────────────────

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〈帝国四騎士フィリル・グレイス視点〉


 以前は四騎士のトーマス・ウェイドが2万の兵を引き連れ、バーミュラーを攻略しに行ったが王弟エイブルの策略によって失敗したと聞く。今回は前回の反省を生かして倍の4万の兵を引き連れている。神聖国はシュマールとの国境を越えていない辺り、魔の森の勢力を強め、尚且つリグザードとの戦争にいそしんでいることがわかる。


 私はヌーナン村にいるシュマール王国の王女マシュとこの世界大戦を引き起こしたエイブルの落とし子を捕らえに向かう。エイブルの軍がどのくらいの規模でやって来るのかはわからないが、神聖国を裏切ったと思われるリディア・クレイルの妨害にあい、その数を減らすか或いは、リディア・クレイルはリグザードとの戦争によってヌーナン村に注力できない為に、あっさりとエイブルにマシュと落とし子を奪われてしまうかもしれない。その証拠にこの2人の重要な情報が世界中に漏れてしまっている。


 ──ならば我々がリディアが介入して来るまでの時間を稼ぐか……? 


 私は前方を望遠鏡で見た。一度トーマスが攻め込んだシュマール王国の国境警備施設に焦点を合わせる。石壁には亀裂が走り、修復の繋ぎ目が痛々しい。


 既に向こうも我々の軍勢に気がついているだろう。向こうの兵の動きが慌ただしい。


 ──今の内に叩いておくか?


 早ければ明日にでもエイブルの軍がヌーナン村にやって来る可能性がある。だが、インゴベルとの戦いで5万強となった兵を全軍向かわせてくる可能性は低い。多くて2万程度だろう。バーミュラーの兵と合わせて3万、それでもこちらの戦力の方が上だ。障害となるこの施設を破壊し、今の内にこちらに注目させても良い。我々に注意を向けたところを、リディアの介入によって混乱させる。


 ──以前のトーマスと同じ様に……


 しかしこの時、連絡係がやって来た。連絡のなかった四騎士ドウェイン・リグザードに向けて私は連絡係を派遣していたのだ。その連絡係は帝国領と魔の森の間に連なるタイタン山脈の麓からボロボロの帝国兵を発見したと言う。連絡係は続けた。


「リグザード様の兵曰く、大量のモンスターが魔の森で行っていた帝国と神聖国の戦争に介入し、両国共に撤退したとのことです!」


 私はその事実に震えた。リディア・クレイルが勝ったのだ。


「リグザード様の生死は不明!帝国軍はそのまま瓦解したとのことです!」


 何ということだ。私はあの無能なリグザードが生死不明と聞いて思わず笑みを溢しそうになったが、冷静さを保ち、口にする。


「わかった。その兵には温かい食料を出し、丁重に扱え。その報を帝都へと今すぐにでも伝えるのだ」


「ハッ!」


 連絡係はそう言って去っていった。


 ──リディア・クレイルが戦争に勝ったがエイブルの軍と連戦となる……そして勝った方と我々は戦う……


 ほぼほぼ勝ち戦だ。連戦となるリディア・クレイルに私は肩を持ち、正面にあるシュマール王国の国境警備施設を今すぐに襲うことを決心した。

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