第12話 家族会議
〈セラフ視点〉
次の日になり、皆で朝食をとっているとリュカが言った。
「おかわりがほしいです♪︎」
そう。リュカはよく食べるのだ。
僕ら『黒い仔豚亭』のメンバーは食糧難に陥っていた。
朝食を食べ終え、朝の宿屋営業前の時間、僕らは会議をした。ポカンとした表情で自分がこの早朝に開かれた会議の議題に上がっていることに気が付いていないリュカだが、僕らは話し合った。
「どうする?」
「どうします?」
「ん~」
「……」
僕らの会議は速攻で暗礁に乗り上げた。
リュカは言った。
「もしかして、私…食べすぎですか?」
ウルウルと瞳を濡らしながら言うリュカに、デイヴィッドさんが言った。
「いやいや、リュカは悪くないんだよ!なぁ!?」
僕らは頷く。そんな反応を気にしてかリュカは提案する。
「あ、あの!前みたいにお乳を搾って頂ければお役に立てるかもしれないです!」
僕とデイヴィッドさんの顔が固まった。それを見てかローラさんはデイヴィッドさんの頭を、僕の頭はアビゲイルが叩く。
「あいてっ!」
「なんでっ!」
リュカは隣にいる僕にその大きな胸を寄せながら言った。
「セラフ様~、前みたいに搾ってくださいよぉ」
確かに僕はリュカのお乳を搾る役割を担当していたが、今のリュカの乳を搾るなんて想像ができなかった。絵面を想像するだけで鼻血が出そうだった。そんな僕の頭をもう一度アビゲイルが叩いた。
「いたっ!」
このままだと後何発叩かれるかわからないため、僕は話を反らした。
「昨日の醤油を売りに出しても良いと思うんだけど……」
デイヴィッドさんが僕の案に賛同した。
「そりゃあ良い!あれは間違いなく高く売れるぞ!」
それについてローラさんが意見を述べる。
「確かにそれは良い案だと思うけれど、買い手を見付けるのに時間がかかりそうよね……商人の知り合いはいるにはいるけれど、彼等に良いように扱われちまう未来も見えるというか……」
確かに。僕もそう思った。母さんが意見を述べた。
「商人にこれを売ってほしいとお願いするよりかは、商人が醤油に目を付けてくれるのを待った方が有利な交渉ができるかもしれませんね」
交渉ごとは信用が一番と聞くが、彼等の口の上手さ、狡猾さは僕らでは太刀打ちができない。だからこそ僕は別の提案をした。
「やっぱり、リュカに狩りをしてもらうのが一番良いと思うんだけど……」
その提案をアビゲイルと母さんが棄却する。
「リュカに危険なことさせちゃダメ!」
「セラフ?貴方そんなこと言って自分も魔の森へ行こうとしてるんでしょ?」
母さんに睨まれた。
僕は言う。
「じゃ、じゃあ今から皆でリュカの実力を見ようよ!なんかあったらデイヴィッドさんもいるんだし……」
僕の言葉にデイヴィッドさんが腕を回し始める。
「俺も久し振りに狩りをしてみても良いか……」
デイヴィッドさんがそう言うと、今度はローラさんが難色を示す。片足を失ったデイヴィッドさんを心配している様子だった。
それに気が付いたデイヴィッドさんは言った。
「オーク程度ならこの足でも楽勝よ!それにセラフの付与魔法もあるしよ!」
リュカを除いた女性陣全員が難色を示すが、このまま良い案が浮かばないせいか、皆がその重い腰を上げ、これから僕の提案通り、狩りに出掛けて危険性がないかを確かめに行くことになった。リュカはというと、「頑張ります!」と言って座りながらシュッ、シュッとシャドーボクシングのようなことをしていた。