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第11話 醤油を使ったレシピ

〈セラフ視点〉


「焼き鳥のタレを1番に2本お願いします!」

「焼き鳥のタレ2本と塩1本、5番テーブルに入ります!」

「2番に焼き鳥のタレ3本とエールのおかわり入ります」

「はいよ~!」


 鳥の肉を串に刺して、炭火で焼いた焼き鳥がこの日のメニューに新しく加わった。


 お客さん達は喜んでそれを食べてはエールのお代わりをする。醤油と白ワインと砂糖を煮詰めて作ったタレに串に刺さった鶏肉をくぐらせて香ばしく焼く。その香りが付与された煙が店内を満たしていた。


 僕にいつの日か銀貨をくれた冒険者のアルベールさんは串に刺さった焼き鳥を歯で押さえながら串をひく。口の中に残った肉を食べながら僕に尋ねた。


「これはうめぇなセラフ!!」


 僕の名前を覚えてくれた。


「美味しいでしょ?」


 僕はアルベールさんのパーティーメンバーにも目を合わせた。とんがり帽子を被ったセツナさんが僕に言った。


「私達、数多くの宿に泊まってきたけれどここはとても素晴らしいところだと思うわ」


「ありがとうございます!」


 セツナさんは鶏肉をフォークで押さえながら串を引いて、お皿に皆が食べられるように鶏肉をばらした。アルベールさんは取り分けられた鶏肉には目もくれず自分専用の焼き鳥串を両手に持って食べる。


「そうそう、だから俺達はこの魔の森のクエストがある度に、そのクエストを率先してこなしてるってわけよ!」


 セツナさんが落ち着いた口調でアルベールさんの言葉に返した。


「全部が全部、この宿屋の為ってわけじゃないけれど、確かに皆ここが好きなのは確かね」


 同じパーティーメンバーであるフルプレートを着た男性とシーフのような格好をしている男性はセツナさんの言葉に頷いた。 


「ただよ……」


 アルベールさんが串に残った最後の鶏肉を(くわ)えながら言う。


「最近、この魔の森がキナ臭くてよ……」


「キナ臭い?」


「あぁ、モンスターの動きがなんだかいつもとちげぇんだわ」


 アルベールさんのパーティーメンバーの全員が頷く。確かにリュカがホブゴブリンにさらわれたことも何か関係があるのだろう。


「この前なんかホブゴブリンのパーティーと連続で出くわしてよぉ……俺らがCランク冒険者っつっても連続でD+のモンスターのパーティー相手にすんのは流石に骨が折れんだわ」


 確かにホブゴブリンのパーティーは面倒くさそうだ。リュカを救うことができたのだって一対一でホブゴブリンと戦闘できたからであって、集団でかかってこられたらと思うとどう対処して良いのかわからない。


 それより僕は彼等の冒険者ランクを知って驚いた。冒険者はA~Gランクまである。Aランク冒険者はおとぎ話に出てくる女神に力を与えられた12英傑と同じような強さを持つと言われている。そんな英傑と呼ばれる類いの冒険者である為、その数も少なく、世界に2人しかいない。つまりCランクというのはもう実質Bランクと言っても過言ではないのだ。


「みなさんCランク冒険者だったんですね!」


「あれ?言ってなかったっけ?」


「聞いてないですよ!凄いです!」


「まあまあ、それ程でもねぇよ」


 アルベールさんが照れながら答える。そんな凄い冒険者達がこの店の常連になってくれていることに僕は誇らしく思った。


 すると、セツナさんが言った。


「あそこにいるデイヴィッド・リーンバーンの方が凄いわよ?」


「え?どういうことですか?」


 僕の質問にセツナさんが答えた。


「彼は元Bランク冒険者。因みに奥さんは私達と同じ元Cランク冒険者」


「え?そうだったんですか!?」


 僕の反応にアルベールさんが言った。


「知らなかったのかよ!剛力のデイヴィッドって言えば、今でも有名だぞ?まあそのデイヴィッドがこの宿屋にいるんなら、魔の森で何か起こっても問題ないかもしれねぇけどな…セラフも気を付けとけよ?」


 うん、と僕は返事をして仕事に戻った。


 今日の営業も無事終了し、僕らは片付けをしていた。


 すると、今晩の売り上げを計算していたローラさんが悩ましい声を上げる。


「ん~……」


 近くで床を掃いていたアビゲイルが尋ねた。


「どうしたのお母さん?」


 ローラさんが頬に手を当てて考えながら言った。


「売り上げは良いんだけどねぇ…最近食費が……」


 僕ももう10歳となり、食べ盛りなのは間違いない。しかし問題は僕ではなくリュカなのだ。リュカはとても良い子なのだが、とてもよく食べるのだ。



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