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冷たい男

「彼女はどうだ」

「今のところ、つつがなくお過ごしいただいているかと」

「そうか。なにか要望があれば、お前の判断に任せる。

予算が足りなければ相談してくれ」

「かしこまりました」


1ヶ月前、彼女を初めて見たときには驚いた。

政略結婚の相手が、まさかあんな子どもだとは思わなかったのだ。

17歳と聞いていたが、年齢を詐称しているのか、それとも俺との結婚が嫌で影武者を寄越したのか…。

どちらにしても、大人の都合に巻き込まれた可哀想な娘だ。


「ところで坊ちゃま」

「坊ちゃまはやめろ」

「……」

「やめろ。良い年して子犬のような目で見つめてくるな」

「じいやにとって、坊ちゃまは坊ちゃまなのでございます…」


家令のローガンは、元は俺の教育係だった男だ。

仕事は出来るし、ローガン以上に信頼できる男はいない、が、息子夫婦に子どもがいないからか、俺のことを孫のように扱ってくる。

とっくに成人した男にとって、この扱いはなかなかに辛いものがあり、せめて呼び方は変えてくれと思うのだが、いつもこの子犬のような顔に負けるのだ…。

他の人間がいる場では「アルフォンス様」と呼ぶので、責めきれない部分である。


「で、どうした」

「はい。恐れながら、坊ちゃまの奥様への態度はいかがなものかと」

「は?」

「我々は坊ちゃまに慣れておりますから、言ってしまえば坊ちゃまのプロですから、今のままの坊ちゃまでのびのびとお過ごしいただきたいと考えておりますが…」


この男は何を言っているのだろうか。


「坊ちゃまの心根をまだご存じない、それも年下の女性からすると、坊ちゃまの態度はあまりにも…

冷たい!!!!」

「………そうか…?」

「そうでございます!

なんですか朝食の席での会話は!」

「なぜ先ほどの会話をローガンが知っているんだ?」

「そんなことは問題ではございません!」


使用人から報告が上がったのか?

ローガンに報告するほどの内容を話した覚えはないが。


「「必要ない」という言葉だけでは、切り捨てられように感じるでしょう。

理由を説明されなかったことも坊ちゃまの思いやりかと存じますが、言葉と温度が足りません!」


こうなったローガンを止めるのは難しい。

どうやら俺に非があるようだし、聞きに徹してローガンの言う問題点を理解することにしよう。


「一言で伝えるとしても、「気にしなくて大丈夫だ」で良いじゃありませんか。

うちの坊ちゃまはなぜこんなにも口下手に〜〜〜〜〜」







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