プランC
「必要ない」
いや、そんなわけがないだろう、と思わず口に出そうになった。
危ない危ない。
「必要ない…ですか…」
「ああ」
「ですが、王族の一員としての義務もあるのでは…」
「招かれた式典にだけ参加すれば良い」
「式典後の晩餐会などは…」
「参加する必要はないと言っている」
だめだ。
とりつく島もない。
まさかプランC、社交界での情報収集すら前途多難だなんて…。
王弟殿下であり、公爵家当主である旦那様が、まさか社交活動を一切しないだなんて思わなかった。
そんなことあるか?
もしや、私がスパイであることに気づき情報を与えないようにしているのか…?!
いやそんなバカな。
まだなにも行動してないし、気づかれるわけがない。
旦那様は一体なにを考えているのか…。
嫁いで来てから早一ヶ月が経った。
公爵夫人たるもの、家の管理に社交活動に忙しくなるだろうと考えていたのだが、そんなことは全くなかった。
家の管理は旦那様が完璧に行っていて、私は書類に目を通す程度だし、社交活動に関しては招待状が一通も来ないのである。
このままだとプランCすら進まないと思い、私がお茶会を主催することを提案した結果が現状だ。
やることが無さすぎて暇疲れしてきた。
プランの練り直しが必要だな。
「先に失礼する」
あれこれ考えていると、旦那様が朝食を終え、席を立った。
結婚式の翌日以降、朝食だけは毎朝一緒に食べているが、挨拶以外の会話は少ない。
話を振ってもあまり続かないし、そもそも旦那様は食べるスピードが早いのだ。
食べるのが早くても、完璧なテーブルマナーはさすが王族といったところだろう。
旦那様が席を立ってから、ほとんど手を付けていない自分の朝食をゆっくり食べるのが日常になってきた。
「美味しかったです。
ご馳走さまでした」
控えていたシェフに告げ、自分も席を立つ。
元皇族として、ごく近しいものにしか自分の食の好みを知られないようにする習慣がついているのだが、この1ヶ月で私の食の好みは完全に把握されたようだった。
さすが王族の専属シェフである。
お世辞ではなく、毎日ご飯が美味しくて幸せだ。
自室に戻り、やることは決めていた。
「メイ、上等な便箋とペン、辞書を用意してちょうだい」




