嫁入りの理由
「箱入り皇女」である私がこの国に嫁いできた理由は、戦争を回避するためだ。
近年、ここグランビア王国では、鉄鉱や穀物の輸入量が増えている。
表向きは大規模な農地開拓のためとされているが、食料自給率の低くないこの国で、国家規模の農地開拓は不自然だ。
しかし、戦争準備をしているかどうかの確証はない。
戦争準備だとしても、内紛なのか、我が国も関係するのか…
それを調べるため、この政略結婚は成立した。
政治のせの字も知らない、純真無垢な「箱入り皇女」であれば、警戒心を持たれることなく、情報収集もしやすいだろう、ということで、こうして猫を被っている。
とはいえ、旦那様が碌でもない人間であったなら、その時は夫婦の力関係というものを夜通し語り合うつもりだったが…
その必要はなさそうで安心した。
「前情報があまりなかったから身構えていたけれど、良い人そうに見えるわ。
加えてあの見た目、なぜ評判にならなかったのかしら。」
オムレツをフォークで口に運びながら、メイに尋ねた。
私の旦那様、アルフォンス殿下はグランビア国王の弟にあたる。
王族にも関わらず人前に出ることが少ないらしく、祖国で評判を聞いたことはなかった。
「奥様と同じかもしれませんよ。
格別な美しさは隠した方が良いこともありますから」
「…たしかにそうね」
私の場合は隠した結果、間違った評判が広がったわけだが。
まあ、今回その評判が役に立っているから良しとしよう。
オムレツ美味しい。
「屋敷内はどう?」
「良い雰囲気ですよ。
心配していた差別も今のところありません」
「そう、やりづらいわね…」
「ええ。少しくらい対立があった方が、情報は得やすいのですがね」
「平和な空間で物騒な話題は出ないものね。
仕方がないわ、プランCでいきましょう」
「かしこまりました」




