一輪の花を遺し空に旅立った君は。
太陽が眩しく輝いている。でも僕はそれよりも眩しいものを君にもらった。
君と出会ったのは青と白のコントラストがやけにはっきりした空の下だった。あの頃交通事故で足を怪我し、頑張ってきた部活の大会にも出られなくなり、病院の中庭でぼんやりと空を眺めていたら君が突然覗き込んできたよね。びっくりして顔をいきおいよくあげちゃって思いっきりおでこをぶつけて、君は大笑いしたっけ。本当に面白そうに笑う君を見てたら僕もなんかおかしくなってきちゃって久しぶりに笑顔がこぼれた。その後、ベンチに並んで座って色んな話をした。君の病気の話、僕の部活の話、好きな本の話、面白い先生の話、いろんなことを話したね。でもそんな話の内容より君の弾けるような笑みが頭の中から離れなくってじっと見つめてたら少し照れたように頬を赤く染めながら視線の行き場を探すように空を見た。二人で夕焼けを瞳に映しながらしばらく無言で空を見ていたよね。
「もう、病室戻らなきゃ。あまり外に長くいないように言われてるんだ」
「えっ、、、また、会える?」
「もちろん!またね!」
唐突に病室に戻ろうとした君にまた会いたくて慌ててまた会えるか聞いちゃって。言った途端恥ずかしくなってうつむいた僕に安心させるように淡い、優しい笑顔を向けてくれて。
僕は、きっとその時、君に恋した。
君はタタタッとリズムよく小走りになりながらまたねっ!て手を振り、僕らは別れた。
その後も僕たちは中庭で度々過ごした。君はあいも変わらず眩しい笑顔を僕に向けてくれて僕はその度どんどん恋に沈んでいった。そして、君と出会ってから数カ月後、僕は退院した。
そのことを君に伝えたとき、君は初めて泣いた。
「退院、おめでとう。良かったね、、、ぐずっぐすっ」
「えっと、、、だいじょうぶ?」
「だい゛じょう゛ぶ、お゛めでどう゛ぅ゛ぅ゛」
退院を伝えた途端に泣き出した君にどうすればいいかわからず、ちょっとズレたような返答をしたのはいい思い出だ。
退院したあとは部活や学校生活もあり、なかなか君に会いに行くことができなかった。数カ月ぶりに君に会いに行ったとき、君はもういなかった。空へ旅立った後だった。必死に嗚咽をこらえて中庭に出るとたくさんのことを話したベンチに萎れかけの1輪の黄色いツワブキの花が手紙を結び付けられてそっとおいてあった。手紙の内容はいかにも君らしい優しい、明るい内容だった。
君へ
ごめんね、結局最後まで名前聞きそびれちゃって名前がわからなかったんだ。でも君ならわかってくれると思って。今までありがとう。本当は直接言いたかったんだけど、君が好きです。
P.S
ツワブキの花言葉ってね、”愛よよみがえれ”なんだよ。
ああ、最後まで君は君だった。この手紙を読んだ後、僕は初めて神に祈った。
神よ、もし本当にいるのなら、どうか、どうか彼女に、、、自分の気持ちを伝えさせてくれ、、、!
その時、ツワブキの花がほどけるように消え、君が戻ってきてくれた、、、!!
「君、、、?また、会えた、、、?」
「久しぶり。ごめんね、何も言えないまま逝っちゃって」
「好きだ、、、!やっと、伝えられた、、、!」
「私もだよ。ああ、それとわたしの名前はるりな」
「僕の名前は載貴だ。」
「ありがとう、載貴くん。私に会いたい、と願ってくれて」
「ずっと、ずっと会いたかった、、、しばらく来れなくて悪かった」
「私も。ありがとう。あと、、、ごめんね」
「どうして謝るんだ?」
君はその問には答えずただ、眉を下げながら悲しそうに淡く微笑み、僕は彼女が消えかかっていることに気づいた。
「消えてる、、、?!」
「ごめんね。あまり長くこっちにはいられないんだ。ね、最後にお願いあるんだけど、、、」
「何だ?何でも叶える!だから、だから、消えないでくれ、、、!」
「ごめんね、消えるのは私達の定めなんだ。でも君が覚えていてくれれば、君の中には残るから、、、!お願い、聞いてくれる?」
「もちろんだ、、、!絶対に忘れるものか、、、!」
「ありがとう。載貴、大好きだよ」
「僕もだ、、、るりな、大好きだ、、、!」
君はそれを最後に出会ったときと同じような眩しい笑顔を浮かべながら消えてしまった。
萎れたツワブキの花と手紙が風に吹かれて音もたてずにベンチから落ちた。
のぞです!
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