セリス、9歳の誕生日会。その3
公爵邸に侵入しようと目論む大市場討伐隊に侍女のミミリーが立ち塞がる!
「ええい!全員止まれ!そこを動くなあーーーーー!!!
お前達はアレか?アンデットか何かなのかぁーーーーー?!」
「「「「ええええええーーーーーーー?!?!」」」」
今の自分達の姿を全く理解していないゾンビ共・・・
ゾンビとまで言わんが動くと服から土埃や枯れ草が舞っている状態である。
人によってはズボンの尻に土の塊が付いている始末だ。
これは芝生の上で寝っ転がるから悪い。そりゃ普通に怒られますわ。
スタスタスタ!ガチャ!
「何事ですかミミリー?男爵家の令嬢たる淑女が大声なんか出して。はしたない!」
ミミリーの怒号を聞き付けカターニア公爵家の筆頭侍女さんが玄関から颯爽と出て来てセリス一行の姿を見て・・・「セリスお嬢様達を邸内に入れてはいけません!」と後から出て来た侍女達とメイドさん達に指示を出して玄関に人のバリケードを築きましたよ!
ちなみにこのセリスやコーバ公爵と同じハニーブロンドのパツキン(若干白髪混じり)を持つ女性は筆頭侍女のイレーヌさん(62歳)である。
セリスやミミリーやフェナのマナーの先生でもあったりする。
そして先王だったカイル尊王の妹さんでコーバ公爵のお母さんである・・・要するに元はバリバリのお姫様でセリスの実のお婆様なんだね。
この機会にセリスに近い親戚について詳しく説明をすると祖父の前カターニア公爵は病気でセリスが産まれる前に亡くなっているが父のコーバ公爵には兄のトリスタン伯爵と実質公爵家を取り仕切っている弟のバルトリト伯爵の他には3人の妹さんがいる。
6人の子育てをイレーヌさんは頑張りました。
何で長男のトリスタン伯爵がカターニア公爵位を継がなかったかは社交界での謎である。
コーバ公爵と仲が悪いかと聞かれると今でも普通に公爵邸に遊びに来てコーバ公爵と酒を飲んだりチェスをしたりと遊んでいるので後継者問題とかが有った訳でもなく恐らくは本人が公爵位を辞退したと思われる。
真相はチェスの世界の不動の王者エヴァリスト宰相に勝つ為に弟のコーバに公爵位を押し付けただけなんだけどね。
その甲斐もあり現在はチェスのプロの上位ランカーで完全に自立して活動しているので親戚一同誰も文句を言えない。
そしてチェスに集中する為に独身も貫いており(愛妾はいます)子供がいないので弟のバルトリト伯爵に劣らない姪(セリス&ステファニー&クリスティーナ)バカだったりもする。
趣味に生きる独身貴族って所だね。
話しをイレーヌ女史に戻して前カターニア公爵が亡くなったのを機会に修道院には入らないで王侯貴族としての身分の全て捨てて平民となり突如としてカターニア公爵家で侍女として働き出した変わり者である。
最近入った若い使用人達もも筆頭侍女のイレーヌさんが前公爵夫人で元王女だと知らない程に撤退的に侍女として振る舞っているのだ。
息子のコーバ公爵も義理の娘のバーバラ夫人も母親が侍女をする事に対しては「何で?!」とは内心思ってはいるが多分言っても聞かないから完全に諦めている。
セリス曰く、「お婆様は・・・その・・・根っからのコスプレ好きだから・・・触れないで放っておいて下さい」との事。
つまり旦那様が亡くなり自由になったイレーヌさんは王侯貴族から引退して大好きなコスプレ・・・大絶賛侍女プレイ中なのだ。
セリスのコスプレ好きやトリスタン伯爵の趣味第一な所は言うまでもなくイレーヌさんの影響である。
セリスや妹達が「お婆様」と呼ぶと「先生と呼びなさい」と怒られる。
この先生がマナーの先生なのかコスプレの先生なのかは議論の余地があるだろう。
こんな感じに親兄弟に変わり者が多いせいで娘セリスの奇行もコーバ公爵的には大した事に思えないのだ。
それってただの「錯覚」ですよ?娘さん公爵令嬢としてヤバいっすよ?
話しを本題に戻して寝坊をかまして全力疾走で公爵邸まで走って帰って来た大市場討伐隊は疲れて死にそうになっている。
「ゴホー!ゲホゲホゲホ!」
「きゃああ?!誰か2人に水を!お嬢様!大丈夫ですか?!」
「フェナ・・・アンタ大丈夫なの?」
侍女達がセリスとフェナの背中を摩っている・・・
「だ・・・大丈・・・ぶへぇ!ゴホゴホゴホゴホ!!うぇええ!ゴホゴホゴホゴホ!」
「フェナ!きったない!うぇえええ!ゴホゴホ!」
大市場から公爵邸までの3kmほどを全力疾走したセリスとフェナは思い切り咳き込んで死にそうになっている・・・
何で肩車をされて走っていないセリスまで死にそうになる?と言われると、「騎乗スキル」をフルで使ってフェナに魔力を送り続けてたモンだから魔力欠乏症になりかけているからだ。
完全なる自業自得である。
「こ・・・ここまでキツイ戦いになると思ってませんでした・・・」
「うう・・・涙が止まらん・・・」
道中、夕方から始まる本祭へと向かう人の群れをかわし逆走しながら全力で走る事がこんなに大変だと思っておらずにそろそろ死んでしまいそうなフェナ&セリス。
「アンタ達・・・ハッキリ言って最悪です・・・」
これから王族も招待してのお誕生日会があるのに主役の髪はボロボロで汗塗れの埃塗れ・・・挙げ句の果ては咳き込んでいるので目元には涙、口元には涎が・・・
つまる所、令嬢とは思えない程とぉーっても汚れ切っている!
本日のお誕生日会の主役とその主人の後ろに立つはずの護衛騎士のボロ雑巾姿にドン引きしているミミリー。
そして・・・ギラァ!「ひいいいい?!」ミミリーの視線の先にはセリスとフェナより更に汚れた料理人隊と執事隊の面々。
コイツらをこのまま掃除を終えた屋敷に入れる訳には行かない・・・
「いやあ?!もおおお!!!料理長きったなぁい!」
16歳の新人メイドさんに「おじさん汚い!」と言われてショックを受ける料理長さん。
「絶対にそのまま入っちゃダメだからね?!」
「もうお客様を迎える為の掃除終わってるんだからね!」
侍女&メイドにもうフルボッコにされる料理人と執事達。
「はい・・・すみません」
こんな感じに「一体何事?!」とワラワラと集まって来た侍女&メイドに叱られて邸内にすら入れずに玄関前で体育座りをして待機している料理人達と執事達。
そして、「全員!勝手口からお風呂へ直行!」ミミリーから「とっとと風呂に入れ!」との命令が下された。
「え?でも俺らはこれから調理が・・・」
「アホかぁ!王族に汗や土埃が入った料理を食わせるつもりかぁ!
料理なら残ってた人達がちゃんと準備してるわよ!」
「あの・・・でも俺・・・料理長・・・一応指示を・・・」
「問答無用!!おらぁ!さっさと脱げ!どいつもこいつも全員洗ってやるから!」
料理人と執事達は、全員もれなく汗だく埃まみれだったので侍女隊に風呂にぶち込まれて丸洗いされるのだ。
「いやぁあー?!自分で!自分で洗いますぅ?!」ポイポイポイポイポイ
玄関先でドンドンと服を剥かれる野郎共・・・こう言う時の女は怖いのだ。
「うるさい!アンタ達はいつも「鴉の行水」で終わるでしょう?!」
「ああ!いやあああん!あーれー?!ソコはダメですぅ!」
「やめ?!フェナ助けてーーーー!!」ズボンを押さえながらクロード君が恋人のフェナに助けを求めるも・・・「あ・・・無理です。私もこれから皆んなと同じ運命を辿りますから・・・お先にどうぞ」侍女達の剣幕を見てフェナはこれから訪れる己の運命を達観していた・・・
「そんなぁ?!ああ?!」遂にズボンを剥かれて玄関先でパンイチになったクロード君。
お巡りさーん!ここに変態がいますよー!
汚れた服は剥ぎ取られてメイドさん達にタライにブチ込まれ、マッパにされて侍女隊にズルズルと風呂場に引き摺られて行く料理人と執事達・・・
女性達に身体を洗われるなんて良くね?と思われるかも知れないが実際にやられると恥ずかしいなんてレベルじゃないのだ!
しかも優しく洗われるのでなく全裸にされて頭からお湯とシャンプーをぶっかけられて鬼の形相をした複数人からブラシでゴシゴシされるのだ。
そう!彼女達にとってこれは仕事!正しくエントランスの彫像をゴシゴシと掃除をするがの如く、そこにはエッチぃシチュエーションなど無い!
そして・・・「「「あーーーーーーー??????」」」と風呂場から聞こえる野太い悲鳴。
この日、野郎共には「ブラシプレイ」の新しい扉が開かれたのだった・・・
さすがに玉のお肌の令嬢セリスは野郎達の様にブラシでゴシゴシ丸洗いはされずにミミリーの手とスポンジで丸洗いされていた。
しかしコレはコレでくすぐったい!
「あーん!くすぐったい!ミミリー!やめ!きゃあん?!」
「何であんた達は毎回毎回、こんなに汚れて帰って来るのよ!」グワシグワシ!
「ひゃああああ?!助けてフェナー?!」
「だから無理ですって・・・私のこの有様を見てから言って下さいよ~」
セリスの横にはミミリーに頭からシャンプーを掛けられたまま全裸正座で丸洗いの順番を待っているフェナ。
フェナのつけ置き洗いである。
「はい!お嬢様の下ごしらえ終わり!」荒掃除をされて風呂桶に沈められるセリス。
「あふ~ん」
元日本人のセリスはお湯に浸けられると行動が停止して大人しくなる性質がある。
「大人しく待ってなさい!はい!次フェナ!」ワシャワシャとスポンジを泡立てるミミリー。
「お手柔らかにーーー?!?!ああーーーん?!
次はフェナがミミリーにやられている。最初はいきなりお胸からだ!モミモミモミモミグワシグワシ!!
「ああ~ん、いやあーんん!!あっはーん」
「やかましい!艶艶な声上げんな!変な気持ちになる!
それにあんた少し太ったよ!婚活女なんだから少しは腹回りにも気を使え!」
とどめ!とばかりに、お股をグワシグワシ!!
「あっはぁーん!」
「やかましい!」ベシッとミミリーに頭を叩かれたフェナだった。
「フェナの下ごしらえ終わり!次!お嬢様の仕上げ!」
「ああーん!ミミリーがマジ容赦ない!」バッシャバシャバシャグワシグワシ!
泡でモコモコしてる浴槽の中で身体を今度は垢取りタオルで擦られて悲鳴を上げるセリス。
「当たり前でしょ?!もう時間が無いんだから!」そしてお股をグワシグワシ!!
「ああー!そこはらめー!」
「やかましい!大人しく洗われろ!黙ってれば天使の様な金髪美少女なのに勿体無いわ!」
そしてお胸をグワシグワシ!!
「うっふーーーん?!」
ミミリーはカターニア公爵家の親戚筋の男爵家の令嬢で行儀見習いと花嫁修行を兼ねて王立学校を飛び級で卒業して15歳の頃からセリスの専属侍女として仕えている。
地道にメチャクチャ頭が良い令嬢なのだ。
そしてこの3年間で「セリスお嬢様やフェナを甘やかすとマジでヤバい」と言う事が判明してからはセリスとフェナ対して情け容赦がなくなった。
本当なら2年間だけの研修だったのだが持ち前の面倒見の良さから期間を超えてもセリスとフェナの面倒を見ている。
ちなみにもう少しで同じカターニア公爵家で催事を取り仕切る有能文官の男爵閣下(23歳)と職場内結婚をして男爵夫人になります。
つーか、ミミリーってフェナより1つ歳下なんだけどね・・・
30分後、グッタリと浴槽に浸かるペッカペカになった公爵令嬢が居た。
更に10分後にはペッカペカになった護衛女性騎士がそこに居た。
料理人達と執事達のその後は・・・・・・・・・知らん。
地獄のお風呂から上がると直ぐに3人の侍女に集られて本番のドレスの着付けが始まる。
とは言えコルセットが不用のお子様なので直ぐにドレスの装着は直ぐに終わる。
「どこもかしこもペッタンコだから着替えが楽ちんね!」
セリスはドレスを翻して鏡の前で嬉しそうにクルクルと回る・・・
こう言う所はお嬢様っぽいね・・・それも喋らなければだけど。
「ペッタンコ」なんて単語久しぶりに聞いたわ。
日頃から母バーバラの着替えの様子を見ていて「コルセットがおっかねぇ」と内心ビクビクしていたのだ。
「でも・・・お嬢様って骨格的にお胸が凄く大きくなりそうなんですね~」
数多の女性の着付けを行なって来た年嵩の侍女が怖い事を言う。
「え~?動くのに邪魔だからお胸なんて要らないよ?適度に大きくなってね~」胸をスリスリするセリス。
結論から言うと、この年嵩の侍女の予言は大当たりしてセリスのお胸はめっちゃ大きくなりコルセットでギッチギチに絞められて毎日悲鳴を上げるハメとなる
そして父と母に紆余曲折の後に完成したドレス姿を御披露目。
侍女&メイドさん達は頑張りました。
「おお!可愛いよセリス。
さすが我娘だね。どこかの国のお姫様の様だ」
コーバ公爵は冗談でそんな事を言っているが10年程前の「国王ヤニックが行方不明?!事件」の時にコーバがその気になって国王になっていたら「ガチお姫様セリス」が爆誕していたのだがな。
「「おねいさま!きれい!」」
妹の双子、ステファニー&クリスティーナも可愛いらしいドレスに身を包んでお姉様セリスに抱きつく。
「さあセリス、こちらにいらっしゃい」
セリスは母のバーバラ夫人に促されてお誕生日席に座り料理を見た瞬間に白目剥いて気絶しそうになった。
《予定よりもメインが3品も多い!しかもこれキャビアじゃんかこれ!》
「ぐぬぬぬ」親の仇を見る目でキャビアを睨むセリス・・・
セリスは別にキャビアその物が嫌いな訳では無い。憎いのはそのお値段の方だ。
《キャビアよ・・・お前は許さん!お前はしょっぱいだけで大して美味くも無いのに無駄に高えんだよ!なんなら「とびっこ」の方が絶対に美味しい!》
不倶戴天の敵としてキャビアを改めて敵認定するセリスだった。
「とびっこ」はその名の如く「飛魚」の卵だがセリスが思っているほど安くはない。
《そもそもキャビアは買うモンじゃない!獲るモノだ!》
いやそんな事言われましてもねー。
余談になるがセリスは前世の時に参加した「日高漁師さん達の釣り大会」で見事に「チョウザメ」を釣り上げて周囲の漁師をビビらせた事があった。
「何?この魚?サメに似てるけどサメじゃないよね?」
さすがは漁師さん。初見でチョウザメがサメ類でない事を見抜く。
チョウザメはチョウザメ類でシーラカンスと同じ古代魚に分類される。
どちらかと言うとサメがチョウザメに似ていると言った方が正解かも?
「うわ?!これ「チョウザメ」だぜ?・・・日高地方にも居たんだな?」
日本のチョウザメは北海道の石狩地方限定で昭和初期頃までは釣れたそうです。
「コイツの卵が「キャビア」になるんだぜ?」
「へー?でも魚拓も取ったからリリース!」速攻でチョウザメをリリースする八千代さん。
「ああ!勿体ねえ!上手く養殖出来たら大儲け出来たかも?」
「漁師が絶滅危惧種なんか釣り上げたら怒られるわよ?
それにキャビアって別に美味しくも無いじゃん?」
八千代は話しのタネに高級キャビアを買って食った事があったが「なんか微妙・・・」と低評価だった。
常に獲れたて新鮮な海産物を食ってる漁師さん達にはとりわけ加工食品のキャビアは別に美味いブツでは無いらしい。
「・・・」
出てモンは食わんと勿体ないとキャビアを食らうセリスだが、やっぱり魔法世界のキャビアの味も微妙だった。
しかし他の料理は美味く優雅な仕草で料理を貪り食うセリス。
とは言えセリスは大食いではないので直ぐにお腹がパンパンになる。
《クッ・・・何て情けない胃袋なんだ》
食い気は人一倍有るのだが胃袋が追いつかないのだ。
そして口も小さいのでリスの様にチマチマとしか食べられない。
前に増えと街に出た際に和食チェーン「しまず」で前世の様に丼飯をかきこもうと挑戦したらお口の容量オーバーになり涙目ハムスターになってフェナに大爆笑された。
大量に食えないモンはしゃーないので少量ずつチマチマと食べる。
それが外からは「とても優雅で綺麗な食べ方」と映るらしく王妃ファニーもバーバラ夫人もウンウンと満足気な表情だ。
セリスの隣りに座るラーナ王女殿下もセリスに負けず劣らず優雅な所作で料理を食べている。
カターニア公爵家では凄く珍しい事に王侯貴族らしいとても優雅で静かな誕生日会となったのだった。
セリスはやれば出来る子なのだ。断固としてやらないだけで・・・
「あ・・・そう言えばセリス様?」不意に王女ラーナが何かを思い出す。
「何でしょうかラーナ殿下?」
「セリス様が「日本からの転生者」だと言う事は秘密にしておいた方が良いのでしょうか?」
突然「日本語」でセリスに質問をして来るラーナ。
「!!!!んぐぅ?!?!」
危うく卵スープを気管に詰まらせて「ブフォオオオオオ!!」と吹き出しそうになった所を寸前で堪えるセリス。
「んんんんんん?!?!コホコホコホ・・・ゴクン」
何とかギリギリ令嬢として最悪の結果を回避する。
「あら?ごめんなさい。タイミングが悪かったですね」クスクスと笑うラーナ。
「なななななな???」
「なぜセリス様が日本からの転生者だと知っているかは・・・秘密です」
人差し指を唇に当ててニコリと微笑むラーナ。
別に全部話しても良いが何か面白そうな事になりそうなので秘密にする事にしたのだ。
「なななななな???」
「セリス様の秘密だけ私が知っているのは不公平なので教えてしまいますが、「私も日本からの転生者」なんですよ」
「?!?!?!?!」
「ただ・・・多分違う時代に生きていたので話しが合わないかも知れませんが同じ元日本人同士改めて仲良くして下さいね」
「うわ~?そうなんですね?・・・あの・・・因みにいつの時代の産まれですか?」
「私は平成15年生まれで19歳の時に雪崩事故に巻き込まれて死んでしまいこの世界に転生しました」
「あ・・・そうなんですね。私は「大正3年生まれで平成25年」に老衰で死んじゃいました」」
「むぐぅううううう?!?!」
想像とは全然違う回答に今度はラーナがローストポークを喉を詰まらせそうになる。
「いやコイツ何歳まで生きたん?」と少し混乱するラーナ・・・正解は99歳っすね。
「コホコホコホ・・・ま・・・まさか大正初期から平成まで生きてたなんて・・・長生きしましたねぇ」
「生涯通して健康でしたから」ここはドヤ顔のセリス。
「おばあちゃんって呼んでも良いですか?」
「絶対に嫌です」さすがに9歳児に「おばあちゃん」はキツイらしい。
2人でそんな事をコソコソと日本語で話しをしていたら、王妃ファニーの女性護衛騎士が・・・「ファニー様、そろそろ・・・」と声を掛ける。
すると王妃ファニーは一瞬鋭い目になって直ぐに、
「そうですわね。残念ですが今日は長居が出来ませんの。
とても名残り惜しいですけど今日はこれにて失礼致しますわ。
セリス、9歳のお誕生日、本当におめでとう御座います」
と、ニコリとは笑ったがいつものファニーとは違うリアクションをする。
「ファニー様、本日は起こし頂きましてありがとうございました」
セリスもニコリと笑ったが、あの一瞬のファニーの目が気になって仕方ない。
あの目は戦時中にいつも見ていた戦地に赴く者の目だったからだ。
「さっ、ラーナもお暇のご挨拶を」
「はい、お母様。
ではコーバ公爵閣下、セリス様、本日はとても楽しいお誕生日会にお呼び頂きましてありがとうございました」
王妃ファニーと共に立ち上がってカーテシーで挨拶をする王女ラーナ。
《ありゃ?今日はラーナ様もお泊まり無し?》
いつもなら妹達の部屋に泊まるのだが今日はアッサリと帰る王女ラーナにも不思議な気持ちになったセリスだが公爵令嬢として返礼のカーテシーをする。
それからは家族一同全員揃って王妃ファニーと王女ラーナを玄関先まで見送って今度は家族のみで誕生日をやったのだったが王妃ファニーの鋭い目が気になって仕方ないセリスだったのだ。
この瞬間にも西の大陸での動乱に伴いピアツェンツア王国とゴルド王国との開戦まで秒読み段階に入っている事をセリスはまだ知らない。
王妃ファニーは、王都防衛体制の見直しをしている。
その見直しされた防衛体制による警護の影響から王女ラーナとも会う機会が無くなり日本についての詳しい話しも暫くの間出来なくなるのだった。
「これ多分戦争が始まるなぁ・・・嫌だなぁ」
セリスは前世で兄と大勢の親族を亡くした太平洋戦争の時の嫌な思い出を思い返すのだった。
そしてその大戦の前哨戦とも言えるアスティ公爵家の反乱が起こる。
その時にカターニア公爵家のセリスはどう動くのか?
遂に始まる「セリス無双」にご期待あれ!
「戦闘力皆無だっちゅーとろーが!」