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「幽霊退治屋セリス」パワーアップバージョン  作者: ウッド
パワーアップバージョン
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夜会もどきと監査令嬢。

これは遂に公爵令嬢セリスの社交界デビューか?!と思いきやバーバラ夫人から詳しく聞けばなんて事は無かった。

ここ数年間、アスティ公爵家の動乱や西の大陸での戦争やらの影響で大いに停滞していた社交界を復旧するべく王宮で成人前の貴族の子息と令嬢を招いて夜会の練習をしますよ~・・・との事だった。


「セリス!練習とは言え日頃の淑女教育の成果を皆様に見せる良い機会です!しっかりなさい!」

気合い充分のバーバラ夫人に対して?


「おいーーーす!」と、返事をするセリス。


「?!?!?!」


「「ええーーー?!」」セリスの返事にメチャクチャ驚くバーバラ夫人とフェナとミミリー。


「・・・・・・・・・・・・・・あっ・・・・・・しまった」

ここで「おいーーーす!」は・・・ねえだろ!淑女教育の成果って言ってんだろ?!


「セリスーーーーーー!!!!」


「ごんなさーーーーい?!?!」

まだまだ淑女には程遠いセリスでしたとさ。


さて、今回の夜会の練習・・・これは地方の10~14歳の年若い子息と令嬢が中央で行われるデビュータント舞踏会でいきなり恥をかかない配慮もされている。


でもいきなりの決定だったし地方からわざわざ参加する奴そんなにいなくね?と予想されていたのだが蓋を開けて見ると地方から続々と貴族令嬢や子息が王都へとやって来た。

なので宿場街が軒並みパンクしてしまい急遽カターニア公爵家の邸宅も仮宿としと提供する事となりカターニア公爵邸にも数十人規模のお客さんがやって来た。


「セリス・・・お客様のお相手を・・・」

先程の「おいーす」で流石に娘に対して目が笑っていないバーバラ夫人。


「ふあい」自業自得令嬢のセリス。


急にそんなにお客さんが来たらセリスも混乱すんじゃね?と思われたのだが、そこは腐った「おいーす」令嬢セリス。

先程の「おいーす」からは想像も出来ない外交性を発揮し公爵令嬢として訪れたお客さんの相手をしている。

しかし内容を詳しく書いてもつまらん話しなので全て割愛します。



そして・・・



「まあ?!とてもお高いですわ?!」


「本当にお高いですわね?!」


エントランスで挨拶を済ませてセリスの部屋でのお茶会に招待された令嬢達が歓声を上げる。


「うふふふふ、本当にお高いですわよね?わたくしも困ってますの」

珍しく超本気公爵令嬢モードのセリス。

コイツやれば一応出来るんだけどね。やらんだけで。


何が高いの?と言われるとセリスが今、身に付けているペンダントに付いている宝石が高い?違います。


あっ!分かった!霊視さんβから貰ったドレスが高い?それも違います。


ならミミリーが用意しているお茶やお菓子類が高級品?全然違います。


いや!セリス専属護衛騎士フェナの身長が高い?ちげぇよ。


じゃあ何が?と聞かれるとカターニア公爵邸のセリスの部屋が「物理的に高い位置に有る」事に令嬢達が驚いているのです。

令嬢達は窓に張り付き大パノラマの景色を堪能しながらキャイキャイしています。

ちなみにカターニア公爵家には年頃の娘が3人も居るので御子息の方々の入場は御遠慮願っています。


つーか、カターニア大城郭・・・まーだ沈んでないかい?責任者出て来い!

と、言う訳で責任者の登場です。


「ふーむ?ここが変なのかのう?」

調べれば調べただけ不具合が難題過ぎてもう半分くらいは復旧を諦めて来ている責任者の魔王バルドルが他の技術者達に原因究明を丸投げしそうになっている・・・諦めんな魔王。


「いえ?ここは問題無いと思います。やはりここが・・・」


「魔法石の出力に問題が有るのでは?」


「いや・・・根本的な魔法術式が・・・」


「これは実証するのに時間が掛かるのう・・・」


「セリスの部屋の直下」に有るコントロールルームでは魔王バルドルを筆頭にした復旧チームが頑張っているが復旧への道のりは遠い様子だ。

そもそも馬鹿な大人達が「公爵邸トランスフォーム!」とかのネタに走り公爵邸諸共浮上させたのが間違いなのである。


ちなみにここまで魔王バルドルはカターニア公爵邸に長期間(丸々一年)滞在しているのに魔王バルドルとセリスは顔を合わせた事はありません。


何で?と聞かれると単なる偶然が重なったのとコーバ公爵が魔王バルドルがカターニア公爵家に来たその日にたまたま部屋から行方不明(鶏への餌やりと牛の乳搾りをしてた)だったセリスを後日改めて紹介するのを忘れているからです。

子供の数が多すぎてコーバ公爵的にはセリスも紹介したつもりになっています。


魔王バルドルも「影見」を使いセリスの姿を赤ん坊の時から何十回も見ているのでセリスとはもう会った事が有ると勘違いしてます。


他のセリスの兄弟姉妹は来国した初日に魔王バルドルと会っています。


「魔王バルドル様。ようこそカターニア公爵家へ」「まおー?」「かーさま?まおーってえらいの?」「凄く偉大なお方ですわ」「話しの通りに子が多いのう?」「いやお恥ずかしい」「魔王様は黒のイメージが有るのですが物理的にキラキラしてますわ~」「その聖銀製の鎧はヴァンパイア様に悪影響とかありませんの?」「特に悪影響は無いぞ?儂は聖魔法も使えるのでな?」「まおーあそんでー」「仕事が終わったらな?」「バルドル様が1500年前に世界初の浮き橋を作ったって本当ですか?」「お主9歳と聞くが利発じゃのう」「これこれ一気にお話しするんじゃない」「それにしてもお主ら朝5時なのに元気じゃのう?」「セリスお姉様のルーティンに合わせて行く内に一族郎党全員早寝早起きになりましたの」「それは健康的な一族じゃのう」

こんな感じにワイワイガヤガヤと賑やかな顔合わせだった事もあり余計にセリスの事を忘れたのだ。


その結果・・・邸内一斉点検作業の為に当たり前の様に点検ファイルを見ながら自分の部屋の中を横切る物理的にキラキラしている不審者をセリスが見て「誰だお前ーーー?!?!」「見ての通り魔王ですけどーーー?!?!」「魔王って何さ?!?!」「儂は、お主の父に頼まれてこの城郭の開発を頼まれておる」「!!!無駄使いの原因は貴様かーーー!!お話しがあります。ちょっとツラ貸しな!」「何の話しじゃあ?!?!」と、2人は割と衝撃的な出会いをします。


そこから監査令嬢セリスによるカターニア大城郭の建造費問題の調査が本格化して投下資金に関しては部外者の出稼ぎ魔王バルドルは余計な(身に覚えが無い事)苦労をする事になります。

そんなもん無視しても良いのにセリスに付き合う、人の良い魔王なのだ。


そしてセリスの調査はヤニック国王にまで及び、調査の最終結果としてカターニア大城郭の建造費は税金ではなく全て王室の長年に渡る貯蓄から出ていたと判明して一応はスッキリするセリス。


「・・・・・・・・・・お主の金への追求はなかなか苛烈じゃのう・・・

しかしピアツェンツアも随分と溜め込んでたものよのう」

書類を片手に容赦なく国王を凹ます監査令嬢を見て、違った意味でコイツは敵にしていかんと痛感した魔王バルドル。


「無駄使いは死すべしです。と言うか何でウチの国に税金より別にあんなに余分なお金有ったんです?」

カターニア大城郭の総建造費は日本円にして「30兆円弱」だと分かった。


「1番の財源は航路の使用料じゃろうな。

中央に有る大陸なのでな、25もの航路をピアツェンツアが独占してたのじゃ。

そして貨物船の通行料でトン数辺りで銅貨5枚(おおよそ50円程度)王家に入る仕組みなっておったのでな」


「めっちゃアコギだぁ?!?!」

日本だとトン数辺りで「どの航路でも海外船舶一律2円70銭、国内船舶一律1円60銭」、なので(この金額は国際法で昔からガッチリキッカリと決まってます。なので円安になると国内企業の負担が増えて海外企業の負担が減り海外からの投資が増える一因にもなります。どっちが日本に良いのか一般会社員のオラにはわがんね)日本のおおよそ「20倍」くらい高いね。


「そう言うでない。地球とは経済圏構造がまるで違うのでな。

国によっては銀貨2枚(おおそよ200円)取る国もある。

むしろピアツェンツアの金額設定は平均値より安いくらいじゃ。

この絶妙に安い設定がピアツェンツア航路を利用する商船を増やして功を奏しておったのじゃろうて」


「むー?」元海人として航路を使っての暴利にイマイチ納得出来ないセリスは不満顔である。


「まあ、不満が有るのであれば将来お主が変えて行けば良かろうて。お主はそう言う立場なのでな」そう言ってニヤリと笑う魔王バルドル。

想像以上にセリスがオモロイ奴だと分かり最近はセリスの事をを構い倒している魔王バルドル。こんな感じに色々な事をセリスに教えているのだ。


「なるほど・・・ところでバルドルさんと私って昔会った事ありませんか?」

良く良く考えると初対面の相手に挨拶もしないでいきなり食って掛かるのはセリスの性格的にも有り得ない事なのでセリス自身も不思議に思っていたのだ。


「有ると言えば有るし無いと言えば無いのう。直接会ったのは今回が初めてじゃな」


「???」


霊樹シルフェリア時代のセリスは魔王バルドルと会った事は有りますが、その時はスピリチュアル(霊体状態)だったのでマテリアル(物理状態)で会うのは初めてです。

なのでセリスの魔王バルドルの記憶はかなり朧げです。


その時に何をしたかと言うと霊視さんβと一緒に「武者修行の為に一方的に見ず知らずの魔王バルドルに殴り込み」をして返り討ちにされてます。

それから1000年近くも霊視さんβの面倒を見ている魔王バルドルもお人好しだね。


紫虫王や九頭竜王の時もそうでしたが、霊視さんβは負けた相手に妙に懐いてウザ絡みをする性質があります。


更に余談なりますが魔王バルドルの装備品が無駄にキラキラしているのは物資の補給担当者が勝手に調達して無理矢理着せられているからで魔王バルドルは基本的に黒が好きです。


そんな余談の話しをしてたら茶会は終わった様子ですね?

また大幅に割愛しますがセリスの部屋で行われたお茶会は滞りなく成功しました。



お話しは以上です。



「大幅に割愛どころか全く書いてないじゃんか!

経済の話より少しは私が令嬢として活躍している所を書かんかい!」


だって令嬢達の茶会の話しなんて書いてて面白くないじゃん・・・


話しを夜会の件に戻します。


こんな感じに参加人数が大幅に増えたので急遽30人程に分けて複数の会場で1週間に分けて夜会が行われる事が決まった。

1週間の開催期間の延長は遠方から来る者への配慮である。


人数が予定より増えたので自分1人くらい参加しなくてもバレないんじゃね?と思ったセリスは「当然不参加なんて事は・・・」と母バーバラ夫人に言って見たら、「出来ません!公爵家の令嬢が何を言ってるのです!私達はどちらかと言えば主催者側なのですよ!」と普通に怒られた。


「ですよねー」腐った公爵家令嬢セリスは夜会もどきに強制参加となった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



《へー!セリス、初めての夜会だって?》


「もどき・・・だけどね」


《マナーは?もう大丈夫?》


「大丈夫か大丈夫でないかで言えば大丈夫。伊達に毎日部屋や王城に缶詰にされた訳じゃないからね」

自宅で行われる母バーバラの地獄の淑女教育に加えて何故か王城で霊視さんβがオンライン講師を勤める王妃教育が始まったのだ。


ちなみに霊視さんβがピアツェンツア王城で王妃教育のオンライン講師をするのは過去500年の間で通算で45回目である。このエルフ色んな事やってんな~。


《セリス様。話しを聞いてますか?》講師モードの霊視さんβは、とても厳しいのだ。


「何で?!?!私が王妃になる可能性なんて0じゃん?!」

今日は念話でなく正式な通信システムで会話をしているセリスと霊視さんβ。

一応映像にはモザイクが掛かっているが霊視さんβがエルフの女王だとバレバレである。

だって「本日の特別講師はエルフの女王様」と渡された資料に書いてるからね?


《お勉強と研究は裏切りませんよ?》


「それは分かりますが、でもこの「宇宙物理学」と「電磁気学」って王妃に必要あります?」

勉強そのものは嫌いではない優等令嬢セリスだが?


《あります》


「そ・・・そうなのですね?」

しかし単純に霊視さんβがセリス用に組んだカリキュラムがリアル宇宙過ぎで専門的過ぎて難しいのでセリスが文句を言ってます。


《だってセリスってば王妃教育もう終わってるじゃん?》


「そうですよ?だから何で今更王妃教育をするんですか?」


セリスは言動以外は天才クラスの優等生なので10歳の頃には基本的な王妃教育を終えています。

全く書いてませんがダンスも一流の腕前を誇っています。

そのせいで世界トップクラスの股関節粉砕ダンサー霊視さんβにターゲットにされて股関筋肉痛に苦しむ事になります。


《だってセリスの教師をしたかったんだもん?》

この頃から霊視さんβによる「セリスの学力強化月間」が開催されるのだ。


「そ・・・そうなのですね?」これから訪れるマッドサイエンティスト地獄をセリスはまだ知らない。


「そう言う事ならセリス様?王女の交代をしませんか?」

隣には巻き込み事故を食らった王女ラーナが鎮座している。


「絶対に嫌です。そう言う事とはどう言う事ですか?

・・・・・・・・・ラーナ様は何を読んでるんです?」


「これは量子力学の本ですね。後で教えて差し上げますわ」


「知らん間にマッドサイエンティスト達に包囲されてた?!」

ようやく自分の立ち位置がやべぇ事に勘付いたセリス。


「それよりもセリス様も来年はデビュータントです。

セリス様の婚約者事情なんて私はとても気になります」


《おお!それは私も気になりますね。どうなんですか?》

物理学から急に恋バナに移行すると?


「どう・・・と、言われましても・・・お父様からは何の話しも出てませんねぇ」

幾ら男性不足と言えどセリスは3大公爵家の令嬢だ。

探す気になれば引くて数多なはずだが、冗談抜きに何の話もないのだ。


《んー?王子様と婚約して王族入りは・・・ダメなんですよね?ラーナ殿下?》


「そうですね。慣習的にセリス様はロミオとは血が近過ぎてダメですね」

最近ピアツェンツア王国には待望の王子様ロミオが誕生したがセリスとは血縁が濃い(再従兄弟)親戚なので2人が結婚する事は無い。

もう一親等外縁ならロミオ王子との結婚は可能だったのだがこの200年のピアツェンツア王族の慣習的に好まれないだろう。

ピアツェンツア王族は国内全ての民族との婚姻関係を結ぶ事が目的のアウトブリードな王室なのだ。


「そもそもロミオ様はブリタニアのお姫様と婚約を結びましたよね?

あ!そう言えばラーナ様も御婚約おめでとうございます」


「多分・・・私はついでじゃないですかね?」


「ついでって・・・」

王女ラーナは最近、次期宰相と目されるクロッセート侯爵家のオルランド公子と婚約を結んでいる。

自分の婚約には全く感慨は無さそうな王女ラーナだが意外と純粋なラーナの内心は混乱しており結婚時にはセリスを巻き込んだ大騒ぎに発展します。


話しを戻しまして、いよいよ始まる夜会の実地演習。セリスに何が起こるのか?


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