セリス、9歳の誕生日会。その1
話しは遡り石切場のド変態共・・・死霊達をフェナが成敗する2日前、この日の夕方にセリスの9歳のお誕生日会がカターニア公爵邸で行われた。
今回はその時のお話です。
主役のセリスは準備に大忙しで母バーバラの手で新しく作ったドレスの微調整が行われている。
「うふふふ、こんな感じかしら?」
「ねーたま、きれー」「ねーたま、だっこー」
「ありがと、ステファニーもクリスティーナも可愛いよ」
セリスにまとわりついて来る双子の妹を変わる代わりに抱っこする。
とは言えセリスも小さいのでベアハッグの様な形になるのだが。
本日の主役であるセリスは奮発して新しいドレスでの登場予定だ。
少し大人っぽくフリフリ控え目な水色を基調したAラインドレスである。
「ステラ、クリス、ドレスがクシャクシャになってしまいから今日はあんまりお姉様に触ったら行けませんわ」
「あーい」「えー?やー」
「お父様・・・新しいドレスはとても嬉しいのですが・・・その贅沢は・・・」
新しいドレスは素直に嬉しいのだが後で支出の帳簿を見るのが凄え怖えのだ。
「うんうん、可愛いよセリス」
「本当に妖精タン見たいだわ」
「お母様にも「妖精タン」が移った?!」
どうでも良い話しだが魔法世界に「妖精タン」が居るか?居ないか?で言うと普通に居る・・・そう・・・セリスの直ぐ後ろにも・・・
真面目な話しを書くとセリスも実は「妖精タン」の一種である。
セリスの場合は「妖精タンの突然変異タイプ人間形態」の肩書きが付くのだが。
凄く分かり易く説明をするとセリスは「妖精タンの親玉」なのだ。
妖精は外見は小さな精霊と言った感じだが精霊とは少し違う生物だ。
この話しは最終話にてセリスと女神アテネとの関係の謎と共に詳しく語られるでしょう。
・・・あんまり謎と言うほどの事もありませんが。
話しを戻して誕生日会に新しいドレスを新調する・・・貴族としては当然の嗜みなのだが、セリスにこびり付いた前世の金銭感覚が拒絶反応を示す。
長子の誕生日会はカターニア公爵家のメンツに関わる大事なイベントなので疎かには出来ないのも分かるのだが・・・
「だって9歳でしょ?直ぐに成長するじゃんか!来年にはもう着れないじゃん?」
そう大事なのはそこなのだ。実に着れなくなるドレスが勿体無いのだ。
勿体無い精神の日本人・・・特にセリスの前世は大正生まれで昭和初期育ちと大きな戦争と戦後の物不足の苦労をモロに体験している。
極貧の中での質素倹約の時代の人間だったので、この貴族の感覚にはとても慣れそうも無い。
本当は着れなくなったドレスは妹達にあげたい・・・あげたいのだが。
セリスの持ち物を双子の妹にプレゼントするとそれが原因で2人が大喧嘩を始めてしまうのだ。
「これあたしのー」「やーあたしのなのー」
「それぞれ別のドレスをプレゼントしてるでしょ?どうして喧嘩するの?!」
2人共セリスお姉様が大好きなのでセリスお姉様がくれる物は全部自分が独り占めしたいのだ。
それぞれに違うドレスをあげてもダメだった・・・
自分を慕う妹達はとても可愛いのだが困った妹達なのだ。
その双子の下の三つ子の妹達は2歳にして既にセリスに対してシスコンの予兆が出ている。
このままでは三つ巴の大乱戦が予想される。
「って、これもう詰んでんじゃん?」とセリスはため息をついた・・・
「もう!王立学校入学の13歳までワンピース1択で良いじゃんか!」とセリスは思うのだ。
ワンピース・・・奴は、とぉーっても優秀な子なのだ。
良い生地の少し大きめな物を作って予めスカートを詰めておけば成長期の子供に裾を下げるだけで即対応出来る優れ物なのだ。
「早くデカくなって服の寸法が変わらんくならんかな~」
そう願うセリスだが17歳で身長は止まっても胸の成長が20歳まで全然止まらん未来が来る事をまだ知らない。
貴族女性の胸の部分はとてもセンシティブな場所(具体的には社交界で周囲の女性からのチェックが厳しい)なのでリメイクが出来ない。
身長が止まっても結局は20歳まで毎年新しい服を作る羽目となるのだ。
結局このセリスの使われなくなった子供用のドレス達は双子の妹の裁縫職人ステファニーがリメイクして末娘に着させる事になる。
そしてもう一つ、服関係でセリスの頭を悩ます問題が・・・
いや資金難のカターニア公爵家にとっては大変有難い話しなのだが・・・
「セリス、今日のお誕生日会には王妃様とラーナ殿下も来るからね」
王妃達が住んでる後宮の裏玄関からカターニア公爵邸本邸の表玄関まで一直線の遊歩道を使い徒歩で15分なので割と頻繁に王妃や王女が公爵邸へと遊びに来るのだ。
その遊歩道の境界には申し訳程度の生垣がある程度でほとんど同じ敷地内と言っても良い。
まあ、正確にはカターニア公爵領内に後宮が建っているのだが。
「うっ・・・」
「まあ!では、今晩はお城へのお泊まりの準備をしないといけませんわ」
「・・・はい」
《やっぱりお泊まり確定なのね・・・くっ本当は明日から仕事に行きたかったのに・・・》
そうセリスは思ったがニコッと笑い母バーバラに「はい」と令嬢らしく返事をする。
今の所は、まだ母にはセリスの本性はバレていない・・・ここまでド派手にやってるのに何でバレてないの?!
どうやら母バーバラは少し天然が入っている様子だ。
それから公爵領に何で後宮が建っているの?との疑問も湧くと思うが、200年ほど前のカターニア公爵が自身の領地に豪華絢爛な後宮を建造して当時の王妃と王女を住まわせたのが今の後宮の始まりだ。
これは別に王家への忠誠の証しとかではなく、ぶっちゃけ政争が激しい時代でカターニア公爵が他国から嫁いで来た世間知らずな王妃を懐柔して国王から引き離して傀儡にする目的で作られた後宮である。
なので自分の邸宅から常に王妃と産まれた王女を監視出来る場所に作ったので双方の建物がメッチャ近いと言う訳だね。
何気にセリスが毎日使っている公爵邸の玄関も政争の末期に王妃奪還を狙った王党派貴族800名とカターニア公爵派貴族500名による壮絶な斬り合いが行われた戦跡である。
それが今では王族や敵対していた王党派貴族が気軽に遊び来る玄関先になったのだから歴史とは面白い物だ。
そしてその後宮事変より80年後に当時の王妃によって後宮の一角を改装して冒険者ギルド本部が作られたので公爵邸から冒険者ギルドまでの距離も近い。
この歴史的な立地条件もセリスの今後の人生を大きく左右する事になる。
「ふう・・・今回は、いつお家に返してくれるやら・・・」
人知れず溜息をつくセリス。
王妃ファニーが遊びに来ると間違いなくセリスは王妃ファニーの部屋へとお持ち帰りされるのだ。
そして王妃ファニーの気が済むまで着せ替え人形にされるのだ。
そしてその時のドレスや装飾品などがセリスにプレゼントされると。
良かったじゃないの?
つい先月も・・・
「ラーナ様に!ドレスの試着はラーナ様にお願いします!ああ!そんなご無体な!」
王妃ファニーに情け容赦無く服を剥かれてマッパにされるセリス。
「うふふふふふ、良いじゃないですのセリス~、今度はコレね、あら!可愛い!
あらー?このドレスなんてセリスの金髪に映えますわね~」
「あーれー?いやーん?」
王女ラーナは黒髪でセリスは金髪なので同じドレスでも印象がガラリと変わって見てると楽しいらしい。
幸か不幸か、この頃のセリスは年齢と比べて比較的小柄なので2歳年下の7歳の王女ラーナと服の寸法がピタリと一致しているのだ。
「セリス様・・・あきらめて下さい・・・」
ハイテンションの母に弄ばれるセリスを気の毒そうに見ている王女ラーナ。
余談になるが王女ラーナは日本からの転生者である。
セリスも日本からの転生者だと言う事を専属メイドの天舞龍リールから聞いて知っているがセリスは王女ラーナも日本からの転生者だとは知らない。
と言うか前世の前世では2人は知り合い・・・共に戦った戦友同士なのだが王女ラーナは今の所は気が付いていない。
ある理由から天舞龍リールもその事はまだ話していない。
これが原因でこれから10年後に5兆円(相当)規模の金が動く複数の国を巻き込んだドタバタ大騒動が巻き起こる。
ちなみに王妃ファニーとは血の繋がりは無いがセリスと王女ラーナは今世ではガッツリと血の繋がりが有る親戚だ。(ヤニック国王とコーバ公爵が父方の従兄弟なのでセリスとラーナは従従姉妹になる)
そしてセリスの母バーバラも3代前の王家に近い家柄の出身なので、実はヴィアール辺境伯家由来の王女ラーナよりセリスの方が王家の血筋としては濃かったりする。
そんな訳で東部地方の超武闘派民族のヴィアール辺境伯家が中央で権力を増す事を恐れる中央貴族達が中央貴族代表の血筋のセリスを時期女王に推している理由である。
内乱の火種にはなっているが王妃ファニーも王女ラーナも「セリス女王化運動」を何となく認めている節が有るのでマジで勘弁して欲しいセリスなのだ。
これは王妃ファニーの実家のヴィアール辺境伯家も王権になんぞ全く興味無いので「セリス姫が次期女王?うん、良いんでないかい?」との姿勢だからだ。
内乱の兆しが出ればファニー派は即時王都から撤退する構えである。
ファニー派が撤退すると必然的に国王ヤニックもガチで国王の座から撤退するので(実際に若い頃に一度撤退している)それが逆に中央貴族派閥に対する強力な牽制になってるから面白いモノである。
もし国王と王妃が東部に撤退する事態になると最近大人しかった東部地方の諸国を刺激してまた「ヴィアール共和国」を結成する可能性が高いからだ。
歴史を辿るとヴィアール共和国王家が全中央大陸を制覇したピアツェンツェア王国王家の源流なのだ。
中央大陸平定してピアツェンツア王国(ピアツェンツアは中央の地方名)を建国した直後に政権内で発生した権力闘争をメッチャ嫌ってヴィアール王族に臣従して来た当時中央部のみを支配していた弱小のピアツェンツェア王族に・・・
「そうだ!王家はお前らがやれば良いじゃん?名前もそのまま使えるし!」
「えええー?!何言ってんだ?!お前ら頭大丈夫か?!ああー?!ちょっとー?!」
とかのやり取りを経てマジで全王権をピアツェンツェア王族に譲り中央からは華麗にトンズラこいて故郷の東部に戻って出来たのが今のヴィアール辺境伯家である。
そしてその後800年近くも中央政権に参加する事もなく辺境伯家としての独自の発展を続けて公爵にも侯爵にもならず辺境伯家のままでいる変わった連中なのだ。
今回も下手を打てばその時の再来の可能性が高いのだね。
そんな丸投げヴィアール辺境伯家の直系の人間なので王妃ファニーも遺伝子的に権力には全く興味が無いのだ。
単に今は夫の国王ヤニックの事が大好きなので王族をやっているだけに過ぎない。
その王妃ファニーに姿も性格もそっくりな王女ラーナも王権には興味は無いし可能ならばヴィアール辺境伯家に今すぐにも引き篭もりたいのだ。
その様な理由から本来なら自分達の最大の政敵になるはずのセリスを王妃ファニーはめちゃくちゃ可愛いがっている。
だってセリスは妖精タンの様に可愛いし王権に関しても自分には関係ないもんね!
「うふふふふ~♪可愛いですわセリス」
「ああ・・・こんな綺麗な新品を・・・私なんかには勿体ないです!」
かなり良質なヴィアール絹を使ったシルクガウンを貰ってしまったセリス。
「良いの良いの。ヴィアール絹なら幾らでも手に入るしコレはシーナ用に作った物だけど・・・シーナはもう着れないの。
ラーナも同じガウンを持ってるから遠慮なく貰って下さいな」
「うぐう?!」
そしてこれらの服達が「自分達、中央貴族の陰謀から王城から追放された悲劇の王女シーナ」の為に作られた服達だと察しているセリスは王妃ファニーからのお願いを凄く断り辛いのだ。
何故なら知らん間に政争に巻き込まれたとは言えセリスの実家のカターニア公爵家もシーナ姫の追放に一枚噛んでしまっているからだ。
なので王妃ファニーは自分の元から居なくなってしまった我が子シーナを思って服だけは作っていると思うと断れないのだ。
貴族院の公式見解では王女シーナは地龍王クライルスハイムに食われただろう?との事になっている。
「「何で我が人の子を食わねばならんのじゃ?」」
とまぁ、超常識龍(超真面目君)のクライルスハイムが人を食う訳が無いのだがね。
セリスが勝手にそう解釈しているだけで単にスカンディッチ伯爵領で元気に暮らしているシーナ姫の成長速度が王妃ファニーの予想より早過ぎたのだ。
その為ラーナと同じサイズで作った服が身体の大きなシーナのサイズ合わなくなってしまって処分に困った服をセリスにお裾分けしているだけだったりする。
ちなみに現時点での身長は、セリスが118cm、ラーナが121cm、シーナが「141cm」である。
9歳児のセリスが平均より小柄でラーナが平均、シーナがめちゃくちゃデカいね。
「あらまあ?ラーナのサイズだとパッツンパッツンですわね・・・
シーナ、本当に大きくなって」
ようやく再開を果たした娘に沢山の服をプレゼントしたファニーであったが服のサイズが全然合わなかった・・・
「そうですか?」7歳にして身長が140cmを超えてしまったシーナ。
これ・・・大人になったらどんだけデカくなるんだ?と思ったら13歳の時に165cmになってから成長がビタ止まりする。
後で判明するのだが、この幼少期の急成長は龍人の特徴だったらしい。
「うむ、何故か最近、日に日にドンドンと大きくなってしまってのう・・・
今はワンピースとローブくらいしか着せられぬのじゃ。
シーナの服を作るのは暫しの間、待った方が良かろうて」
この頃は、まだまだ前例が少なかった龍人の特徴ついて詳しく分かっていなかった仮親である地琰龍ノイミュンスターも少しシーナの成長速度に困惑していた。
「少し残念ですが・・・シーナが立派に成長してくれていてとても嬉しいですわ」
「えへへへへへ」
「でも全てラーナとお揃いですし・・・どうしましょうか・・・そうですわ!セリスに着せましょう!」
そして現在に至るのである。
「でも何で?ファニー様は私を・・・」
「何か言いましたかセリス?」
「いえ・・・何でもないです・・・」
そんな事とはつゆ知らずに本来なら「わたくしの子が酷い目に合ったと言うのにカターニアの娘だけが幸せになるなんて!」と王妃ファニーに恨まれていても仕方ないはずなのだが自分を手放しに可愛がってくれている王妃ファニーの事を不思議には思っている。
そしてシーナの妹の王女ラーナは何を考えているかと言うと・・・
《はーい本日分のエネルギー供給終了~・・・あー疲れるわー、早よう誰か何とかしてくれい・・・》
全く別の理由から姉であるシーナ姫の追放事件の事は気にしていない。
魂の回廊を通して本日分の生命エネルギーを姉のシーナに供給し終えたラーナは人知れず疲れているのだ。
シーナへの生命エネルギーの供給って何?と聞かれると姉のシーナは生命力が酷く枯渇した状態で産まれており生命維持装置のラーナから生命エネルギーの供給が無ければ命に関わる状態なのだ。
生命力なんぞを渡してラーナの方は大丈夫なのか?と言われるとコイツなら大丈夫です。
前回の転生特典で何か欲しいモノが有るか?と転生門の職員に尋ねられて「んー?スキルは要らないなぁ・・・んじゃあ無限の体力で」と答えたら、『さっ・・・さすがに無限は無理ですけど。通常の人間の「5倍」の生命力なら・・・』と言われて「んじゃあそれで」とマジで常人の5倍の生命力を持って産まれてしまったアンポンタンなのだ。
疲れるだけでラーナの生命力はまだまだ余裕がある。
それでもシーナに生命力を奪われ続けているラーナのメンタルは大丈夫なのか?
大丈夫ですよ?コイツのメンタルはオリハルコン合金ですから。
同じ日本からの転生者と言う事もありセリスの事をかなり気に掛けているラーナではあるが現状全てのリソースをシーナに注いでいる状態なので他の事をやる余裕が無いのだ。
《おー?パツキン美幼女のマッパもオツなモンだねー。つかパツキンは○○もパツキンになるんモンなのかね?》
疲れてボケーとしながらセリスのマッパを見ながら7歳児にあるまじき不埒でどうしょうもない事を考えているラーナ。
コイツは万事全てこんな感じなので心配するだけ損なんです。
そんな事を考えているとは思えない穏やかな表情で物静かに自分を見つめているラーナを見て、「姉を奪われたラーナ様は・・・私の事をどう思っているんだろう?」と不安になるセリスなのだが単に毎日疲れてて難しい事を考えるのが面倒くさいだけなんですよコイツの場合は。
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さて話しをお誕生日会の当日に戻してセリスの誕生日はセリスにとって大切な日でもある。
誕生日だから当然じゃね?違います。
どう言った運命のイタズラなのかセリスの誕生日と「王都大市場の年一回の感謝祭」は同じ日なのだ。
なんと!大市場に並ぶ商品が「全品3割引き」なんですよ奥さん!
父と母が妹達を連れて会場の様子を見にセリスの部屋から出て行くと・・・セリスはスッと立ち上がって・・・「さて・・・ミミリー?ワンピースに着替えます」と、言った途端にストンとドレスが落ちてマッパになった?!
「今年も行くんですか?!それにしても毎回見事な速脱ぎですね?!」
「当然!3割引きだよ?行かない訳がないじゃん?
そしてツルペタなので肩を捻れば重力で勝手に服が脱げるんです」
そう言いながらリネン製のワンピースをモゾモゾと被り始めるセリス。
「ああもう!せめて下着を着けて下さい!」
ミミリーが慌ててワンピースを剥ぎ取りドロワーズのパンツをセリスに履かせる。
「コレ、ゴワゴワしてて嫌なんだよね~」
「それでも公爵令嬢がノーパンで街中を走り回るな!」
セリスが着替えを済ませるとゾロゾロと使用人達がセリスの部屋に入ってセリスの前で整列した?
「さて皆さん・・・今回の狙いは・・・」
セリスの今年の狙いはズバリ調味料と加工食品だ。
生鮮食品は庭の菜園で賄えるが調味料はそうはいかない。
保存の効く加工食品も買える時に買っておきたいのだ。
「今回初参加のフェナは侵入ルートをちゃんと覚えた?」
本日は護衛騎士のフェナの他、執事隊3名に調理場からの雄志5名を連れて祭りで人々でごった返している大市場に突撃するのだ。
人の群れを掻き分けて効率良く買い物をする為にも侵入ルートの精査は欠かせない。
「はい!先ず図書館の裏道を通り西の住宅地のエクスバースさん家の庭からローズウッド製菓店の勝手口から大市場へ侵入します。
そこから調味料売り場から突入、走りながら買い叩いた後に再度エクスバースさん家に後退してからディアスさん家に移動してお手洗いの窓から再度大市場へ突入して加工食品売り場へ突入、同様に買い叩いたらそのままコントレラスさん家から西の大通りに出て公爵邸へ帰還する予定です」
「さすがフェナ!ルートの記憶はバッチリだね!」
「その説明で何で皆んなが分かるの?!
エクスバースさんやディアスさんとか・・・どちら様なの?!
それに他所様のお宅の庭やお手洗い?!に突入って、不法侵入じゃないの?」
「大丈夫!皆んな私のお友達よ!全員から侵入の許可も取ってあるわ!」
「お嬢様は普段街で何をしているの?!」
「お嬢様!俺らの準備も整いましたぜ!いつでも行けます!」
欲しい物リストを確認している料理人さん達に効率良く支払いが出来る様に銀貨と銅貨の枚数を確認している執事さん達。
「料理人隊の皆んなは買いたい物は全部買うのよ!
後ろからフェナと執事隊が会計と公爵邸への配達の手続きをしてくれるから後ろは見ないで次々に店舗を移動してね!」
お誕生日会まで時間が無いから1時間で全ての任務を完遂してね!」
お誕生日会の料理の最終調理が始まるのは今から2時間後である。
「人を派遣するならお嬢様が直接行かなくても大丈夫じゃないですか?!」
「ダメよ!誰が値引き交渉をするの?3割引きで終わらせる訳ないじゃん?
1分1厘ムダにする気は無いモンね!」
「とおーっても逞しいですね?!」
次回「大市場激闘編」に続く!