聖女だったフェナ。
ジャックも帰り御神体の仕事も終わった事だしセリスは改めてフェナに聖女に付いて聞いて見る事にした。
「それで何で聖女を辞めたの?
まさか?!実は聖なる神殿の中ではアレやコレの背徳的なソレが行われていたとか?!」
アホかぁ!・・・と言いたい所だが中世ヨーロッパまでは修道院が貴族のアレやソレだったから魔法世界の教会でコレなどが有っても不思議ではない。
そもそも中世ヨーロッパを中心に巻き起こった女性の貞操観念と言う概念自体が当時右を向いても左を向いても愛人だらけの王侯貴族社会で正統な血筋を守る為に提唱された「貴族としての義務」の側面が強い。
それに加えて当時横行していた十字軍の傭兵達による侵略地の中での女性への乱暴狼藉を罰する為に産まれた苦肉の策でもあった。
でもまあ、その貞操の義務も終わってしまえば後年は男女問わずに愛人ライフ三昧だったと言われているので始末に悪い。
そして肝心要のキリスト教会でも女性の貞操について中世になるまでは特に強く言及はしていなかったとの事(地方では好色な司祭も多くてツッコミを受けると何かと都合が悪かった)
これは諸説あるがイエス・キリストも「女性の貞操観念とはこれだ!」とは言及せず「宦官」の言葉を使い抽象的な表現をするのに留まったのも理由にある。
イリス・キリストにして見れば旧約聖書にも記載されている通り「神に使える女性は穢れの無い処女に限る」である事が言うまでもない大前提なので敢えて言及する必要が無かったからだと考えられている。
それは分かっているのだが「でもそれだと出家した未亡人とかも教会で働けないし教会での働き手が途轍もなく限定されるよね?」と教会の偉い人達が懸念した結果、無理矢理拡大解釈をしたと思われる。
不毛なイスラム教と争いをしながらヨーロッパ全域に教圏を広げる為にも人手不足は致命症になりかねない大問題なので「これ、教会として無理に言及せんでも良くね?」と見て見ぬふりをしていたのだ。
中世ヨーロッパでの貞操観念の話しはここまでにして話しを魔法世界に戻しましょう。
とりあえずこの物語内では今の日本で知られる一般的な貞操観念で話しが進みます。
「魔法世界でも「聖女とは処女である」のが前提なので・・・
「・・・・・・・・・・・・・・です」と、めっちゃ小声なフェナ。
「えっ?」全然聞こえないのでフェナに近寄るセリス。
「聖女だとお嫁さんに行けないからです!」
「うわあああああ?!?!」耳元で大きな声を出されてビックリセリス。
「教会の中で女として朽ちるのが嫌だったんですーーー!
私だって素敵な男性と恋して見たいですーーーーー!」と、ギャン泣きを始めたフェナ。
「よおおおおし!!なるほどそうか分かった!私もお婿さん探しを手伝うよ!」
ギャン泣きして震えながらセリスからの問い掛けに答えるフェナ。
地雷を思い切り踏み抜いたと理解したセリスが全力でフェナを宥める。
「ああ~そう言えば・・・」カターニア公爵家での面接でフェナが「婚活の一環で面接に参りました!」ってハッキリ言っていたな・・・と思い出したセリス。
『聖女』
ファンタジーの中で言わずとも知れた回復系と浄化系と結界系を得意する最高ランクの神聖術を操る事が出来る女性の尊称である。
「天龍教」の総本山であるピアツェンツア王国王都の大聖堂の中でも現在の聖女は10人もいない。
下衆いお金の話しになるがピアツェンツア王国では昔から聖女は手厚く保護されていて、教会を通して支援金もたんまりと貰える仕組みになっている。
それに加えて教会からもお小遣い(と言う建前の給料)が貰えるのだ。
教会内で治療専属の勤務で月に最低でも150万円(相当)の給料は固いだろう。
昔の聖女は冒険者達や騎士団と一緒に魔物の討伐とかもしていたが銃砲兵器の技術革新が進んだ現在では聖女は前線に赴いての討伐とかはしなくなっている。
「砲撃戦に聖女特攻なんてさせる訳ないだろ?!」と言う理由からもっぱら後方での治療任務に就くのが主流だ。
いずれにしても国にとって回復魔法が使える聖女は昔と変わらずに大変貴重な人材とされており社会的な地位も高い。
ただ・・・フェナの言う通りに聖女は結婚が出来ないとの暗黙の決まりがあるの事実。
明確な理由は不明なのだが宗教的な理由と言うよりも出産すると聖女の能力がガタ落ちになるからとの理由が有力である。
なので天龍教会では救済措置として18歳を越えると自分の意思で聖女を引退して結婚をする事が出来るのだ。
しかし信仰心から生涯未婚のままに聖女を続ける女性も多いのもまた事実なのだ。
フェナは別に信仰心が深かった訳ではないので18歳の時にアッサリと聖女を引退して聖騎士になり婚活していたのだ。
聖騎士に関しては職場結婚も多く聖女の様な貞操の縛りが無い為である。
フェナから悲しい事情を聞いたセリスは精力的に動いた!
「ジャックさん「全国大男協会」からフェナ好みの大男でマッチョなお婿さんを派遣して下さい!」
「ガハハハハ!そんな協会ねえよ!」
「ねえんですかい?!」
「そんなモン有る訳ねえだろ!ガハハハ!セリスは面白えなぁ」
ジャックは冗談だと捉えたがセリスは結構マジだった。
「うーむ・・・・探しても見つからぬのが大男・・・」
これより3ヶ月後、筋肉大男探しに一生懸命に走り回るセリスを尻目にフェナは超アッサリとカターニア公爵家の執事(名はクロード君、中肉中背の見た目は物静かな優男、中身は陽気な下町の兄ちゃん)と社内婚約をしてセリスを激怒させるのだった・・・
「ねえ?フェナ・・・大男の件は何だったん?」
「すみません!実はそこまで筋肉や大男に拘ってませんでしたぁ!」
フェナの為に彼方此方で大男だの筋肉だのと騒ぎまくったセリスは周囲から「筋肉と大男が大好きな公爵令嬢」と噂されてしまっているのだ。そりゃ怒るね!
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話しを3ヶ月前に戻してジャックとの共同での仕事は順調に進み、着々と生活費(主に家族と使用人の食費)を稼いでいた一家の大黒柱のセリス。
カターニア公爵家では使用人の賄いは全額公爵家持ちなので油断は出来ないのだ。
「うおおおお!!遂に・・・遂にベン精肉店のツケを全額完済したぞぉおおおお!!!」
厨房で勝利の雄叫びを上げる勝者セリス!
「お嬢様!おめでとうございます!!」セリスの苦労を知っている料理人達も大喜びだ。
「ありがとう!ありがとうね!皆んな!」
苦楽を共にした戦友達がお互いに肩を叩いて我らのお嬢様の戦果を讃えてる・・・そこに!
「ちーす!ベン精肉店でーす!あっ!セリス様、おはようございます!
今週分の精肉をお届けにきました~」
噂の宿敵さんが今週も、たっくさんのお肉を持って現れましたよ!
そしてこのベン精肉店の配達員さんはセリスを厨房のボスだと思い込んでいるのだ・・・
あれ?間違ってない?!
公爵家の家族11人、使用人86人(住み込みの子供含む)、護衛騎士18人、そんな働き盛り育ち盛りの115名が一週間で消費するお肉なのでとにかく量がヤバい!
このお肉の全てが公爵家負担なので確かにセリスの言う通りお肉代はバカには出来ないね!
「ああ・・・はい、いつもご苦労様です。うん、いつものそこに置いておいて下さい」
一気に勝利の熱が冷めて通常モードに戻ったセリス。
「毎度ありがとうございました。また来週伺いますね~」
キィーパタン・・・
お肉を納品して請求書を机の上に置いて颯爽と去る宿敵さん・・・
「さて・・・今月が始まったか」
そしてその請求書を懐にしまって今月の金策の旅に出掛けるセリス。
これもいつものカターニア公爵家の光景である。
セリスが金策の為に厨房から出て行ったので、「さっ・・・お肉も来た事だし我々も夕飯の下拵えしますか?」
「そっすね」
カチャカチャ、トントントン、グツグツグツ・・・
いつもと同じ様にお料理をする音が厨房に鳴り響き始めた。
こうしてカターニア公爵家とベン精肉店との「今月」の戦いの幕が上がったのだった。
皆んなのスキッ腹は、たとえ1時間たりとも待ってはくれないのだ。
いや8歳児が何してん?!とのツッコミは最早誰からも入らない。
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「村の石切場増築工事現場に出現する死霊達の説得。成功報酬200万円(相当)」
朝方、ジャックが霊視さんαの参拝ついでに仕事内容が書かれた依頼書を置いて行ったので内容を読んでいる巫女セリス。
どうやら最近のセリスは巫女姿がお気に入りの様子だ。
ちなみに巫女服は母バーバラにおねだりして作って貰った。
セリスの手芸のスキルは「並」なのだが8歳児の小さな手では彫刻は何とか出来るが細かい裁縫はまだ出来ない。
彫刻も無理じゃね?と思うがセリスの裏スキル「霊樹」が発動しているので彫刻刃で木の表面を撫でるだけで思う様に彫れてしまうのだ。
「んー?死霊の説得って何?」
村長から提出された詳しい内容が書かれている資料を見る。
『○○村の石切場の増築工事に反対する森の死霊達の説得をお願いします。
しかし実の所で彼らは私達の祖先にあたる死霊達なので強引な除霊はしたくありません。
死霊達の増築工事への反対抗議運動も「自分達が知る村の昔ながらの自然を守りたい」との純粋な願いで死霊達に悪意はありませんが、石が枯渇してしまっては治水工事が進みませんし工事業者が怖がって逃げてしまっています。
もし死霊の説得に成功したら報酬として200万円(相当)をお支払い致します。
交通費などは要相談で。
○○村村長』
「う~ん?死霊達に悪意が無いなら危険は少ないのかな?」
とりあえずこの仕事の話しを聞いて見るつもりのセリスだった。
「お嬢様?今日は丸一日準備があるから出掛けてはダメですよ?」
冒険者ギルドからの依頼書を読んでるパツキン幼女巫女の髪を梳かしている専属侍女のミミリー。
色々とツッコミ所が満載である。
「さすがにブッチしたら親に泣かれるからどこにも行かないよ?」
今日はセリス9歳の誕生日会が有る日なのだ。
この日の夕方に行われた「セリス誕生日会」は別枠にて投稿します。
次の日、セリスは参拝に来たジャックに「この仕事受けるよ~」と仕事を受注して、更に次の日にフェナを伴い冒険者ギルド手配の馬車に揺られて3時間かけて○○村に来た。
久しぶりに予想される危険度が低いのでジャックは同行しない。
「これが冒険者ギルドからの依頼受注の証明書です」
村に到着すると早速フェナが○○村の村長に冒険者ギルドの依頼受諾の書類を手渡す。
一応この仕事は大人のフェナが受注した事になっている。
セリスは知らなかったがフェナはAランクの冒険者でもある。
「おおっ!お待ちしておりました!しかもAランクの方に来て頂けるとは」
思わぬAランク冒険者の登場に嬉しそうな村長さん。
「あの?仕事の前に村長さんに質問があります」セリスがスッと手を上げる。
「はいはい何ですかな?お嬢様」
「この村の名前・・・本当に○○村で良いんですか?」
「○○村で宜しいですよ、中々個性的な名前でしょう?」
「・・・そうですか」マジで村の正式名称が「○○村」だった。
「ちなみに隣村が「〒〒村」なんですよ」
「そこは嘘くんじゃねえ。そもそも何で読むんじゃい?郵便局郵便局村か?」
もう面倒臭くなったので、とっとと村長に問題の石切場増築工事現場に案内してもらう。
「うわー?これは酷い・・・」
到着した途端に霊視さんαを発動して唖然とするセリス・・・
いるわいるわ死霊が・・・石切場全体にみっちりいるわ~死霊が。
「これなんなん?!どう言う事?この数は異常だよ」
混乱したセリスがフェナに尋ねた瞬間!
「おのれ!悪霊退散!エクサホーリー!!」
いきなり最上位浄化魔法を死霊達にぶちかますフェナ!
ピカリーーーーーンンン!!
・・・・・・・・・・オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・
フェナの対魔聖術の一撃で目に見えていた大半の死霊が成仏してしまった・・・おい説得云々の話しはどうした?
「はっ?!つい!」
ついつい聖女時代のクセが出てしまった様子だ。
フェナは「問答無用聖女」の異名を持ち大量の幽霊を見ると条件反射で除霊をしてしまうと言う、とてもはしたない体なのだ。
もうお前が「幽霊退治屋」をやれば?
「つい!じゃねぇよ!散々穏便に説得してくれって言われてんだろ!いきなりエグい魔法を使うな!
てかアンタは本当になんでカターニア公爵家に仕えてんの?!」
「何で仕えているかと聞かれると奇々怪界なお嬢様を見ていて飽きないからですね」
「もう少しこう・・・「愛おしいお嬢様が放っおけません」とか何か有るんでないかい?」
すると凄い勢いで死霊が飛んで来て、《おい!最上位の聖女なんて反則だろ?!》と生き残った?死霊が猛烈に抗議して来ましたよ!
「これはすみませんでした、でも「反則」ってなによ?」
死霊に反則だとか言われても困るね。
《一応、依頼内容は「説得」だろ?!空気読めよ!これからお前が苦労して俺達を説得する流れだろ?!》
「なしてアンタが依頼の事を知ってるか分からんがその通りですね。
重ねてすみませんでした。じゃあ今から説得を始めます」
《淡々としてんなぁ嬢ちゃん》
些細なイレギュラーは有ったが(80%消滅)死霊への説得の仕事を開始するセリス。
「それで?死霊さん達は何でここに集まってるんです?」
《ここは死霊にとってパワースポットだからな。消えない様に霊体へ燃料補給してんだ》
「なるほど・・・それで何で石切場の増築に反対なんですか?」
《石切場を増築すると霊力の力場が変わってパワースポットの効力が落ちるからだな》
結構切実な問題だった・・・問題なのだが・・・ある点が腑に落ちんセリス。
「死霊達さんは成仏をしないんですか?」
そうこれだ。
ここまでハッキリした意思が有る死霊も珍しい。のっぴきならない明確な理由でも有るのだろう・・・
《そんなモン、成仏しちまうと女風呂を思う存分に覗けないからだな》
「よぉしフェナ!もう一回エクサホーリーだ!このアホンダラを蹴散らせ!」
「了解!エクサホーリー!!」ビカビカビカビカーーーーー!!!!
《おおおおおおおお??・・・おおおお・おお・・・・・・・これは?
これはメッチャ気持ちいいーー?!》
こうして覗き魔の死霊は滅びた・・・
ってか、「エクサホーリー」の連射とかフェナの聖力はどうなってんだ?
消えたスカタンの事はとっとと忘れてセリスは残ってる連中にも「幽霊さんが成仏しないのはなぜ?」と幽霊に尋ねて回る。
《そりゃ俺も女の着替えを覗きたいから》「アホか!覗くな!エクサホーリー!!」
ピカリーーーーーーーーーーン!《あふぅーーーーん??》
《幽霊だと女のスカートの下から覗きたい放題・・・》「ちっ!お前も変態かぁ!エクサホーリー!!」
パアアアアアアアア・・・・・《気持ちいーーー》
《赤毛の君可愛いね?高く買うから君のパンツを・・・」「誰が売るか!くたばりやがれ下さい!エクサホーリー!!」
シュバーーーーーーーンン!《ほへぇーーーーー??》
《俺はどっちかと言うと男の・・・》「論外!!エクサホーリー!!」
パッカーーーーーン《おおー?女に嬲られるのもーーー??》
《私は100年前に死んだのだが・・・若い頃に死別した彼女とこの場所での再会の約束をした事が心残りでね・・・》「エクサホーリー!!」
パアアアアアアアア・・・《ああ・・・やっと君の所に行け・・・る・・・》
「フェナちょっと待て!今の奴、結構まともな奴じゃ無かったか?!」
「あっ・・・つい」
「・・・うん、・・・まぁ、・・・やっちまったのは仕方ない、次ぃ!」
《ハアハア可愛いねぇ、僕ちんは、君の様な金髪ロリロリウルルンな幼女が来るのをずっと・・・》
「アホかぁ!とっとと死ねボケェ!!!!!!」「過去最強クラスにキモい!!エリアエクサホーリー!!!」
これ以上、変態達の相手をしたくないとばかりにフェナは広範囲浄化魔法を発動させる!
ビガビガビカリーーーーーーーーーーーンンン!!!
《あっふぅーーーん》《すっごーーーーーい》《さいこーーーー》
とぉーっても良い笑顔で消えて行く死霊達・・・
こうして一応は全員に成仏をしない理由を聞いて回ったのだが、まともな理由だったのは1人だけだった・・・
その死霊もフェナが問答無用で消してしまったがね。
森の石切場は完全に浄化された。・・・・・・・・もちろんフェナ1人の力でね!
「村長さん・・・」
「はい・・・」
「無事に任務完了したから金を寄越せ」
「はい・・・」変態揃いのアホな先祖達にドン引きしている村長さん。
ちなみに最初の変態は村長さんの曾祖父だったのだが知らん人のふりをしていた。
こうしてセリスは200万円(相当)の金貨をゲットしたのだった。
自分では何もしてないが部下の力は自分の物、自分の力は自分の物なのだ。
霊視さんαも霊樹さんβも最初から様子を覗いていたが終始ノーコメントだった・・・