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幽霊退治屋セリスの受験。その1

違法なポーカーハウスを作ってエヴァリスト宰相からヤキを食らうなどしていたら幽霊退治屋セリスも16歳になってました。


《あれ?その割にはご実家の人達は騒いでませんでしたね?

えーと、6を3枚です》


精霊ミモザちゃんもかなり安定化してセリスとの遊びも初期の様に「うおおおおー」っと全力で遊ぶと言うよりはまったりと遊ぶ感じに変化しています。

ポーカーハウスの副産物の量産に成功したトランプを使って念願だった大富豪をリボルノ伯爵家のメイドさんとミモザちゃんとフェナと楽しんでます。人数が多い方が楽しいからね。


「これからは妹と弟達の社交界デビューラッシュだからね。

やっと私はお役御免、周囲からは放置状態なのよね。

デビュータントを過ぎた令嬢なんてこんなものです。

じゃあ8を3枚」


「あーん。セリス様、ここで八切はずるいですよー」

八切とは8の数字を出すと次の人を強制的にパスにさせるローカルルールである。

ちなみに「質流れ」と言う7の数字で要らないカードを1枚、次の人に押しつけるなんてローカルルールもありますね。


「うっ・・・出せるけど出せないです。パスで」

おそらく最強の2をジョーカーを加えて3枚抱えているフェナ。ここで出すのはさすがにもったいない。


《私もパスです》

推測するとキング3枚持ちに2も保有して手札が良さそうなミモザちゃんはここは様子見かな?


現在のカターニア公爵家は次女と三女の双子令嬢が来年デビュータント迎えるので長女に構っている余裕はない。

デビュータントが終った令嬢は婚約者が居るなら結婚の準備、居ない令嬢は夜会に参加するなどの婚活に勤しむのが普通で割と時間的な余裕が出る。


このアホ娘は婚約者が居ない事をいい事にその婚活時間を使ってポーカーハウス事業に勤しんでいたんですね。


するとセリスが不敵な笑いを見せて「ふっふっふっ。皆の者よ!我のカードに平伏すが良い。エース4枚で革命でーす」革命だ!革命が起きたぞ!


《いやーーーー?!》「なんて事をーーーーー?!」

手持ちの強カードが瞬時にゴミと化して悲鳴を上げるフェナとミモザちゃん。

あれ?しかしメイドちゃんの事を忘れてないかい?


「あれ?さっき私、八切で悔しがってましたよね?9の4枚で逆革命でーす」

そうなるよね?革命が起こったので9がエースより強くなります。そして再度の革命で元の強さに戻ると。


「メイドさん!ナイスー!」《レンちゃん偉い!》


「あーーーーー!そうだった!しまったぁーーー!」


案の定メイドさんにカウンターを食らってアッサリと強カードをドブに捨てたセリスでした。

完全なる作戦ミス、「腐ってやがる、エースを出すのが早過ぎたんだ」ってやつである。

コイツ残りは3や4や5をたくさん抱えてやがるな。後は何も出来ずにいもづる式に負けて大貧民確定だね。


「ふふふふ~セリス様。罰ゲームの「ロシアン大福」楽しみにしてて下さいね。

厨房のみんなで頑張って特別辛く仕上げましたから!」

テーブルにあるお菓子タワー「スリーティアーズスタンド」の上で邪悪なオーラを発している9つの大福が見える・・・この中に一つ激辛大福が混じっているんだね。


「そんなに頑張らなくて良かったのにーーーーー!!!」


こんな感じに念願だった大富豪を堪能しているセリスでした。楽しそうで良かったね。


そんなのんびりした日々を過ごしていたある日の出来事・・・


「飛び級・・・ですか?」


「そうですセリス様にはもう王立学校で教える事が無いのでアカデミー(大学)に挑戦してはいかがですかの?」


突然、仙人校長先生から呼び出しを食らって「何事?!」と思って校長室へと来ましたら・・・まさかの校長から「もはやお主には教える事は何も無い」を頂きました。


確かに王立学校は日本で言うところの高校までの勉強をする所なんですよね。

そしてセリスは入学する時には公爵家での家庭教育でその課程を半分以上終わらせていたのです。学校の授業は勉強したところの復習って感じだったんだね。


16歳でアカデミーに上がるのは貴族家の子息令嬢では特別珍しい事じゃ無いんです。

飛び級はある意味で頭脳派の王侯貴族の嗜みとも言えます。王立学校を留年する奴なんて滅多にいません。


《ぐおっ?!》


おや?なんかヤニック国王陛下の「めっちゃ痛いところを突かれたー!」的な呻き声が聞こえた気がしました?


「うーん?でもそれって受験・・・ありますよね?」

いくら成績が良いセリスでも受験勉強無しで合格出来るほどアカデミーは甘いところではありません。

下手に受験に失敗してしまうとカターニア公爵家の品位を落とすので笑えないのです。まして浪人するなど「王侯貴族としてあり得ない」のです。


《ぐお?!ぬぐおお?!》

おや?またしてもヤニック国王陛下の「だってしょうがねえだろ?!」的な呻き声が?


「両親と相談して決めさせて頂きますわ」とりあえずはこう言うしかないねぇ。


それにセリスには仕事もありますからねぇ・・・

それにしてもコイツは普段は冷静で慎重な判断出来てるのに何で突然ポンコツ化するんだ?



・・・・・・・・・・・・・・・・



《受験・・・ですか?セリスお姉様?》

とりあえずセリスはまずは雇い主の精霊ミモザちゃんに相談する事にしました。


「おそらく公爵令嬢として今回のアカデミー挑戦は避けて通れない道だと思うんです。

そして受験勉強が始まるとミモザちゃんとの遊び時間も減るのは明白でして・・・」


《わたくしは是非とも挑戦するべきと思いますわ》


「あら?アッサリとOKが出ましたよ?良いの?」


《わたくしの存在もセリスお姉様のおかげで安定しておりますし、今度はセリスお姉様もご自身の将来を大切にするべきと思いますわ。

僭越ながら、わたくしも協力させて頂きますわ》


「ミモザちゃん!おねいちゃんは感動したよ!

ミモザちゃん・・・本当に強く・・・なったのね」


というわけで、「アカデミーに挑戦します」と両親と仙人校長先生へ宣言したセリス。

この宣言が思わぬ地獄を招くとも知らずに・・・


「ああー・・・うわあー・・・」貼り出された中間試験の順位表を見て間抜けな声を上げるセリス。


アカデミーの受験を決めたセリスだったが精霊ミモザちゃんと遊び倒す生活を送っていたセリスは学力が低下していた・・・

今までの試験では常に10位以内だったのが今回の試験で36位まで落ちたのだ。


「うーん・・・これはさすがにヤベェっす」貼り出された結果に頭を抱えるセリス。


成績が落ちても精霊ミモザちゃんと遊ぶ事自体は国益に適うからと王家からも公爵家からもお墨付きを貰っているので特に問題は無いが・・・このままだとアカデミー(大学)への進学に大いに問題が出るのだ。


学力的に?いいえ学力的には36位でもアカデミーの進学には問題ありませんよ?

問題なのは奨励金の方だ・・・やはりコイツの問題は金なのか。

なにせアカデミーの奨励金の対象が成績上位者30名ほどなので36位は結構レッドゾーンなのです。


「よし!ならば朝は早登校して図書館へ行って予習しよう!」

朝早く登校して予習かましちゃる!そう意気込むセリス。

何だかんだで根は真面目なのだ。金が絡むとおかしくなるだけで。


しかし軽く朝早くと言ってもセリスの朝は特別早い・・・4時半の起床と農家や市場の人並みである。何せ飼ってる鶏共が起きる前より早く餌を用意してやらんとアイツらはめっちゃ怒るのだ。

「おらああああ!さっさとメシ寄越せー!」の大合唱が始まる。


餌やりくらい使用人に任せれば?とも思うがセリスにそういう発想は無いのだ。

自分の仕事だと認識するとテコでも譲らない頑固者の一面がある。


「ふう・・・OK」


鶏共への餌やりが終わると自家農園に異常が無いかを見て回る。


農園の管理はさすがに1人じゃ無理だから専属の農家の人を雇って12人体制の管理なのだ。

・・・専属農家12人体制・・・この時点でカターニア農園の規模がかなり大きくなったのが分かる。


最近市場ではカターニア印の野菜と果物が人気なのだ。


「んじゃ、後はよろ~」


農園の点検が終わると牛舎に行って乳搾りだ。

これを怠ると乳牛がお乳を出さなくなったりお乳が炎症を起こすので絶対にやらないといけない作業なのだ。


これも5人の酪農家を雇い35頭の乳牛のお世話と乳搾りから出荷へと朝から大忙しなのだ。

最近は市場でもカターニア牛乳が供給過多気味なので今年からチーズの生産も始めている。


「うおおおおおお!攪拌じゃあああああ!!!」

ツナギを着てグルングルンとハンドルを回す公爵令嬢。


「おおおお!今日もお嬢が燃えてるぜ!うおおおおおお!」


今日も朝早くからチーズ職人達の雄叫びが響く。


「ちっくしょう!絶対に電動化してやるーーー!」


でも酪農家5人って・・・尚更セリスがやらなくても良くね?

しかしセリスには・・・以下同文。


「おおおお・・・今日も疲れた・・・」


ふらふらと邸宅に帰って朝風呂に入って登校の準備をする。きっちりと6時30分。

この頃になるとようやくフェナやミミリーを始めとした使用人が起床して来る。


ちなみにセリスは自分の作業時間に使用人を無理に付き合わせていない。

早出残業手当もバカにならないからね。


風呂に入って朝食を摂って少し椅子に座り仮眠を取ってから7時30分に邸宅を出て7時45分に学校へ登校して8時45分から授業開始の流れになる。


成績が落ちた分、この仮眠時間を無くして7時に登校しての約1時間を予習の時間にぶち込むつもりなのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・いや朝からハードスケジュール過ぎじゃね?!


部活をやっていないセリスは学校終業15時になると速攻で邸宅に戻って鶏の餌やり(夜メシの部)をする。


それから牧草地から放牧地の牛達を牛舎に戻してからまた風呂に入り身だしなみを整えてから17時頃にミモザちゃんの所へ出陣だ。


ミモザちゃんの所で遊んでから帰宅するのが毎回きっちりと20時、そこから風呂入って(夜メシはミモザちゃん宅から支給)各種の自己勉強して寝るのが22時くらいだ。


これが公爵令嬢セリスの大体の1日のルーティンなのだ。


・・・・・・・22時に就寝して4時半起き?いやー?どう考えても学力低下の最大の原因は「鶏」「牛」「農園」だろ?1日の時間の中でこの3つの割合が大き過ぎるんじゃ無いかい?

「お前は農家か酪農家か?」と言いたくなるくらいに大き過ぎると思います。


何より通常の令嬢業務が何一つ1日のルーティンに入っていない所が尚更恐ろしい。

普通の令嬢なら「お茶会」「刺繍」「読書」「夜会」などのワードが入るのが当然なのだがどこにも見当たらない。このザマで公務の時は完璧に公爵令嬢業務をこなすので重ねて恐ろしい子だ。


しかしながら・・・ただでさえ限界ギリギリカツカツのルーティンに加えて早朝図書館勉強なんてぶち込むとどうなるか?


「あれ?・・・これ不味いかも?」・・・・・・・・バターーン!


「きゃあああああああーーーーー?!セリス様が倒れたーーー!!」


当然ながらセリスは早朝勉強を始めて一週間後には疲労と寝不足が原因でブッ倒れて入院した・・・




「あなたは馬鹿ですかーーーーー?!」

病院のベッドに寝るやつれたアホ娘を見てバーバラ夫人も激おこである。


「すみません・・・」


ブッ倒れた原因が農業や酪農、チーズ職人業務のルーティンだと両親にバレて農園と鶏小屋と牛舎への訪問は全面禁止となった。


そりゃそうだ。


セリスの1日のルーティンから「鶏」「牛」「農園」「チーズ職人」のワードが消えた途端にセリスの期末テストの成績は7位に復活した。


・・・ミモザちゃん全然関係無いじゃんか。


《セリスお姉様も大変そうですね》


「ふっ・・・若さゆえの過ちよ」・・・若いとかは関係ないかと。ただのアホです。


《わたくしもセリスお姉様の勉強のお手伝いが出来れば良いのですが・・・

受験の為に身体を悪くされてもダメなのでは?》


生前、ミモザちゃんも病弱なりに勉強も頑張っていたのだが何分にも今のセリスの方が学年が上になったので分からないのだ。


・・・あれ?生前のミモザちゃんの方が年上だったの?


「あっ。受験の為だけに勉強している訳ではないから大丈夫です」


勉強を頑張る優等生のセリスだが、これはあくまでも「将来の金儲け」の為に知識を頭に突っ込んでいるのだ。


生きる為に勉強をするという意味では究極的にはセリスの勉強方法は正しいのだがもう少しオブラートに包んで欲しいモノである。


《今度、バーバラ様とお話しした方が良いかしら?》

それなりにセリスと付き合いミモザちゃんもセリスのアホな面を理解して来たのだ。



この日は何事も無くミモザちゃんとお茶会してきっちり20時に帰宅した。



「時間にだらしない者は、お金にもだらしない」がセリスの持論なのだ。

しかしあえて言うが「自己の体調管理も出来ない者は、お金の管理も出来ません」です。

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