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お見合い騒動。

無事に15歳の誕生日を迎えたセリスにもデビュータントの日が迫っていた。

戦時下と言う事もありお客さんを呼んでの誕生日会は自粛して家族だけでの質素なお祝いだったがセリス的には弟妹を構い倒す事が出来て楽しかったので満足していた。


しかしデビュータントだけは回避不能の公式行事。

麗しの令嬢達にとっては、その日を指折り数え待つ晴れの舞台なのだが腐った令嬢セリスにとっては迷惑千万のクソイベントに他ならない。


なぜ迷惑かと言うと・・・


「セリス様も成人しましたのでそろそろ婚約者など考えては?」


「わたくしもそう思うんですけど旦那様がなかなか・・・」


「ははははは。閣下のセリス様への溺愛ぶりは有名ですからね」


戦時中の公務で不在の当主、父コーバ公爵の代役でお客様の対応をしている母バーバラ夫人がチラリと控えていた侍女に目線を配る。

「セリスを連れて来なさい」そう目が訴えている。


バーバラ夫人の視線を受けて音も無くススススと客室を退去する侍女達。

セリスVS侍女さん'sによるかくれんぼの開始である。


今まであの手この手を駆使して誤魔化しまくっていたがデビュータントのエスコートを務めるのはやはり婚約者である事が望ましい。

父コーバ公爵の方針で成人するまでは婚約者など決めてはいなかったが成人した以上は貴族としての責務を果たさないと行けない。


今日も自分の息子(セリスの一つ年上)をセリスのデビュータントのエスコート役に売り込みに来たクロスフォード公爵家の直系筋の伯爵閣下とイケメン子息から逃げ回っているセリス。


誰が見ても彼がかなりの優良物件なのは間違いないのだが、あんましセリスはイケメンとかに興味は無いらしい。

しかし他派閥の有力伯爵閣下を無下には出来ないので派遣された侍女達は全力でセリスをとっ捕まえないといけない。


実の所で公爵令嬢にして容姿端麗でスタイル抜群、頭脳明晰、行動はオッサンのセリスはメチャクチャ男性からもてるのだ。ただ余りにもセリスが男に興味を示さないだけで・・ん?いや?イノセントには好意を示してんな?・・・もしやオッサン好きか?!


ツカツカツカツカと複数の靴の音が公爵邸の廊下に響く。

「ミミリー?お嬢様はどこに?」完全にハンターモードに移行した侍女さん。

彼女は昔、王家の諜報機関に所属していたらしい。


「フェナと一緒に捜索中ですが最近は狡猾になって来て・・・すみません一瞬の隙を突かれて」セリス探索に乗り出した侍女さんがセリス専属侍女のミミリーにセリスの居場所を尋ねるが逃げ足が異常に早くてロストしてしまっている。


「フェナ?髪飾りの反応は?」

セリスがいつも付けている髪飾りは誘拐等の万が一の為にガイドビーコンが装備されている。


「それが・・・髪飾りはお部屋に残されてました」

息子のウォーレンが騒いだ隙を突かれたフェナ。どうやらセリスとウォーレンは裏で結託していると思われる。


「そうですか・・・困ったお嬢様ですこと」


フェナが息子に気を取られ、ミミリーが5分間部屋から退出してた隙に髪飾りを置いて逃げてしまった忍者令嬢セリス。


ガチモンの悪霊退治やネクロマンサーとの戦いを経て培ったセリスの危機管理能力は通常の公爵令嬢のソレではない。


「テリアは西館をマリサは東館、ミミリーは北館、わたくしは南館より一斉に中央館に向かってお嬢様を探索します。フェナは農業エリアと牧畜エリアの探索を。残りの手の空いてる者は各玄関を守りなさい」

テキパキとセリスを追い込む作戦を指示する侍女さん。


こんな感じに週3ペースでセリスと侍女さん'sの攻防戦が繰り広げられている。

最初の頃はセリスの全敗だったが幽霊退治屋セリスは学習能力が有る女。最近の3戦はセリスが勝利している。


勝利条件とは無論「お客様が帰るまで隠れる」である。

と言うか最近、公爵邸に来るお客様の95%は、お見合い絡みなので否応無く戦いが勃発している。


今のセリスは国内全方位からのお見合い爆撃に晒されているのだ。

と言うか各家はセリスが成人するのを待っていたとも言える。


そんで逃亡令嬢セリスが今どこに居るかと言うと・・・


「お嬢様?逃げるにしてももう少し逃げ方を考えた方が・・・」


「もう!ハッキリ言ってお仕事の邪魔ですわ!」


「しーーーー!!!」

洗濯待ちのシーツの山の中に潜り込んで顔だけ出して周囲を警戒しているセリス。


「もう!一緒にお洗濯しちゃいますよ?」洗濯メイドさんに怒られるも・・・

「お洗濯モードは優しい手揉み洗いにしとくれい!」意地でもここから動く気がない洗濯物令嬢セリス。


ここから余談になるがピアツェンツア王国での一般的な洗濯は高級ドレスや絹製品などの繊細な物以外は基本的に全自動洗濯機に洗剤と洗濯物ブチ込みスイッチオン!で終了である。

最新のセンサーが快適なお洗濯をお約束します。


一般家庭でも昔の様に冬の寒い日に井戸から水を汲みタライを使って手洗いする事は殆どない。洗濯機を買えない家庭もクリーニング屋さんを使います。


完全に魔道具によるオートメーション化をされているので洗濯メイドさんのお仕事は主に魔道具の操作でどちらかと言うと魔道具技師さんと行って良い。


そしてなぜ全自動洗濯機が主流になったかと言うと、かつて洗濯が趣味の魔王が魔道具による全自動洗濯機を開発して日本円に例えると3万円前後の値段で売り出した所・・・「お値段も手頃でこりゃあ良いものだ!」と爆発的な勢いで世界中に普及した。

低所得者層でも買える値段で出す所が狡猾だね。

この洗濯機事業でめっちゃ儲かった魔王は「洗濯機クイーンのミミズク」との異名を持っていた。



それでは当時の洗濯機の開発風景を覗いて見ましょう・・・・・・・・・・



ジャアアアアア、ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン

《あーーーーー・・・冷たくて気持ち良いーーーー》ゴウンゴウンゴウン


「・・・・・・アンタ何してんの?」ゴウンゴウンゴウン


《見て分かんない?丸洗いしてんのよ》ゴウンゴウンゴウン


「丸洗いって・・・自分の身体を?」ゴウンゴウンゴウン


《そおよん》ゴウンゴウンゴウン

銀髪エルフの前には自分で作った試作型大型全自動洗濯機に首まで浸かり丸洗いされているグリフォンの魔王の姿が・・・まだ試作段階なので音がメッチャうるさい。


「何で?」ゴウンゴウンゴウン


《何でってそりゃ身体洗うのが面倒くさいからじゃん?》ゴウンゴウンゴウン


「掃除と洗濯が趣味の綺麗好きなのに自分の身体を洗うのを面倒くさがるなんて変な子ねぇ」ゴウンゴウンゴウンゴウン


《毛の無い生物に言われたくないわよ。お布団30組分の毛繕いって大変なんだからね?》

ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン


特にグリフォンの魔王の毛はもっさりしているので自分で毛繕いしたら3時間以上掛かるのだ。


「毛の無い生物言うな」ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン

「て言うかさ?人化してお風呂に入れば良いだけじゃないの?」ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン


《人化したら羽は異空間に格納されるからお風呂に入っても汚れたままなのよ》ゴウンゴウンゴウン、つーかマジで洗濯機の音がうるさくて会話が聞き取れん!


「アレそんな仕組みになってたんだ・・・それよりもさ?なんか洗濯機が暴走してない?」ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン


《ん?何か言った?あれ?なんか音が?》ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン


「あれ?・・・・・何か・・・・ヤバい?」ゴウン!・・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・・


チュドオオオオオオォーーーーーン!!《ぎにゃーー?!?!》「きゃああああ?!?!」


「あら?最後に自爆してお洗濯物を乾かすなんて斬新な洗濯機ねぇ・・・」


「シルフィーナちゃん!優雅にお茶しながら見てないでエリカを助けて!!」

グリフォンの魔王もろとも爆発炎上した洗濯機!つーかマジ危ねぇ?!

しかしさすがは魔王。爆発に巻き込まれていてもノーダメージ・・・・・


《毛毛毛毛毛毛毛毛がぁあああ?!燃えてるーーー!!》

ノーダメージじゃねえ!尻尾ーーーー!!尻尾が燃えてんぞーーーー?!


《お尻があっつーーーーーーーい?!?!?!》


「エリカーーーーーーー?!?!」


「毛が全部燃えちゃえば洗濯する手間も省けるんじゃない?」


《酷え?!?!》

すみません。もっさりミミズクはコイツのアイデンティティなんで丸坊主はちょっと・・・


こんな感じに自爆に次ぐ自爆を繰り返しながら衣類と衣類を着ている生物も一緒に洗える改良を重ねたお母さんと子供にも優しい画期的な洗濯機なのです。

勿論、丸洗い中のお子様が溺れても窒息防止魔法陣を備えております。


その時代から更に改良されているセリスの家の洗濯機は「高速」「普通」「手揉み洗い」の3つのお洗濯モードがあります。


「はいはい。お嬢様は、お嬢様のお仕事して下さいまし」


「今日いらしている伯爵子息様ってイケメンって話しですよ?ご挨拶ご挨拶」


「いやーーーん?!」


とは言えドレス姿の主人を丸洗いする訳にいかずに洗濯メイドさんから洗濯室の外へと放り出されたセリス。


「うう・・・このまま彷徨いてたら絶対にお母様の手下達に見つかる・・・」

現在、バーバラ夫人の専属侍女さん3名とミミリーにフェナが逃走令嬢セリスを探しています。


「よし!「カターニア軽便運送」へとバックれましょう!」


この頃になるとセリスは王都の複数箇所に隠れ家を持つ様になります。

まあ、殆ど隠れてないんですけどね。


セリスも成人したので自分で不動産契約が出来る様になったからである。

何で幾つもの隠れ家を持つのか?そりゃ円滑に様々な商売をする為に決まってます。


セリスの家・・・に限らず王城と貴族街は王都中心部から結構離れていて商売に向いてない立地なので王都市街に部屋を持つのが事業を行っている貴族達の慣例になっている。

なので割と簡単に両親から隠し部屋を持つ許可を得ています。


セリスの言う「カターニア軽便運送」も、その内の商売の一つでセリス肝煎りの事業だ。

3年前に会社を設立して今は父コーバ公爵が代表取締役を務めています。


そのカターニア軽便運送の倉庫内管理室の奥にはセリスの隠し部屋(10畳の居間と6畳と4畳の2間)が有るのだ。

セリスが不在の時に使わないのも勿体無いので現在は女性アルバイト配達員の寮になっています。


セリスが隠し部屋、隠し部屋と言ってるだけで父コーバ公爵も母バーバラ夫人もこの部屋の存在は知ってます。何せ不動産屋さんとの契約主なので。


ただ自分の娘がその女子寮に入り浸っていると思ってないだけです。

カターニア軽便運送の話しについては後日詳しく書きます。


「ほう?やっぱりアソコに逃げる気だったんですね?お嬢様」

背後からガシッと両肩を掴まれるセリス。「・・・あ」セリスの額に汗が伝う・・・


「ミミリー?違う、違うのよ?私はお仕事に・・・」


「軽便屋でのアルバイトは旦那様から禁止されてますよね?」


「・・・・・・・・・」

配達のバイトに血道を空け過ぎて両親から怒られバイト禁止中のセリス。


「さあ!トルーマン伯爵閣下と御子息がお待ちですよセリスお嬢様」


「おほほほほ、ぜーんぜん閣下がいらしていらっしゃるなんて知りませんでしたわ~」

そう言いつつドレスに隠れた腰を落とすセリス。


「ではお嬢様、こちらへ・・・お嬢様?お嬢様ーーーー!!!

こらあ!当たり前の様に逃げんなぁーーーーー!!」


こうして往生際悪く走って逃走しようしたが母バーバラに見事に阻止された。


具体的にどう阻止されたかと言うと、ドドドドとミミリーから逃げようと猛烈な勢いで廊下を走るセリスに対してスッと横から現れたバーバラ夫人の長い足でチョンと足を引っ掛けられて、「いやぁああ?!」と、すっ転んでドオーーン!「ふぎい?!」っと柱に激突して鼻血ブーになった。


「お母様?!いくら何でもこれは酷いと思います!」鼻血ブーのガチ泣き令嬢のセリス。


「貴女の扱い方がようやく分かって来たと言って下さいまし。

貴女にはこれくらいの実力行使をしないと人の言う事を聞かないでしょう?」


「確かに!」母からの指摘に妙に納得行った鼻血ブー娘。

そもそも娘のネクロマンサースレイヤーの称号獲得にバーバラお母様も激オコのなのだ。

ただでさえ怒っている所に淑女としてあるまじき勢いで廊下を走る娘を見たら足の一つも引っ掛けたくなるだろう。


「?!?!いつもセリスお姉様に甘々だったお母様がついに実力行使を?!

セリスお姉様はやっぱり素晴らしいですわ!ねえステファニー?」


「クリスティーナ見て下さいまし!セリスお姉様を見るお母様のあの冷たい視線!

さすがセリスお姉様!素晴らしいです」


「妹達よ!具体的にどこがどう素晴らしいのかなぁ?!」


ただ優しいだけだった箱入りママを熱烈教育ママに変貌させた姉を称賛する双子の妹達。


ちなみにセリスは9人兄弟で(後に妹が産まれて10人兄弟になる)

セリス以外の全員が知性的な文系の子達でまともな公爵子息に公爵令嬢なのだ。

しかしやはりセリスの弟妹達。頭がおかし・・・異彩を放つ長女セリスが大好きなシスコン兄弟なのだ!


・・・・・・・・・・・え?!まとも?!


結局、捕まった血塗れセリスはミミリーに頭を引っ叩かれてから風呂にぶち込まれて「ミミリーちゃんのグワシフルコースの刑」に処せられた。


「それにしても・・・公爵令嬢の顔面が血塗れって・・・」

セリスの顔面に付いた鼻血を洗いながらさすがにドン引きしているミミリー。


「ずびまぜん・・・」今回はさすがに反省している流血令嬢。


しかしセリスが風呂から上がる頃には来訪していた伯爵父子は帰っていた・・・

特に何かセリスについて言ってはなかったが、大騒ぎした挙げ句の果てに最後は柱に激突して血塗れになったセリスを見てドン引きしたのだろう。


「ふっ・・・勝ったぜ」


「お嬢様・・・せめて前は隠して下さい・・・モロ見えです」

ミミリーにタオルで簀巻きにされるセリス。


子供の頃によくやった「全裸で大股開きの仁王立ち」も、今のボン!キュ!ボン!のセリスがやるとメチャクチャエロい!


「そんなに辺り一面に色気を振りまいていたらその内本当に変態に攫われますよ?」


「あい・・・すみません」あんまし現在の自分の色気に自覚がないエロ令嬢。

こうしてお見合い騒動に勝利したセリスだったのだ・・・顔面は血塗れになったけどね。



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