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そしてパツキン少女がボタノ炭鉱でネクロマンサーとガチ決戦をかます。その3

「それにまあ・・・今はこの格好ですからね。令嬢も何もありません」

セリスの今の格好は謎のエルフが用意してくれた冒険者の装備で固めている。


「すっごくエルフっぽいお姿ですね!」


「可愛いです!」


「えへへへへへへ」


エルフっぽいではなくモロにエルフの女王がこしらえた装備である。

見た目は地味だがイノセントが見た時に絶句するレベルでの高品質品揃いなのだ。


長い金髪の髪は「邪魔臭え!」と丸めてお団子にして木製の帽子をかぶっている。

木製なら兜じゃね?と言われるとこれは丸太をくり抜いて作る木製の兜とはちょっと違い柔軟で頑丈な木の皮を重ね張りして作っているので兜ではなく帽子なんだそうな。


余談だが帽子のワンポイントの飾り羽で付いているグリフォンの羽は今は亡きグリフォンの魔王の抜け毛である。ただの抜け毛なので特別な効力などは無い。


もう要らんわ!とエルフが幾ら言ってもグリフォンの魔王は毎年毎年抜け毛の季節になると大量の羽をエルフのベッドの上にプレゼントして来たのだ。


魔王の死後100年近く経つが今でも倉庫の中には大量の魔王の羽の在庫が有る。



「だからこんなにどうすんのよ?!これ!つーか人のベッドの上で毛繕いすんな!」

仕事から帰って来たエルフのベッドの上にはモッサリと山積みになっている羽毛が・・・このままでは寝れん。


「何かに使えんじゃね?知らんけど」

毛繕いも終わり人の姿になって優雅に茶などをしばいていやがるグリフォンの魔王。

くすぐったかった冬毛を綺麗サッパリ全部引っこ抜いてスッキリ魔王なのである。


「・・・仕方ない・・・また羽毛布団にして売っぱらうか・・・面倒くさいなぁ・・・もう!」ぶつくさ言いながらも羽毛布団用の羽の選別を行うエルフ。

このエルフは何だかんだ基本的には貧乏性なので使える物を捨てるのに躊躇してしまう性質があるのだ。


グリフォンの羽は丈夫で温くはあるのだが羽毛布団にするのには少し硬く色々と下ごしらえが必要で面倒くさいのだ。


必死に選別を行うエルフを尻目に大量の羽を供給した魔王は後は知らん顔である。


「じゃあ、後はヨロ~」


「お前も手伝え!ミミズク魔王!!!」


グリフォンの魔王の見た目は鷲と言うよりはモッサリとしててミミズクに近かったと伝わります。



さて、話しを現在に戻してこの木製の帽子・・・巷では「イリスの風帽子」と言われる謎のエルフの力作でその名の通り任意で強力な「風の防壁」を産み出す。

それにしても帽子に思い切りお前の名前が冠されているが身バレ的に大丈夫なのか?


セリスに送った帽子はイリスの加護との同調も強化されるオマケ付きで市場にも出回る事が絶対に無いSランクのハイエルフの特殊装備なのだ。


そして更に!この帽子の原材料の皮はイリスが長年保護していた「霊樹シルフェリア」の幹から取られている。

「世界樹ユグドラシル」が枯れた時に眷属である霊樹シルフェリアも枯れて死んでしまったのだが本体の霊樹の方はまだ若くシルフェリアの死後イリスの手により見事に復活して魂が無くなった現在でも地龍王の森で元気に生えている。


要するにセリスとの相性がメチャクチャ良いのだ。なにせセリスの元本体だからね。


そしてお次は小ぶりなエルフの弓、これも隠れSランクだ。

これも当然、地味な見た目に偽装されているので「無いよりマシ」程度のCランク以下の装備品に人には見えるしセリスもそう思っている。


しかしこれは「烈風の弓」と呼ばれる魔法弓で高威力の風の矢を連射で撃ち出す事が出来る。

単純な魔法の矢なので腕力も不用で反動も無い。必要なのは魔力だけである。


当然撃てば魔力を消費するのだが今の女神'sに強化されたセリスなら500発は楽に撃ち出す魔力がある。

そしてセリスは霊視さんβから「射手の心得」のスキルも貰っているので本来であればスキルと併用する事により「M2重機関銃」並の攻撃力を発揮してしまうのだ!


まあ・・・セリスは基本ポンコツで自分で戦う意識が無くて全く効果を発揮しないままただの可愛い小さな弓で終わるんだけどね。


極め付けの大本命、「暴風の胸当て」コイツはSSランク相当のレジェンド装備だ。


この特級呪物は防御力も高いが「極大魔法アークトルネード・ブラスト」が込められていて霊視さんβの遠隔操作で極大魔法の即時発射が可能となる。

霊視さんβの「目を瞑っていたら一瞬で終わる」とはこの事である。


どれもこれもマッドサイエンティストエルフの趣味満載の装備品で無論セリスも自分が身に付けているのがそんな物騒極まりないブツだとは知らない。


過保護極まりない友達からのプレゼントなのです

これらの装備品と女神達からの加護を総合するとセリスの能力は冒険者基準でSランク「準勇者」と言った所かな?


キャッキャと話しが弾んで行く内にハタと看護師さんが何かに気が付く。


「あれ?でもセリス様ってまだ成人を迎えられてませんよね?」


「そうですね14歳なので完全な冒険者って訳でもないんですけどね。

今回は貴族のお勤めと言った感じで後方から見ているだけです」


一応セリスもFランクの冒険者の資格は持っているが未成年者は今回の討伐に参加する事は出来ないはずなのである。


「そうなんですね?公爵令嬢様も大変なんですねぇ」


「御妹様達は至っては普通の公爵令嬢様です。こんな変な事を始めるのはセリスお嬢様だけですよ?」


「フェナ!ひっどい!」


ちなみになしてセリスが冒険者の資格を取ったかと言うとこれが無いと運送のアルバイト(ポーター職)出来ないからだが戦闘行為は一度も行った事は無い。

これはシルフェリア時代からの話しだが圧倒的に戦闘センスが無いのだ。


フェナと一緒に日課の訓練中の話し・・・


「ウインドカッター!!」バシーン!!


「ええー????」


セリスが放ったウインドカッターがカターニア大城郭の壁に直撃する!

ちなみに狙った的は全然違う方角である。


「私・・・視線の真横に魔法を撃つ人初めて見ました・・・でもこれは奇襲には使えますね!」


「だからフェナうっさい!!次行くよ!ウインドカッター!!!」


ヒューン・・・・・・・・今度は「セリスの真上」の空へと消えて行くウインドカッター・・・


「狙っている・・・訳ではありませんよね?」


「・・・・・・・・はい・・・思い切り的を狙ってます」

セリス曰く、「撃って見ない事にはどこに飛ぶか分からない」との事。

ただ、狙いを定める必要の無い全方位広範囲魔法だけは得意だ。

だが範囲を絞るとか器用な真似は出来ず、撃てば周辺は瓦礫の山になり間違い無く味方を巻き込む可能性が100%に近い。 


「お嬢様は魔力がとても高く無駄に魔法の威力が強くて危ないので攻撃魔法の使用を禁止します」


「・・・・・・・・・・はい」


こうしてセリスの攻撃魔法は永久に封印されたのだ。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「・・・・・・・・・・・・怪我だけはしないで下さいね!」

このポンコツ話しを聞き救護所に半殺しセリスが運ばれる未来を想像してしまった看護師さん。


「筋肉達が守ってくれるので大丈夫です!」


「でもセリス様も炭鉱に入るのでしょう?本当に・・・本当に気をつけて下さい」

セリスが大怪我をして自分が治療するが及ばすに最後を看取る物語を連想してしまい涙目になる看護師さん。優しい看護師さんなのだ。


「はい十分に気をつけてます!・・・って、私は元気なのだから泣かないで下さい!」

泣いて自分を心配してくれる看護師さんを見て「絶対に前なんか出ないもんね!」と改めて誓うセリス。


ふとセリスが顔を上げると遠目にボタノ炭鉱の坑道の入り口が見える・・・

魔導ライトで煌々と映し出される坑道の入り口がセリスには地獄の入り口に見えて「幽霊退治屋」になって初めて怖いと思った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



明けて次の日、夜明け前からボタノ炭鉱制圧隊は動き出す。


太陽の光でも特に朝日はアンデットに対してかなりのダメージを与える事が解っているので鏡を使い坑道の入り口から坑道内に朝日を照射して光を背に突入するのだ。


ガ○ダムの中でも使われたソーラーレイ攻撃である。

ちなみに魔法世界に降り注ぐ太陽光のエネルギーは地球の95%くらいで若干寒冷な世界です。


ソーラーレイ部隊は既に全ての配置は終わって待機中である。

日の出まで後30分・・・全員が緊張の面持ちで朝日が昇るのを待っている。


現在の坑道入り口は物理的に大きな岩で封鎖されており行き来は出来ない状況だが転移魔法でゾンビを送り込んで来る可能性が有るので鉱山全域が300人の魔導兵で魔法的にもボタノ炭鉱は封印されている。


魔導士達の指揮を執るのは王国一の魔導士とも名高い魔導兵団団長のフローラ・フォン・アンデュール女伯爵である。・・・・・・以上です。


「私の大活躍が華麗に省略された?!」


日の出と共に入り口を封鎖している大岩を爆破してソーラーレイを照射、その後に第一陣が突入する手筈となっている。


突入第一陣は王国正規軍から参加の精鋭重装歩兵30名と重装槍兵50名だ。

重装槍兵はフル装備で重装歩兵達もフルアーマーの甲冑にミラーシールドを装備している。


なぜ持っている盾が防御力の高いミスリル製ではなくミラーシールドかと言うと、鏡に写し出された腐った自分を見て慄き動きが鈍るゾンビが多いからだ。


「日の出まで25分!」朝日が昇る東の方角の空が綺麗な茜色に染まり今日は快晴になるのが分かる。


第一陣の直ぐ後ろには第二陣も突入体勢で待機している。


突入第二陣は正規軍の重装歩兵50名を主軸にして左右にはジャックを中心とした戦士系Aランク冒険者16名が配置されている。

第一陣と協力して後続部隊の突入路の確保と簡単な陣地の構築を行う。


突入第三陣は近衛兵30名を前衛にしたBランクの冒険者を中心にした126名だ。


この部隊は魔導士系の冒険者が比率が高く第一陣と第二陣が前衛で食い止めている間に後方から高威力の水と氷の魔法で一気にゾンビ達を殲滅するのが目的の部隊だ。


本当ならアンデット系モンスターには火炎系の魔法が有効なのだが炭鉱内で火炎系の魔法が使えないと言う制限がかかっている。


わざわざ魔物達が炭鉱を制圧したのは火炎攻撃を警戒して炭鉱の坑道奥深くに拠点を構えるのが目的なのだろう。

潜伏している「ネクロマンサー」の作戦なのだろう。火炎系が使えないのは非常に痛い。


まぁ、下手に開けた場所にゾンビを展開すれば嬉々として「戦術核攻撃」をして来るバカが昔いたのでネクロマンサー達も学習したのだろう。


《アレはシルフィーナちゃんが圧倒的に悪い!》実行犯は霊視さんβだけどね。


こんな感じにネクロマンサーで構成されている「核撃エルフ女対策委員会」も過去の失敗から色々と勉強しているのだ。


突入第四陣は指揮部隊でセリスとイノセントもここに居る。


イノセントのワンマン部隊で特筆する戦闘力は無いがBランクの戦士系と魔導士系の冒険者がバランス良く配備されている。


そして第五陣は予備戦力の部隊だ。


途中の街で採用したAランクパーティとアンデット専門のCランクパーティが主力になる。

バックアタックを警戒して重装槍兵20名がサポートする。


この部隊は戦況に合わせて随時参戦する。

予備戦力と聞くと戦闘力が低い集団と勘違いをする人が多いですが戦争においてはどれだけ優秀な予備戦力を用意出来るかが勝敗を握ると言って過言はないです。


イノセントはこの予備戦力を充実させんが為にわざわざ進軍を遅らせたのだね。


最後にフェナを含めた聖騎士を中心にした治療や補給を担う支援部隊が突入する。


そして炭鉱の外ではエヴァリスト宰相と追加で派遣されて来た1500名の正規軍の精兵達が待機している。


えー?精兵ならコイツも一緒に突入すれば良いんじゃね?と言われると、これまたバックアタックへの警戒と万が一に制圧作戦が失敗して炭鉱外にゾンビが溢れた時など対処を魔導兵団と共に行い坑道内に残された制圧隊を救出する為の部隊である。

それに狭い坑道に大軍で突撃するのは悪手なのだ。


「日の出まで15分!」茜色だった空も白く光り作戦開始へのカウントダウンが始まる。


この緊張感の中で第一陣の指揮官である重装歩兵が隣に居るジャックに話し掛ける。


「ねえ?やっぱりスケルトンアーマーも出ると思う?」

フル装備で厳つい見た目でも貴族らしく穏やかな話し方な男だ。


「多分出るだろうなぁ。おそらく直ぐに当たるぜ?」


「そっかー・・・・・・・ウザいなぁ」


スケルトンアーマーとはネクロマンサーには必ずついてくる護衛の魔物だ。

魔法で強化された強力なアンデットモンスターで個体によってはAランクにも達する要注意の脅威である。


「ドラゴンゾンビだけは勘弁なんだが・・・」ここでジャックがフラグを立てると・・・

「いそうだよねぇ・・・ドラゴンゾンビ」そして隊長さんがトドメを刺した。

はい、ドラゴンゾンビさん登場です。


「ドラゴンゾンビは今のところまだ確認されてませんよ」


「うお?!」


いきなり後ろから声をかけられて驚いたジャックが振り向くと、「おお!チャーリーじゃねえか!」ワイトキング騒動の時にセリスと一緒に王都迷宮に突入した蒼剣士のチャーリーが立っていた。


「今回は俺もお供しますよ」と軽く笑うチャーリーだった。

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