湖に佇むパツキン少女と激オコのパツキン少女。その4
「さて!イノセントさん!・・・・・お金下さい!」
幽霊男爵令嬢エミリアを成仏させる依頼を達成したので早速報酬をおねだりする門限間近令嬢セリス。
「ああ・・・依頼達成だな。これから・・・じゃ門限に間に合わんだろうから朝一で報酬出せる様に手配しておくよ」
あれ?イノセント君?君も居たんだ?今の今まで何も言わんかったね?どしたん?
「はい!じゃあ明日ギルドに伺います!」
そう言ってヨーイドン!っと地面を蹴り自宅へ向けて走り出すセリス。
セリスの足でも自宅まで30分。そして門限まで残り35分・・・マジギリなので後書きには参加出来ない主人公です。
「・・・・・・・・ふう・・・さて?説明してくれよ師匠?」
セリスが見えなくなり自分を落ち着かせる為に盛大な溜息を吐くイノセント。
どうやら黙って見ていたのではなくセリス大変身に唖然としてて声が出なかったらしい。
《何の事かしら?》
「惚けんなよ。最後の変身?ありゃ何だよ?」
《何だ?とは?》
「だーかーらー!アレってセリスの前世の霊樹シルフェリアの「再現」だろ?
セリスの魂の前世(正確には更に前世)が伝説の霊樹、「シルフェリア」だって話しはクルーゼの兄貴からも聞いて知っている。と言うかヤニックも含めた国の上層部も知っている」
おや?そうなん?誰からのタレコミ?・・・ああ、魔王バルドルか。
割と秘密主義な所が有る霊視さんβと違い魔王バルドルは起こるリスクは世界広く分散させる主義で情報開示に関しては緩い所が有る。
まあこれは、ドワーフなどの亜人種達以外には閉鎖的なエルフ族と他種族関係なく開放的なヴァンパイア族の種族間の考え方の違いも大きい。
ヴァンパイア族が亜人同盟には加入しているがラーデンブルグ公国の元老院には参加してない理由である。
「それは別に良い・・・今のセリスは人間だからな。
でも何で絶対的質量で劣る人間が大出力の霊樹を「再現」出来んだよ?魔導的にも絶対に「有り得ない」事だろ?」
《だよね?!アレおかしいよね?!絶対に有り得ないよね?!
何アレ?!どうしてシルフェリアが一瞬でも復活したの?!教えてイノセント?!》
タガが外れて今まで溜まっていた感情が吹き出す霊視さんβ。
「うお?!何だよ?師匠にも分からないのかよ?」
《わっかる訳ないでしょ?!アレは神与を超えたナニか?!少なくても無から出現した?!0になにを掛けても0なのに?!ああああーーーー!!!》
セリス大変身は霊視さんβにも理解不能の超常現象だったらしく頭がパンクしたらしい。
「落ち着けよ師匠。アレじゃねえか?セリスの目に住んでる神様?の仕業とか?」
セリスと霊視さんαは隠しているがイノセントクラスの実力者にはバレバレなのである。
《それも有り得ないわ。あの神様?が力を使う時は「事前に何らかの事象が起こる」からね》
「それってジャックが貰った「紋章」の事とかか?」
相棒のジャックは霊視さんαから貰った「アイギス」をイノセントに自慢しまくっているので当然ながらセリスの目に住み着いている神様の存在を知っている。
しっかしまあアテネ様も随分とガバガバな情報管理体制だね。
《そう言う事ね。あの神様自体にはそこまで莫大な力は無いわ。
だって莫大な力を秘めていたら人間のセリスの目なんて簡単に蒸発しちゃうもの。
どうやら彼女?は術式士?なのかな?外部に紋章を描いて外部からの力を行使するタイプだわ》
「でもさっきのセリスは間違いなく自分の中から霊樹シルフェリアを再現させた・・・よな?」
《そうね。それにセリスの目に住んでる神様がジャック君に与えた紋章の謎ならギリ私にも理解出来る範疇なのよ。
見た事も聞いた事もない高レベル過ぎる術式でも理に適っている以上はかなり時間が掛かるけど解読も可能・・・だと思う。
私が分からないのはさっきのシルフェリアを再現させた現象が「ただの自然現象」だった事よ。
絶対に有り得ない無いはずなのに、そこに有るのが当然の様に出現した・・・》
「いやこれ・・・現世の住人の俺らじゃ分かんなくね?
セリスの前世は「霊樹シルフェリア」だった・・・実はこんなん秘密でも何でもない?それ以上にセリスには他に何か秘密が有る?・・・と言う事か?」
《・・・誰か偉い人に教えて欲しいわね・・・》
「その偉い人代表の師匠にも分かんねえなら完全に俺らにはお手上げだよ。
・・・・・・・・・・暫くは様子を見るしかねぇよ」
余りにも謎現象を解明するのが難しくてギブアップしたイノセント。
どうやらセリスにはまだまだ秘密がある様子だ。
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霊視さんβとイノセントがセリスの謎の解明にギブアップしてから1週間後。
そのパツキン少女がまた怒っていた・・・
「だーかーらー!お前ら!なんで私の中にいつまでも居座ってんだ!さっさと成仏して「選別の扉」へ行け!」
エミリアちゃんとエドワード君が再会した次の日の朝に目が覚めたら何故だか知らないがセリスの中に2人が居ていちゃついていたのだ。
「何で?!・・・まあ・・・せっかく会えたんだし」そう思ってセリスは放っておいたのだが・・・それが1週間経っても全然転生しないで人の中でイチャつく2人に遂にキレたのだ。
《いえ、それがですね?私達もセリス様がとぉーっても怖いので言い付け通りに寄り道しないで「選別の扉」へ行ったんですけど・・・》
《霊界に行って見たら選別の扉へと向かう道が人の魂で大渋滞しててワイトキング様から『あー・・・今すっげえ忙しいからのう・・・すまんがセリスの中で待ってくれって』と言われまして・・・》
「私を待機場所に使うな!とっとと仕事をしろー!ワイトキング!!」
そう言って激おこプンプンのセリスだった。
『全く・・・霊樹のくせにうるさい奴じゃのう・・・』
セリスは何処からかそんな声が聞こえた気がして、「今は違うわい!」と、またキレたパツキン少女だった。
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さて、ここで湖に佇むパツキン少女の話しは終わりですが少し悩める霊視さんβの様子も覗いて見ましょう。
「と・・・言う訳なんですがバルドルさんはこの謎現象の事が分かりますか?」
あれから頑張って色々な偉い人に聞いてあの謎現象が何なのか調べたのだが全然答えが分からず知恵袋の魔王バルドルを呼び出した霊視さんβことエルフの女王イリス。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分からん!」
今まで培った10000年もの知識を総動員してかなり考え込んでから「分からん」との答えを導き出した魔王バルドル。
「ですよねー」
同じ現世を生きるイリスに分からん事は魔王バルドルにも分からんのだ。
「分からんが・・・都合の良い仮説だけは立てられる。まあ・・・オカルトの範疇だがな?」
「伺いましょう」
この際、仮説でも何でも知りたいイリス。それだけセリスが心配なのだ。
あの大質量エネルギーの放出・・・下手を打てば「ボン!」と、物理的にセリスが蒸発する可能性が有るからだ。
「儂が仮定した世界の中でのセリスは「高次元界の住人」なのだ」
「ん?それはそうでしょう?前世が元霊樹なんだから」
本当は前世の前世(以下省略)・・・どっちかと言うとセリスの前世の前世と今世が人間と言うのがかなり変な話しなのだ。
「その高次元界から現世界に遣わされる現世神・・・がいる・・・と言う考えが「地球」には有ってな?」
「現世神・・・えーと?確か・・・人間でありながら神様と同等の存在・・・だっけ?でもそれって本家の地球でもオカルト・・・だよね?」
一応はイリスも異世界の地球について一通りの勉強はしている。大学の学科にも「地球学」と呼ばれる分野があるくらいだ。
「そうじゃな。神がやたらと多い地球においても「神は神」「人は人」この宇宙の物理法則からは何者も逃れる事は出来ん・・・はずなのだが例外なのが現世神と言われている」
「地域の権力者達が自分達に都合の良い仮想の神様の世界を作り自分が「現世神」と言う存在にして祀らせたんだよね?」
「まあ・・・その様な感じにほとんどが政治的な理由で作られた存在じゃな」
古今東西あの人とかあの人とか沢山思い浮かびますがセンシティブな話しなので敢えて例題は出しません。
「セリスはその「本物」の現世神ってヤツではないか?」
「んなアホな・・・・・・・・・だってセリスって煩悩多いじゃん?」
「まあ確かに人間らしい人間だわな」
一応セリスにも人間の三大欲求が普通に装備されております。
「うーん・・・更なる調査が必要だわね・・・」
と・・・・この様な面白い仮説を魔王とエルフが立てましたが「分からない事は偉い人に聞け」との事なので確実に答えを知っているであろう魔法世界で1番偉い人?我らが魔法世界の主神である調和の女神ハルモニア様に答えを聞いて見ましょう。
さて?この件に関してのハルモニア様の見解は?
『え?!イリスとバルドルは何を言っているんです?』
はい!これが全ての答えですね。あのエルフと魔王は一体何を言っているんでしょうか?
それでは「龍騎士イリス」よりイリスと霊樹シルフェリアの別れの場面から、去り行く霊樹シルフェリアがイリスに残した言葉を要約して抜粋して見ましょう。
『イリスに私の全ての力(霊樹の力)と全ての思い(記憶)を、そしてクレアにはユグドラシル様の思い(ユグドラシルの瞳)を託します』と、霊樹シルフェリアはこの様にハッキリとイリスに告げています。
つまりイリスには当時の霊樹シルフェリアが持っていた全ての霊的な能力が内蔵されている訳です。
イリスはセリスに起こった現象に予兆が無かったとか騒いでますが何て事もなく、霊視さんβことイリスが霊的にセリスにアクセスした事が立派な予兆なんです。
セリスとイリスが繋がった事でセリスは「イリスの中に有る霊樹シルフェリアの記憶と力」にも繋がりました。
そして門限が時間が無いのにグダグダ煮え切らない幽霊バカップルにイラついたセリスがイリスの中の「シルフェリアの力と記憶」に無意識にアクセスして当時の自分の姿と力を再現してエミリア&エドワード君を脅したのです。
無から発生した現象に見えたのは「現象を引き起こした張本人のイリス」に力を行使した自覚が無さ過ぎてそう見えただけです。
イリスはセリスの隠された秘密だの云々と盛大に勘違いをしていますが「セリスじゃなくてオメーに隠された秘密だよ」と言う訳ですね。
何せイリスは霊樹の力と知識の全てを継承した規格外の「現世神」ですからね。
魔王バルドルの言う所の「現世神」とは魔法世界においての「亜神」とか「特異点」とかにあたります。つまり魔王バルドルにも「オメーもその現世神だよ」と言える訳ですね。
そりゃ謎現象を引き起こしたイリス本人が分からんのだからイノセントにも魔王バルドルにも真相は分かる訳がありませんね。
要するに現世で完全無欠の人間であるセリスはイリスと言う名の外部燃料タンクと情報ステーションに繋がらない限りは前世の霊樹の力の行使をする事は不可能です。
セリスが霊樹の時の記憶に関してチグハグなのは大元のイリスがチグハグだからです。
『それにしても・・・本当にイリスはシルフェリアからの力と記憶の継承を忘れているんですかね?』
忘れていると言うよりは霊樹シルフェリアの死が悲し過ぎてシルフェリアの去り際の言葉の意味を理解するのを拒絶したんじゃないんですかね?イリスもまだ子供だったし。
・・・そしてこのチグハグは天界をも揺るがす大事件を引き起こします!
『?!?!いきなり何を怖い事を言い出してるんですかぁ?!』
もう終わりの時間ですね。それではまたお会いしましょう!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・女神波動砲に刮目せよ!
『ちょっと!ねえ!これから何が起こるんですかぁ?!女神波動砲って何なんですかぁ?!
この茶番もフラグですね?!フラグなんですね?!ただでさえ忙しいんだからこれ以上余計な問題を起こすのは止めて下さいーーー!!』
そんな女神ハルモニアの思いも虚しく「確定調和」で女神波動砲は発射されるのであった・・・
『ゼウス様からのお仕置き中で動けなくて暇だからって私の力を使って何を変な事をしようってんですかぁーーーーー!!!
そんな訳分からない変な事ばっかりするから何回もゼウス様に食べられるんですよ!
と言うかあれだけ怒られても全然反省してませんね?!
いくら叔母様とは言え変な事をしたらゼウス様に言いつけますよメティス様ーーーー!!!』
ええいこの可愛い姪っ子め!我の本名を盛大にバラすなぁーーーーー!!!
我の名は魔法世界の解説者だーーー!!