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湖に佇むパツキン少女と激オコのパツキン少女。その2

「ええ?!また肩車で走って行くの?!」

冒険者ギルドから湖までイノセントが走って行くのだそうな。


「時間も無いとの事だしジャックから聞いて確認したい事も有るんでな。

・・・・・・・・・何か問題有るか?」


「え~?・・・・・・・・・いいええ?別に?」

何故かイノセントの肩に乗るのを若干渋っているセリス。


《おや?やっとセリスにも令嬢としての自覚が出たのかな?》

確かにお姫様抱っこならまだしも令嬢が肩車されるのは普通に恥ずかしい。


「毎日毎朝自覚たっぷりですけど?!」


ぶっちゃけ今でも人に肩車をして貰う事自体に忌避感は無い。

まあ、水浴びをする為に男の前でマッパになった脱衣令嬢なので肩車程度は今更である。

しかし相手がイノセントだと少し抵抗が有るのだ。嫌と言うよりは恥ずいとの感情が表に出ているのだ。


「ん!」しかしそれがバレると余計に恥ずいので両手を伸ばしてイノセントに肩車を所望するセリス。


《じゃあ私はこれから仕事だからイノセント君?頼んだよ?》


「んだよ?サポートしてくれないのかよ師匠?」

そう言いながらヒョイとセリスを肩に乗せるイノセント。


《私にも仕事が有るから仕方ない。と言うか今現在で親の仇の様にドアをノックされております。最早限界点です》ドンドンドン「イリス様ー?イリス様ー?お時間です!」ドンドンドン、と念話の中でも側近達の鬼ノックの音が聞こえて来る。

つーか側近にモロに本名で呼ばれているがその点は良いのか?


《じゃあ・・・セリス?・・・・・・・絶対に脱ぐなよ?分かってるでしょ?」


「もう脱ぎません?!」


ちなみに霊視さんβとセリスとで「人前で全裸になりません!!」との血の約束をした。

約束以前に令嬢が人前で全裸になんな!


次、同じ事をやったらバーバラ夫人公認の元でラーデンブルク公国に強制連行されて監禁状態で淑女教育を受ける約束になっている。


だがしかし・・・どっかのエルフも昔、似たような事をやらかして般若姫の弟子にしばかれまくったので偉そうに言える立場ではない。

どっかのエルフは脱衣令嬢ほどモロ出しした訳じゃないけどね。


そんな事よりもマジで時間的な猶予が無さそうなので、とりあえず急いで湖に向かう事にする。


「それで?確認したい事って何さ?」


「うーん?やっぱりなぁ・・・お前、「騎乗スキル持ち」だな。家で乗馬とかやってんのか?」

セリスの騎乗スキルの効果でお馬さんのイノセントの能力も上昇したのか手をグーパーさせているイノセント。


「騎乗スキル?・・・乗馬は一応はやってるよ?あんまり時間取れないけど」

セリスの乗馬訓練は淑女教育の一環の所謂、「お嬢様乗馬」の分類で大人しい子に乗り、ゆっくりとカッポカッポと優雅にお庭を周る訓練で騎乗と言えるモノではない。


「へー?あの訓練でも騎乗スキルなんて育つんだ?」

自分のポンコツぶりを熟知しているセリスは「どうせEランクとかFランクとかだろ?」と興味無さげである。


「これはそんな生優しいモンじゃねぇな・・・この上昇具合・・・Aランクは確実に有るぜ?」


「え?!まさかのJランク?低っ?!」

予想もしてない単語だったので「エーランク」を「ジェーランク」と聞き間違いするセリス。

一応スキルの最低ランクはNランクだと言われている。


「違えよ・・・ABCの1番上のAランクだ。

それにしても凄えバフだな・・・速度上昇、視界拡大、反射神経能力上昇・・・単純に移動に必要な能力全てに30%以上の上昇バフが掛かってるぜ。

・・・これ、使い方を間違えたらヤバくね?

つーかこれってAランクってレベルでもねぇぞ?特殊Sランクか?これ?」


「はあ・・・Fランク?」

無理矢理「エスランク」を「エフランク」だと聞き間違いするセリス。


「もう現実を直視しろよ?最高ランクであるSランクだ」


イノセント曰く、セリスの騎乗スキル能力は母数が大きいモノに乗れば乗るだけ対象の能力が大幅に上昇するブッ壊れスキルとの事。


「そんな事いきなり言われても初めて知りましたけど?!」

ようやく自分に秘められた恐るべき能力を理解して大混乱になっているセリス。


「冒険者ギルドマスターとしてレディセリスにはギルドの許可無く人の肩に乗るのを禁止します。

こんなブッ壊れ能力を下手に魔族とかに察知されたら絶対に拉致されて袋詰めで肩に乗せられて強化パーツに使われるぜ?」


「もう絶対に人の肩には乗りません!」


「まあ、俺やジャックとか事情を知っていて悪用しないヤツの肩に乗る分には構わねえよ?

俺が言ってるのはやたら滅多に多用して目立つなって事だ。

それからセリスが家で乗ってる大人しい馬とかには効果が無いからな。

基本の母数が低いヤツの上昇値も低いからな」


それから湖に向かうついでにセリスの騎乗スキルの能力を検証して見る事になった。

イノセントクラスのやべぇヤツの能力に30%の上昇バフが入ると、どんだけやべぇ事になるのかセリスに教える為である。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「いいいいいいいやあああああああああああああーーーーーーー?!?!?!」


ピアツェンツア大草原に響くセリスの悲鳴。


「飛んでるーーーーーーー?!?!何で人間が飛ぶのぉおおおおお?!?!」


「飛んでねぇよ?丘を使ってジャンプしただけだ」


「この!チート人間ーーー?!・・・・・アンタ本当に人間?」


「急にスンってなるの止めね?」


セリスの騎乗スキルの能力でスピードアップしたイノセントが「時速120km」で小さな丘を使い「とお!」っとジャンプをしたら高度30mを維持したまま「2km」ほど飛んだのだ。

着地した途端に再度ダッシュする。


「止め!やめれーーーーーー!!」


「おおー?凄え凄え。ジャックが言ってた通り快適だなこれ」


「私は全然快適じゃないですーーーーー?!?!」


大ジャンプの後、サカサカサカサカサカサカサカサカサカと、軽快な走りで時速120kmを維持したまま草原を駆け抜けるイノセント。

自分の限界を楽々突破する事が出来てとても楽しそうである。


「ふええええええええ?!?!」

前世のセリスはCB98を誰よりも早く購入して乗り回し、CB400FOUR-1を経て還暦を過ぎたのにも関わらずCBR400ccを買い、その買った日に地元の日高峠を攻めてた生粋のスピード狂だったので時速120kmはそこまで怖く無いスピードのはずなのだが草原での120kmは道路を走るバイクとは速度感覚が違い過ぎてビビり倒している。

むしろそのバイクの経験が有ったからこそ失神しないで済んでるのだが。

・・・セリスが騎乗スキルを獲得した理由が分かった気がする。


「この!言う事を聞けえー!」イノセントを制御しようと頑張るセリスだが、「ふん!甘い!」「レジストするなぁあああ!!」基礎能力が違い過ぎて全く制御出来ない。

そしてイノセントは15kmの道のりを僅か10分強で走り抜けてしまったのだ。




「うううううう・・・・・・」

10分間の出来事とは言えさすがに少し車酔い・・・イノセント酔いをしてしまったセリスはイノセントから降りて自分がお馬さん状態になっている。

○○○○○しないのは令嬢としての意地である。


「おー?疲労軽減の効果も有るのかー。良いなこれ!楽しい!」

面白い体験が出来て楽しそうにピョンピョンと跳ねているイノセント。


「い・・・・・・・・イノセントコースター・・・・・」


「セリス・・・・・・なあ?良かったらまた・・・」

ワクテカなイノセントは正しく何回もジェットコースターに乗る子供そのものである。


「もうダメです!!!!」

とは言え帰りにまたイノセントに乗らんと家に帰れんのだがな。


さて、湖に来たのでとりあえずは弁当を食う事にした2人。

今日は何と!セリスのお手製弁当である!


・・・これは?遂にラブコメに突入か?!


ラブコメ突入なので「味はどう?」と、一応乙女として聞く事は聞くセリス。


「・・・・・・・・・・いつもと一緒だな」そう言いながら黙々とセリス弁当を食うイノセント。


「そっか~やっぱり一緒かぁ~。逆に変わってたら怖いよね~。あはははははは」


今日に限らず毎回弁当を持参して(飯の調達もバイト内容に含まれている)イノセントの執務室の掃除のバイトをしてたのでイノセントはセリスの手料理は食い慣れている。


ちなみに今日の弁当は色気もクソも無い「鮭(擬き)弁当」である。

そしてセリスの料理の腕前は「可もなく不可もなし」なので普通に食える。

イノセント曰く、「こう言うシンプルなモノで良いんだよ」との事で飲み物の如く凄い勢いでセリス弁当をかき込むイノセント。

イノセントは丼飯でガブ食いしたい人間なので逆に手を込んだ上品なモノを作られると食い辛く感じるのだそうな。


「これだけ食べてくれたら作った者としては嬉しいわ」

そう言いながらガブ食いイノセントをおかずにして自分用の俵おにぎりをチマチマ食うセリス。


でもイノセントの鮭(擬き)の切り身5枚と白米5合は食い過ぎだと思います。

一応は他にも別口で芋の煮物とかも作って見たがイノセントに瞬殺された。


こんな感じに弁当でホッコリした所で仕事の開始である。

基本、仕事において真面目な似た者同士なのでいつまでもホッコリとイチャイチャしていないのだ。ラブコメ終わりである。


「どうだ?」


「んー?周囲に令嬢無し・・・ね」


ここ最近霊視さんαが行方不明になっているので自前の霊視で周囲を探索するセリス。

一応、霊視さんαはセリスに自分の権現を残しているので霊視自体に不備は無い。

霊視さんαが今どこに行ってるかは後日書きましょう。


「居ねえのか?!じゃあ!移動しようぜ!」移動する事になりスッゲェ嬉しそうなイノセント。


「ううう・・・お手柔らかに・・・ね?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「いっやぁあああああああ?!お手柔らかにって言ってるじゃーーーん?!」


「わははははははははははははははははははははははは!!!!!!」


巨大な水飛沫を後方に残しながら湖の水面をものすごい勢いで爆走するイノセント。


「すっげぇー!人間って水の上を上を走れるモンなんだな!」


イノセントは、そんな事を言ってるがそんな訳が無い。

イノセントの水走りが可能なのはセリスの「操船」のスキルが発動している為である。

セリスのスキルはイノセントを「船」と判定してイノセント丸に浮力を付与しているのである。

ちなみに言うとセリスの操船スキルは脅威の「SSランク」である。

これはセリスの前世の職業だった漁師特性を継承しての職業スキルだと思われる。

このSSランクスキルの特性「不沈」は「船がどんな状態になってもセリスの魔力が続く限り浮力を保ち通常航行可能」である。

正直言って物理法則を無視した気狂いレベルのブッ壊れスキルなのだ。


「わははははははははははははははは!!!」

楽し過ぎて無駄に大回りしながら湖の上を走り回ったイノセント・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「どうだ?湖の外周を廻るより断然早かったろ?」


「・・・そうですね・・・ありがとうございます・・・イノセント様」

余りの恐怖で件の湖の令嬢の幽霊と同じく感情が無くなった放心令嬢セリス。


「なんで様付けなんだよ」

やっべー?やり過ぎた?と、反省してセリスを介抱しているイノセント。


「ん?」何か視線を感じたイノセントが前を向くとどこからともなくフラフラと目標の幽霊の少女が寄って来て・・・《貴女も私と同じで感情を無くしてしまったのですね・・・仲間ですね?》セリスを除き込む幽霊男爵令嬢。


「そうですね・・・何も考えられません・・・仲間ですね」

セリスが感情のこもらない声でそう答えると男爵幽霊令嬢がポロポロと泣き出す。


《ずっとずっと一人で寂しかったのです・・・私達は仲間ですね?》


「はい・・・仲間ですね」


《仲間の私達はこれからも一緒ですね》


「そうですね・・・一緒ですね」


すると幽霊男爵令嬢はスルリとセリスに中に入り込んでしまった。

初仕事のクロッセート侯爵邸の妹ちゃんと同じく霊波が同調したのだ。

一応イノセントは何かをしていたのだが特に効果は無かった様子だ。


幽霊男爵令嬢が中に入ると「はっ?!」と、感情を取り戻すセリス。

「そうだ!それよりも件の令嬢は?!」

イノセントジェットコースターの恐怖の余りに先程の幽霊男爵令嬢とのやりとりは全く覚えてないセリス。


「いや、令嬢はセリスの中に入っちまったぞ?俺もレジストしたが対魔術は苦手を分類でな。すまん。身体になんか異常な所はあるか?」

幽霊男爵令嬢に取り憑かれたセリスを心配するイノセント。

本来なら問題無用で幽霊を消し飛ばしていた所なのだがセリスに近過ぎたのと依頼対象を滅ぼして良いのか分からず出遅れてしまったのだ。


「ええ?!私の中に?んー?んん?・・・あら?本当に中に居るわ・・・」

それからしばらく目を閉じて全然動かないセリス・・・


「おっおい!本当に大丈夫かセリス??」



・・・・・・・・・・・・・・・・・



1分ほど沈黙が続いて・・・・


「よおーーーし!わかったああ!!」「おわあ?!」突然大声で叫んだセリスに驚くイノセント。


「令嬢・・・エミリアちゃんが成仏する為には恋人のエドワード君に会う必要があるわ!

でもエドワード君は亡くなったのでエドワード君の幽霊を探す!これが一番の近道だと思うけど?どう?」


「どう?って・・・せめて経緯を説明してくれよ」苦笑いのイノセント。


「あ・・・そか、令嬢の名前はエミリアちゃんよ。

やっぱり恋人だったエドワード君に会えないと成仏は無理だって」


「そんでそのエドワード君とやらを探すのか?」


「そう!」


こうして今度は幽霊のエドワード君の探索が始まる。

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