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特別企画「真魔族四天王マクシム君の負けられない戦い」

ビシィーーーーンンン!!

鋭い音を立てて何者かがピアツェンツェア王国王都に降り立つ。


大陸間移動の力押しの魔力ゴリ押し転移魔法を使いピアツェンツェア王国の中央公園に建つ大時計台の上に「強面のヘビモスさん」達を率いて降臨した真魔族四天王のマクシム君。


・・・・・・・・・非常識の権化のお前はまだしも、なして無関係代表の常識人?のヘビモス達が出て来るの?


「ほう?アレがイリスから依頼があった「要救助者」だな!!」

無駄にデカい声で叫ぶマクシム君。


《依頼を受けてくれたのは感謝してますけどマクシムさん!

王都中に響くデッカい声で私の本名をバラすの止めて下さい!

・・・・それよりも何で無関係のヘビモスさん達も来ているんです?》


《うむイリスよ・・・我らは此奴から「観光旅行」だと聞いて来たのだが・・・》

凄え怖い顔の割には穏やかで知的な話し方をするヘビモス・ロード


《かんこうりょこう?》

現在大絶賛戦闘中に1番出る訳が無い単語に首を傾げる霊視さんβ。

さりげなくヘビモス・ロードにもお前の本名をバラされているが良いのか?


《そうだ我々は観光が目的だ。特にフルーツタルトのスィーツ店に興味がある。

それよりマクシムよ?ゴブリンとオーガがこちらに向かって来ておるぞ?》


いかにも血が滴る生肉を喰らっていそうな見た目のヘビモスさん達なのだが実はフルーツが大好きな「完全無欠の草食動物」なのだ。

人肉を食らうなど論外中の論外である。


「うむ!了解したぞ!」


体長15mを優に超える立派な体躯のベヒモス・ロードが魔族の洗脳を受けて操られているオーガとゴブリンの群れがこちらに向かって来ている事を告げると・・・


「さて、貴殿達はここで待て・・・・・とお!」


そう言って大時計台から飛び降りた真魔族四天王のマクシム。

そしてズカズカと迫り来るゴブリン&オーガの群れを目掛けて歩き始める。


《・・・・・・ねえ?・・・アタシ達は何しにピアツェンツアに来たの?

旅の目玉はスィーツ食べ歩きピアツェンツア王都観光旅行・・・だよね?

何で旅行先の王都中で乱闘してるの?コレで今日はお店やっているの?》


《この有様ではお店は閉まっているだろうな》


《そうですよね?どう言う事ですか長老?》


《知らん。マクシムかバルドルに聞くが良い》チラリと横を見る長老さん。


「儂はマクシムの「観光旅行」に関しては無関係なので聞かれても困るわい」


いつの間にかヘビモス・ロードの隣に魔王バルドルが立っていた。

どうやらイリ・・・霊視さんβからのゴブリン&オーガ救出の依頼をマクシムに横取りされた様子だ。


軽く説明すると魔法世界でのゴブリンとオーガは魔物ではなく精霊由来の亜人種でエルフとドワーフとは友好関係にある。

そして人族とも関係性は悪くはなくピアツェンツェア王国とオーガは軍事同盟関係、ゴブリンとは木材の取引を主軸とした貿易関係にある。


その意味で下手に手出しが出来ない相手で魔物の群れより厄介な敵と言える。

街中を移動する群れを警戒している防衛隊も遠巻きに包囲して殲滅より捕縛のタイミングの機会を伺っている状態だ。


人口こそゴブリンやオーガより少ないがオーク族も亜人種に分類されていて東の大陸の山深くに多く住み中央大陸より以西に勢力基盤を持つ人族と絡む事は少ない。

そんな理由から中央大陸でも東部地方になると亜人種の影響力が強くなる。


《あれぇ?バルドルもピアツェンツアに居る?何で~?バルドルも観光~?》


「儂らは建築の仕事中じゃ」


《建築~?それよりもさ~。ねー?長老~。早く観光したーい。スィーツ食べたーい。温泉入りたーい。》


《わがまま言うんじゃありません》


《え~?》


そう言われても若いヘビモス達は今回「観光旅行」に来たのだから彼女の要求も当然だろう。


マクシムに「観光旅行に行かね?」と軽く誘われて南の大陸南端から中央大陸のピアツェンツア王国の王都まで来たのにも関わらず何故か到着した途端に戦いに巻きこれて訳が分からない所に言い出しっぺのマクシムに見事なくらいに大時計台の上に置いてきぼりにされたベヒモス達であった。


ちなみにマクシムには「ヘビモスを騙そう」とか「利用しよう」とかの考えは一切ない。

純粋な気持ちで置き去りにしたのだからタチが悪い。


ズン!ズン!ズン!ズン!

何の迷いも無くゴブリンとオーガに歩いて接近するマクシム。


「ぐが?」「ぐぎぎ?」

虚ろな目をしてマクシムの接近を察知した彼らは剣を抜き槍を構えて臨戦体制を取る。

普通なら自分達より圧倒的に力が上の真魔族(ヴァンパイア族)と喧嘩する事は無いのだが洗脳の影響からか冷静な判断が出来ていない様子だ。


ズンズンズンズンズンズンズン


「ぐが!!!」無防備に近づくマクシムの腹にゴブリンが槍を突き刺した!


ガィイイインンン・・・・・カラン!カラーン!「うぐっ?!」

腹を突いたはずなのだが、まるで金属を突いた様な音が鳴り響き手を痺れさせたゴブリンが槍を落とす。


「この馬鹿者!貴殿はそんな事で良いのかぁ?!」


ドバチィイインンンーーーーー!!!「ぐほお?!?!」

マクシムの強烈な「ビンタ」がゴブリンにヒットして、ぶたれたゴブリンはクルクルと回って地面にダウンする。


「貴殿も!貴殿も!貴殿もだーーーー!!」

バチーーーーーン!ビターーーーーン!!ドバチィーーーーーン!!

「くあ?!」「おう?!」「ひぎっ?!」


次々とオーガとゴブリンにビンタをかまして行くマクシム?!いや!何してんの君?!


バッチィーーーン!バシーーーン!!ベシーーーンン!小気味良くテンポ良くゴブリン&オーガを叩くマクシム君。


「貴殿で最後だーーーー!!」

バッチーーーーン!!!「ぐおお?!」最後に残っていたオーガをひっ叩いたマクシム・・・

マクシムの周囲にはマクシムに叩かれて気絶したオーガとゴブリン達が転がっている。


「うむ!目を覚ませ!友よ!」

ピカリーン!と広範囲回復魔法を使い気絶したゴブリンとオーガを癒すマクシム。

いやお前、闇属性なのに何で聖魔法が使えるの?


「う?・・・」「お・・・俺は??」「いててて・・・」「ここは?・・・」

マクシムのビンタと回復魔法で見事に魔族の洗脳から解放されたオーガとゴブリンが目を覚まし始めた???


《うっそーーーん??》素っ頓狂な霊視さんβの声が聞こえる。

魔法理論的にも物理ビンタと通常の回復魔法で洗脳が解除される事はない。


「これはまた器用な真似をするのう・・・手のひらに状態異常回復魔法を仕込んで脳の神経損傷部分に直接回復魔法を叩き込みおったわ」


《そんな事出来るの?!》


「普通なら出来んが・・・マクシムじゃからのう」


《さ・・・さすがの「覚醒魔王」・・・》


魔法世界唯一無二と言われる「元覚醒魔王」のマクシム君が、「うむ!正気に戻ったか友よ?故郷の東の大陸にて家族が貴殿達の帰りを待っている・・・我と共に帰ろうではないか」と、優しくゴブリンとオーガに微笑み掛ける。


「あ・・・貴方様は?」


「様など付ける必要など無し!我は貴殿等の友・・・マクシムだ!」


「友?マクシム?・・・・・・お・・・・おおおおお?!?!」


「助かった?!俺達!助かったんだ?!そうだな?!我らの友マクシム?!」


正気に戻ったオーガとゴブリンが助かった感動に打ちひしがれている・・・


「さあ!友よ!早速故郷の東の大陸に戻り準備を整え・・・

そして悪辣なヴァンパイアの魔王とエルフの女王を倒して共に「南の大陸を制圧しよう」ではないかーーーーーーー!!!」


「!!!!う?うお・・・・うおおおおおおーーーー!!!」


ウオオオオオオオオーーーーーーーーーー!!!


マクシムの大号令に鬨の声を上げるオーガとゴブリン!!

次に彼らが進む先は「南の大陸の完全制覇」だーーーー!!


《なんか知らんけど、いきなり皆んなの矛先がピンポイントで私に向いたー?!》

意味不明なトバッチリを食らう悪辣エルフ女王。


「ふっざけんなよ!マクシム!日々真面目に働く良き魔王に対して何が悪辣か!

つーか、周りで同族の皆んなが外貨を稼ぐ為に一生懸命に働いているのに優雅に観光旅行なんてしてんじゃねえ!お前も手伝えや!

そもそもお前が自分勝手に魔王を辞めて儂にめんどくせえ魔王業務を押し付けておきながら、なんちゅう言い草だーーー?!

南の大陸制覇も何も元は全部お前の領土だったんじゃねえか!」


《そうですー!いかにもエルフがマクシムさんの領地を奪った様な言い草ですけど、伝え聞く所では突然現れたマクシムさんが中央大陸からクレア師匠とルナさんを拉致して「ここで自分達の国を作れ!」とか言い出して南の大陸の何も無い原生林の中に2人を放り込んだのがラーデンブルグの始まりなんじゃないですかー?》


そ・・・そんな経緯でラーデンブルグ公国が出来たんだ・・・


「うむ・・・アレはルナとクレアが可哀想で酷かったわい・・・

成人していたルナと違いクレアなどまだ幼児だったからのう。

前日までお姫様だったのがある日突然、原生林でのサバイバル生活開始じゃったからのう」


《天然のルナさんはともかくクレア師匠は今でもマクシムさんに対して怒ってますからね!一回ちゃんと殴られて下さい!

そもそもオーガとゴブリンの国が有るのは「東の大陸」ですー!

「南の大陸」は関係ないじゃないじゃないですかぁーーー?!》


過去の自分の悪業を綺麗サッパリ忘れているマクシムに対して非難轟轟の魔王と霊視さんβ。

読者の皆様も展開がいきなり過ぎて訳が分からないでしょうが・・・まあ・・・マクシム君がそう言うんで「南の大陸制覇」をヨロシク!


一応マクシム君の擁護をすると当時の中央大陸は土地が痩せており、大勢のエルフが住むのには適してなかったのでマクシムは自分が所有する肥沃な土地をエルフ達に譲渡した・・・つもりだったのだ。


だがしかし、いかんせん何の説明も無しに王族のハイエルフを拉致して何も無い原生林に放り込んだのだから怒られて当然なのた。


こんな感じに自分の意思を通す割には全く人の話しを聞かんし詳しい説明もしないマクシム君は今の霊視さんβと魔王バルドルの苦情も何のそので話しを進める。


「では東の大陸に参るぞ我が友よ!!」「「「「「「おおーーーー!!!」」」」」」ヒュン!


マクシムの広域転移魔法が発動して煙の様に消えるマクシムとゴブリンsとオーガs・・・・・・・・・・・・・・え?帰ったの?


《え?・・・家に帰った???うそ?ヘビモスの皆んなを置いて??》

何の前触れも無く突然帰宅したマクシム君にマジで唖然とする霊視さんβ。


「・・・・・・・・・・・え?」これには魔王もアングリである。


いや、「え?」じゃなくてお前の所のマクシム君・・・強引に連れて来たヘビモス達を置き去りにして帰宅したんですけど?


《・・・・・・・・・・・・長老?アタシ達はどうやって帰るの?》

ヘビモスにして見れば知らない土地の山の中に車で連れてこられて捨てられた様なものである。


《バルドルよ・・・部下の責任・・・お主が取ってくれるのだろ?》


「あ・・・・あんの野郎ぉおおお!!!」完全に後始末を押し付けられた魔王だった。


余談になるがマクシムが連れ帰ったオーガとゴブリン達は南の大陸にある亜人達の国ラーデンブルク公国の移民局に赴き難民申請をしてから普通にラーデンブルグ公国の首都郊外に移住したのだった。


・・・・・・・・「南の大陸制覇!」はマジでどうなったん?


そしてマクシムに本格的に存在を忘れられてピアツェンツア王国に置いてきぼりされたベヒモス達は帰宅後も暫くの間は真魔族四天王マクシム君に返事をしなくなった。

と言うかそれだけで済んで感謝するべきだろう。


「バルドルよ・・・友が・・・友が返事をしてくれんのだ・・・」

今回はさすがに反省しているマクシム。


「お前はマジで生粋の大馬鹿者じゃろ?」マクシムを庇う気ゼロの魔王バルドル。




話しを現在に戻しまして・・・少し状況に変化が出ましたよ。




「え?!どうしたの?何で皆んながピアツェンツアにいるの??」


戦後処理をしていたピアツェンツア王国の国王ヤニックの元へと半べそかいた憲兵隊より、「突如としてベヒモスが10数体、王都内に来襲!」との悲痛な一報が届いて慌てて駆けつけて来たのだ。

つーかヤニック、お前も魔物の返り血でやべえな・・・とりあえず風呂入れよ。


《うむ、ヤニックの坊主か・・・・・いや実はな?我々はマクシムにピアツェンツェアの観光旅行に誘われて・・・そして置き去りにされた》


「・・・・・・・マジで?」


《・・・・・・・マジで》


《だから私達は何でここに連れて来られたのよ?》


《スィーツ・・・ねー?長老~?》


《むう・・・》


ヤニックが現場に駆け付けると涙目で怯える憲兵隊と絶望的な顔をした冒険者達に遠巻きに包囲されて途方に暮れているベヒモス達が居たのだ。


ベヒモス・・・冒険者ギルドの評価基準でなら魔物ランクSSS(凖魔王クラス)の超大物だ。

それが10数体・・・小国なら1日で滅亡するレベルの災禍なのだ。

ちなみに魔王ならUR(評価不能)ランクになる。


そりゃ憲兵も涙目になりますね。


しかしながらベヒモスは基本的に攻撃でも受けない限りは自分達から他種族を襲わない。

なぜなら襲ってもデメリットは唸る程に有るがメリットが何も無いからだ。


今回はたまたまベレンガレア大河の治水工事の仕事明けで暇だったのでマクシムの口車に思わず乗ってしまいピアツェンツア王国に来て・・・そしてマクシムに置いていかれた。


《はああああ・・・ホント・・・アタシ達は何しにピアツェンツアに来たのかしら?》

ガックリと項垂れるベヒモスのお姉様。

ショボンしているが見た目が怖いので可愛くない。


《知らん街に来て行き当たりばったりで野宿するってのも旅の醍醐味じゃないか?》

男性陣は案外あっけらんとしている。


《嫌よ!アタシは毎日お風呂に入りたいヘビモスちゃんなのよ!

・・・・・・・・・ところでアタシ達ってピアツェンツェアのお金とか持って来てるの?》

半ば拉致に近い形でマクシムに連れて来られたので旅の準備をしている暇はなかったのだ。


《一応、俺がラーデンブルグの紙幣を1000万円(相当)分くらいは持って来てるけど、ピアツェンツェアの金貨と交換するのに3日は掛かるんだよな~》

大陸間の為替取引の都合で換金をするのに少し時間が掛かるのだ。


《長老~?お腹空いたよ~》


今日の宿にも困ったヘビモス達がアレやコレやと相談していると・・・


「!!!!!ならウチの水源の浄化作業をする名目で王城に滞在しては?」

「やった!コレキタ!」状態の国王ヤニックがヘビモス達を王城へと誘う。


ベヒモス達の仕事と言えば主に魔法世界の水源の浄化作業だ。

人間からは「炎」属性だと思われているヘビモスだが実はバリバリの「水」の属性だったりする。

なので居住地に綺麗な水場が無いと生活が出来ないので日々治水工事と浄水作業を頑張っているのだ。


そして今もベヒモス達がこの地に居るだけでピアツェンツェア王都の地下水源はドンドンと浄化されているのだ。

要するにベヒモス達は、この魔法世界での「水の神様」に当たる訳だね。


《それは大変に助かる。よろしく頼むヤニック坊》


「ヤニックが皆の面倒を見てくれるのか?

ウチの馬鹿がすまんな。儂も浮遊装置の調整があるので抜けられんのだ」

魔王バルドルは仕事でピアツェンツアに来ているので、どっかの馬鹿と違ってとても忙しいのだ。


「いえいえ師匠!ヘビモスさんの事は俺に任せて下さい!

ピアツェンツア国王として皆様を歓待します!

あっ!でも皆んながビックリしてるからこれからは「人の姿」でお願いします。

夕食まで沢山の果物・・・今の時期は苺をご馳走しますよ~」


捨てるマクシム有れば拾う国王有り。ヘビモス達を国賓として「おもてなし」する気マンマンのヤニック王。


《え?!苺?!うん!食べる食べる~。ヤニック好き~》

ポンっと人化するスィーツが目的だったベヒモスの女の子。

ポニーテールを揺らして嬉しそうにテテテと国王ヤニックの元へと駆け寄る。

人の姿になると水色の大きな目が愛らしい長い水色の髪が綺麗な女の子だった。


と言うのもベヒモスは「水の女神ディオーネ」の眷属で「海龍」とは親戚筋なのだ。

海龍とは根っ子の部分で同じなのでベヒモスが人化した時の姿は「海龍」と全然見分けが付かない。


現在は湖などの淡水の管理はヘビモスの担当して海の管理は海龍の担当している。

情報が無さすぎてほとんどの者から魔物だと勘違いされているヘビモスだが海龍と同じ「水の神獣」なんだね。


そんなヘビモス達と気軽に話すヤニック王。


ヤニックは若い頃に南の大陸の真魔族領で修行をした事が有るので置き去り四天王マクシムやベヒモス達とも普通に顔見知りだったりする。


王城に招待され歓待されるヘビモス達。良かったね。


「はー、苺美味しい!」モッモッモッと、美味しそうに苺を喰らうヘビモスガール。


「桃も食べます?」


「わーい♪食べる食べる~」


「あの陛下?この方達は???」

国王夫妻と一緒のテーブルで食事をして国王ヤニックから国賓扱いされているヘビモスさん達を見て不思議そうに首を傾げている王妃ファニー。


「この人達は友達のヘビモスさん達だよ」


「?!?!?!?!友達?!?!」


こんな感じに思う存分にフルーツ山盛りを堪能して大きなお風呂に夕食では念願のフルーツタルトを食べる事が出来て夜には貴賓室のフカフカのベッドで寝て機嫌が直ったヘビモス達。


機嫌が直った所で国王ヤニックや魔王バルドルと今後の方針についての相談を始める。

主に南の大陸への帰還の方法についてだが・・・


「えーと?ここから南の大陸のヘビモスさんの拠点までって・・・」


《楽に22000kmは有るだろうな・・・》


「22000km・・・そんな長距離の転移魔法となると?」


《我とバルドルの全魔力を使っても一度で3名の転移が限界だろうな・・・》


「それでも3人も転移出来るんですね・・・」


一応、エルフの女王が構築した人族用の転移魔法システムがピアツェンツェア王国からラーデンブルグ公国まで開通はしているが、さすがにSSSランクの神獣ヘビモスを転移出来る様には作られていない。


《ダメですね。単純に1人でも重量オーバーです。

ヘビモスさん用に転移魔法システムを高出力魔力に耐えれる基盤に換装するとなると基盤の開発込みで数十年掛かりの大仕事になります》転移システムの開発者の霊視さんβからもNGを出される。


「ですよねー・・・ん?なら人型での転移ならどうです?

なにもヘビモスの姿に拘る事ないですよね?」

確かに人型になれば大幅な重量削減にはなるが?


《ごめん。説明の仕方が悪かったわね。

ここで言う重量ってヘビモスさんの潜在魔力量の事ね。物理的な重さじゃないの。

私の計算だと今の魔法陣回路の強度じゃオーバーヒートを起こして変な場所に着陸してしまうわ》


「あれ?でも魔力がヘビモスさん並に高いバルドル師匠やイリス師匠も転移魔法システムを使って南の大陸からウチに転移して来てますよね?」


「儂やイリスの場合は転移魔法システムを方位磁針代わりに使っているだけで転移魔法自体は自前の魔力を使っての転移しておる。

その方位磁針の利点も利用を見越しての3名じゃな」

何も使わず素で転移するよりコスパがかなり良いらしい。要するに「カーナビ」だね。


「ヤニックよ。ピアツェンツェアの戦艦を使って送り届けるのはどうなのじゃ?」

これだと物理的な輸送になるので魔力量は関係ないね。


《あーごめん、ウチ(ラーデンブルグ公国)で海上封鎖しているから領海内へのピアツェンツェア戦艦の侵入はダメです》

まともな海路ルートでヘビモスさん家に帰る為にはどうしてもラーデンブルグ沖の航路を通過する必要がある。


「そうですね・・・表面上ではピアツェンツェアとラーデンブルグは非同盟関係ですからね。

ウチの戦艦がラーデンブルグに入ると余計な情勢不安を引き起こしかねません」


「ゴルド王国を気にしているなら別に良くね?もう戦争中だし」


「この場合は中央大陸の東方諸国の問題ですね。

ピアツェンツェアとラーデンブルグが軍事同盟を結ぶと挟撃される危険性が出ますから彼らは猛反発するでしょうね」


《それで同盟解消したんだもんね》

500年前まではピアツェンツェア王国とラーデンブルグ公国は軍事同盟関係にあったのだがその同盟に反発する形で東方諸国連合が結成されて戦争をした過去がある。


「面倒臭いのう」


《一応、間接的に真魔族も絡んでたんですけど?》

その辺りを詳しく書くとやたらと長くなるので省略します。


「えーと?皆さんは転移魔法は使えます?」

それならヘビモスが霊視さんβの様に自力転移で飛べば何とかなる?


《今まで特に必要無かったから転移魔法は覚えてないね》

基本的には自分達の拠点に引き篭もりのヘビモスさんなので転移魔法は必要ない。


《転移魔法なんて使えないよ?》


《基本的に歩いて泳いでの移動よね私達って》


ヘビモスさんは歩いても泳いでも時速80kmくらいの速度で移動出来るので近場だと転移魔法を使う方が効率が悪い。


《我は使えるが・・・我は魔法陣の制御で最後まで残らんとならんのでな》

長老さん以外に転移魔法を使えるヘビモスさんは誰もいなかった・・・


今回のピアツェンツアへの転移はアホか?と言う程の莫大な魔力を誇る真魔族四天王マクシムが自分の魔力を使ってピアツェンツア王国に転移して来たのだ。

しかしそのマクシム君が「勝手に帰宅」してしまったのでヘビモス達は自力で帰るハメになっている。

ちなみにマクシム君の総魔力量は地龍王クライルスハイムを超える。アホだけど凄えなアイツ。


《なのでピアツェンツア王国にもう少し滞在させて欲しいのだ。

魔力が魔法陣に溜まるまで待って3名ずつ拠点に転移させたいのだ。

そして最後に我が転移して終了だ。おそらくは丸3ヶ月は掛かってしまうがな》


「え?!それはこちらとしても有難いです!是非滞在して下さい!」

思い切りベヒモスの提案の乗っかるヤニック王。

ヘビモスが滞在すればしただけ王都の水源が浄化されるのだ。


《重ねてすまんな》


「いや~、王都も最近人口が増えて水の浄化作業には苦労してたんですよ~」

思わぬ「水の恩恵」に嬉しさ爆発のヤニック王なのだ。


《ふふふ・・・win-winって奴だな。

しかしこの辺りも随分と発展したのだな。昔はただの平原だったのになぁ》


ベヒモスと普通に交渉するヤニック王を周囲の官僚が畏敬の念を持って見ている事にヤニック王自身は気が付いていなかった。


そしてこの交渉の様子を後ろで見ていたメイド姿の天朱龍ニームと天龍レンヌの天龍娘の2人。


「ねえニーム?これって私達はどうすれば?ヘビモスとピアツェンツェア王国の急接近って人間世界のパワーバランスが崩れる危険が有る・・・よね?少なくてもアメリア様に連絡した方が・・・」


「リールから念話で「放っておきなさい」との回答よ。

だから私達は何も見ていない・・・よろしいかしら?レンヌ?」


「あ・・・うん、分かったわ」


マクシムとベヒモスの一件とヘビモスのピアツェンツェア滞在は蒼き龍こと天舞龍リールからの回答を曲解して無かった事にした天朱龍ニーム。


なしてこんな事をしたと言うと事態が公になれば天龍王アメデに報告書を書いたりなんだりと仕事が増えるので関わりたく無いからだ。


天舞龍リールからの本当の回答は・・・

「ヘビモスの事は「当事者の魔王バルドルに任せて」放っておきない」で、別にヤニックの介入を許している訳ではない。


天朱龍ニームは基本的に面倒くさい事が嫌いな天龍なのだ。

一見するとニームは知的なパツキン美女なのだが中身は凄くグウタラな奴なんだね。


「話しがまとまって良かったわい」

魔王バルドル的にはヤニックがヘビモスの面倒を見てくれるのは助かるので丸投げする気マンマンだ。


今回のヘビモスさんの話しの他にも色々様々な重要な出来事が起きていたのだが主人公完全スルーで話しが進む。


魔族の王都襲撃事件はピアツェンツェア王国側の勝利で幕を閉じたのだった。

今後のセリスに関して言うと「自分で封印していた過去の記憶の開封」が一気に進む事になる。

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