英雄ライモンド
厨房に入ったセリスが見た物とは・・・
ドカリと作業台に乗りウイスキーをラッパ飲みしてる大男の幽霊だった。
「いや!幽霊のクセに態度デケエな!」
「おっ?なんだ嬢ちゃんよ、俺の事が見えるってか?」
大男の幽霊が話しかけて来た。
「はい、バッチリ見えてますよ。・・・貴方は誰ですか?」
「ん?俺か?俺はライモンドだ」
「んー?すみません持病の耳鳴りが・・・もう一回お願いします」
「ライモンドだ」
「マジですかー」
なんとビックリ!4代目国王、英雄ライモンドの幽霊だった。
「それで4代目国王さんが何でこんな所でお酒飲んでるのですか?
ってか幽霊ってお酒飲めたんですね?」それは確かに疑問だ。
セリスはもう半ばヤケクソ気味にライモンドに質問をする。
ここで引けば「幽霊退治屋セリス」の名が廃るのだ!
廃るほどの名があったかは別だ。
「おお、最近目が覚めてなぁ、しっかし死んでから400年も経っちまったんだな。
まぁ・・・酒は気分だ、飲めやしねえな」
「?目が覚めたとは?どう言う事ですか?」
「どうも死んだ時に誰かが俺が転生出来ない様に魂を呪いで封印した見たいだな。
多分次に国王になった奴だな。
おかげで死んだ当時のままの記憶が残ってるんだがな」
「マジですかー」これ聞いちゃいけないヤバい話しじゃね?と思うセリス。
そして、古の英雄と普通に喋っている自分がヤバい奴だと思いつつあるセリス。
そしてセリスを空に向かって独り言を言ってるヤバい令嬢だと思いつつある侍女。
どっちにしてもセリスはヤバい奴なのだ。
「で?嬢ちゃんの名前は?」
「あっ、セリスですよろしくお願いします」
そう言って頭を下げるセリスを見て侍女は、お医者さんを呼びに走った!
ちなみにセリスはこう言う扱いには慣れているので気にしないのだ。
「おい侍女が走って行ったぞ、セリスよ、お前さん大丈夫か?」
「ええ、変人扱いは慣れてます、いつもの事です」
「美少女なのに勿体ねえなセリスよ」
「美少女ありがとうございます、良い虫除けになって丁度良いのですよ」
これはセリスのマジの本心なのだ、結婚なんぞ30歳近くで良くね?なんて、日本人丸出しの物の考え方をしている。
親御さんは泣くだろう・・・
「ああ!そう言えばワイトキングに会いましたよ」
「へえ?・・・セリスは何者なんだ?
普通の人間にはワイトキングは存在すら感知出来ないんだぜ?」
「へーそうなんですかぁ、知らなかったです」
「んー?それに何か変わった気配がするぜ?・・・これは?・・・そう言う事か。
セリスは自分が何者か分かってんのか?」
「何者かと聞かれると腐った公爵令嬢ですよ」
「腐ってんのか?」
「はい、それはもう親が泣いてしまうくらいには」
「親御さん気の毒になぁ」
「幽霊に気の毒がられた?!」
「さてと、ピアツェンツェアの元国王たる者がいつまでも幽霊やってる場合じゃねえな、「選別の扉」へ行って転生しないとな」
「アッサリしてますね、手間がかからず助かります」
「何でセリスの手間がかかるんだ?」
「幽霊退治屋なので」
「ほんと変わってんな?セリスは」
「本音を言うと無償で働きたくないだけなんですけどね」
「ははは、ほんとに面白いなあセリスは、気に入ったぜ!
よし!それなら転生先はお前の子供の所にしてもらおうかな?
国王とかもう御免だしな」
「そうですか?お待ちしております」
セリスは冗談で言ったのだが数年後に息子が産まれた時に、
《うええ?この子は英雄ライモンドさんの産まれ変わりですね》
と霊視に言われて「マジで何考えてんのこの人!」とセリスが言う未来もあるかも?
「おっしゃ!目標も出来たし俺は行くわ」と英雄ライモンドは「選別の扉」へ旅だって行った。
その後、医者と母バーバラが駆けつけて来たので、ここは慌てないで、
「また妖精タンとお話ししてたのー」と伝家の宝刀を抜くセリス。
「マジで気色悪いですよお嬢様」とミミリーに言われてイラッとしてから、
マジで病院に1週間ぶち込まれたセリス。
しかし夜会訓練からバックれられるのは美味しい!
と思い黙って連行されたのだった。